第04話-L

夜のセルムラント共和国・・


あれから数時間後・・レースが終わり、帰還したユニオンリバーの一同

ロディはニュースに出る程賞されたが、終始ため息をついていた


「・・相棒~・・・」


今彼は窓枠に肘をついて、ぼ~っと空を眺めている

・・温度もそれなりに暑いのだが、汗をだらだら流しながらも、視線はどこか遠い世界を見ている


「・・お兄ちゃん?」

「い、生きてただけマシではダメですか?」


セラとネスが話しかけても、相変わらず目は遙か彼方へ・・


「・・・・相棒」


・・また、は~・・・とため息をひとつ

セラとネスは顔を合わせて、同じようにため息をつく・・


(・・お兄ちゃん、ゼファーが壊れちゃったの相当効いてるね・・)

(・・そりゃそうでしょう・・マスターに合うぴったりのギアなんて、77式をおいて他にありませんもん・・)


今ではパーツの生産もしていない、当然だろうか・・あれはワンオフの品なのだから・・

シュウに頼めば修理は可能だろうが・・フレームしか残っていない今では「元通り」は不可だ。


「おう、いるか~?スタンの大将よ」


ゼオがやってきた

このジジイは、相変わらず人生を楽しんでいるような笑顔で事務所に入ってくる


セラとネスは、もう一回ため息をついた


「・・なんだ、この辛気くさい空気は・・?」

「中継で見たでしょう?・・依頼はこなしたんですけど・・マスターのギアはあんな状態になってしまったんですよ・・」

「お兄ちゃん、ゼファー以外のギアには絶対乗らないって言ってたから・・」


きょとん、と一瞬面食らったような顔をするゼオだったが


「77式だったか、お前さんのギア?・・・よければワシの78式をくれてやるぞ」

「な、78式っ!?」

「えぇ!?・・70ナンバーはお兄ちゃんの77式を除いて全部処分されちゃったんじゃ・・」

「・・物好きをなめてもらっちゃ困るぜ、お嬢ちゃん?・・廃棄寸前のトコを引き取ったのさ」


ちっちっ・・と指を振るゼオ


・・なんだ、このご老人もマスターと同じ趣味人ですか。


かくいうネスも、大昔のリボルバーやゲームなんてものを集めている趣味人だが・・


「・・78式はワシがかつてユニバーサルランナーに参加したときの機体だ・・もっとも、俺はバッテリー切れでリタイアなんてバカな終わりだったがな(汗)」

「しかし・・中古とはいえそんなレアな機体をいただいてもいいんですか?」

「そうだな・・じゃあ交換条件に「お嬢ちゃんを一日借りてく」ってのは・・」

「刀破・烈・光・掌ォッ!!」


セラに抱きつこうとしたジジイだが、セラの掌からの一撃・・「奥義」を食らってその場にくずおれた


「はっ・・つ、つい大きい方の必殺技を・・(汗)」

「・・セラ様、ナイス。」


ネスはもういい加減呆れていたので、セラに対してサムズアップで突っ込みをいれた


「ロディさん」

「・・・シュウか、なんだ・・」


ロディのナビが起動し、今地下にいるシュウの声が聞こえてくる


「78式があれば77式を復活できますよ、なんてったってコンセプト同じ機体ですし」


ロディは一瞬にして「狂喜乱舞モード」に突入していた

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火星・・

地表にあるクレーターの一つに、ゼオの屋敷はあった

・・そう、この男・・かなりの金持ちだったのである


「以外すぎて笑えねぇ・・」


広い広い格納庫に案内されると、その中にはかなりレア物な機体がならんでいた

砲撃型である50式の祭典仕様(花火)

サバイバルゲーム用に改修された62式のミリタリー塗装・・


どれもこれも、マイナーチェンジながら数の少ない代物だ


その格納庫の奥、ホントに奥に・・白い布をかぶったハンガーが一つあった

・・布がはぎ取られると、中からは漆黒のゼファー・・いや、ゼファーのひな形である「スターゲイザー」に酷似していた


「こいつがG-H/78「シュテル」だ」

「すげぇ・・まんまゼファーじゃねぇか!」

「77式と違うのはコントロールシステムが車っぽくなってるトコだけだからな」


ゼオはコクピットの写真を見せながら言う

・・どちらかというとバイクのような雰囲気があるが・・・


「ワシはあのレースで優勝どころか完走すらできなかった・・それからもいろいろな事にチャレンジしたが、あれだけが心残りでな・・」

「俺が代わりに優勝した、と?」

「ああ、さすがに自分で参加するには年だしな♪」


・・十分元気ぢゃねーか


そうも思うが、ロディは苦笑いでとどめておいた

何より・・今はこの機体が救世主になろうとしているのだから、うれしくてしょうがない


「シュウ、どうだ?」

「ええ・・・メインエンジンは壊れたままになってますが、それは僕が新しいのに積み替えておきますから」

「よっしゃ!さっさとやってくれよ!」


ロディはまた、熱血バカに戻っていた


「改めて・・だ、ありがとうな、スタンの大将よ」

「おう!こっちこそ感謝だぜ爺さん!」


二人はにっ・・と笑って、握手を交わした

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数日後・・


「・・ロディはん、できたようやで~」

「何っ!やっとか!?やっとできたのかっ!?」

「んが・・っ!?」


ロディを呼びに来たシードだが、走ってきたロディに踏みつぶされてしまった

シュテルとゼファーの集められただけの残骸、そしてロディ用に調整されたシステムのバックアップ・・

それらと新たなパーツを集めて、シュウが改修作業を始めて数日


いよいよ完成ともなれば、このバカが騒がないワケがない


「シュウ!相棒は?」


地下に降りると、シュウは階段の前で出迎えた


「ええ、ハンガーにありますよ、でも・・」


ロディは全部を聞かず、だだっ!とハンガーへ駆け込む


「相棒!!」


・・そこには、ゼファーの姿があった

以前と変わらぬ赤い頭部のくちばし形状

以前と変わらぬ白を基調としたカラーリング

以前と変わらぬ背部のコア・ローダー(脱出装置)

以前と変わらぬ・・・


・・・・・・?


「な・・な・・・なっっっ・・・・なぁんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?


そこにあったのは、10メートルのすらりとしたスタイルのギアではなく・・

5メートルくらいの、SDガンダムのような可愛いスタイルのギアであった


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NEXT-EPISORD・・

第05話「空白の10日間」




ロディ「シュウ!てめぇ・・あれはどーいう事だっ!?なんでお子様サイズになってるんだ相棒がっ!?」

シュウ「ゼファーのフレームはあのサイズになっちゃってましたから・・それを素体に・・」

ロディ「・・おいおいおい・・シュテルのパーツはどこいったんだよ・・どこにもないじゃないか!?」

シュウ「実は」

ロディ「・・実は?」

シュウ「・・これ以上は言えません」

ロディ「てんめぇぇぇはぁぁぁぁぁっ!!!


重火器発射音×数十回


シュウ「・・だから、次回のお楽しみに・・」

ロディ「待てるかぁぁっ!!」





・・第04話・・・終・・・・・


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