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okaokaayaya

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2007.03.19
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カテゴリ:フィクション

『同席』 

武も同郷の友人と店に来ていた。

偶然の再会から一時間後
紀子、沙織、武、武の友人一樹は、
偶然の再会を祝うべく、一緒にテーブルを囲んでいた。

武は現在宮崎に住んでいるが、
4月の転勤で東京本社に勤務する事になり、
この週末を利用してアパートを探しに上京して来たらしいという事。
一樹は地元の高校を卒業し、東京の私立大学に進学し、
そのまま横浜のメーカーに就職したという事。
一樹は、一通り自分達の現況を話し終えた。

沙織の男版か!と疑いたくなるくらい、一樹はさっきからよく喋る。
自分の事ばかりではなく、武の身の上の話も、
まるで自分自身の身の上話のように喋りまくっていた。
多分、一樹の辞書には「個人情報保護法」などという言葉は
存在していないのだろう。

「紀子さんと、沙織さんはこっちでどうしてるんですか?」

そんな一樹が、次に話題のターゲットにしたのは紀子と沙織の身の上話だった。

一樹の質問に、沙織が待ってましたとばかりに息急ききって喋り出す。

「私はね、看護婦なんだけど・・・
企業で言うと係長的な役目だから大変よ~。
上からも下からも毎日文句ばかり言われて
本当に参っちゃうけど、ほら私、係長だから仕方ないじゃな~い
※■△※■△※■△※■△※■△※■△※■△※■△」

どうやら沙織は白衣の天使をアピールしたいが、
自分が役職に就いている事も譲れないらしい。

「へ~、沙織さん看護婦さんなんだ~、何か女の子って感じするもんね~」
一樹の何気ない社交辞令が沙織のお喋りに更に火を付けた。

「そんな女の子だなんて、もう30過ぎてるのに、
あ、でも患者さんからはいつも学生さんにしては手際がいいね~
なんて良く言われちゃうんだよね~」

沙織の自分自慢話を止める事はもう不可能な領域にきてしまった。
あの一樹でさえも撃墜して、聞役に回してしまった沙織は、
あっぱれとしか言いようがない。
散々自分自慢話を話し終えると、沙織はお手洗いに立った。

「いや~、沙織さんなんかすごいね」
一樹が、少し呆れたように言い放った。

「ごめんね。根は悪い人じゃないんだけど・・・
話出すと止まらない人で・・・」
立場的に紀子が謝るしかなかった。

「あ、別に紀子さんが謝る事ないよ。まあ黙っていられるよりましだし」
一樹は紀子の手前、沙織に対するそれ以上のコメントを避けた。

「お姉さんは、今何をしているんですか?」
今まで、ほとんど言葉を発していない武が、紀子に向かって語りかけてきた。

紀子の心臓は波打った・・・
きた・・・ついにきた・・・聞かれてしまった・・・
紀子は、自分達の身の上話が始まった時から、この瞬間を恐れていた。
出来ることなら話したくない・・・
でも、面と向かって、しかも武に質問されている・・・
言うしかない、別に隠す事もない、事実を告げたからといって
武が怒ってこの場から立ち去るなどという事は有り得ないわけだから・・・
紀子の心の葛藤は、しばらくの間その場を沈黙させていた。

「あ、別に話したくなかったらいいんだけど・・・」
武が申し訳なさそうにさっきの質問を撤回した時、
沙織がお手洗いから戻ってきた。

「ねえ、どうしたの?どうしたの?
もしかして私の話題で盛り上がってた~?」

どこまでもおめでたい人間だ。
世界の中心で沙織が叫ぶ!彼女にふさわしい言葉だ。

結局、紀子は自分の身の上話が出来なかった。

楽しい時間は、本当にあっという間に過ぎる。
既に時間は、終電の30分前。
4人は、メールアドレスの交換をして、4月に武が上京した際には
またこの店でお祝いする約束を交わした。

帰りの電車の中

紀子は、ずっと武の事を考えていた。
自分が身の上話をしなかった事を、武はどう思っただろう。
秘密主義の嫌な女だと思っただろうか・・・
それとも、そんな事、武にとってはどうでもいい事で、
何のわだかまりも生じていないのだろうか。

ブルブルブルブル

マナーモードにしていた携帯が鳴った。

=====送信者 武くん=====

メールは武からだった。
紀子の心に、雷に似た衝撃が走った。





この物語はフィクションです

↓↓今までの話はこちら↓↓
良かったら読んで下さいね(^-^)/

★ACT3★『同席』
★ACT2★『みやこんじょ』
★ACT1★頬を伝う一筋の涙



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Last updated  2007.03.19 21:22:17
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