第09話-2

サクラ達は目標の位置捜索を開始していた

ゼファーが真っ二つにして破壊したガーディアンの位置情報を軸に、起動し始めた宇宙全てのガーディアンへリンクを広げていく


「・・接続位置確認、目標座標軸検索開始」

「とは言っても、今回のネットワーク検索は長くかかりそうですわね・・」


サクラ(眼鏡なし)が言い、シュウも頷いて返答する

話している余裕のようなものは一応あるが、一言、二言に限られる

・・彼らの手は通常の数倍の速さでキーボードの上を機動し、一秒間に何億という速度の機械を超越した動きを見せる


・・ネットワーク拡大、地球圏ガーディアン系列検索、目標物データ該当なし、検索ネットワークさらに拡大、詳細情報確認、検索条件を小型ガーディアンにも適用、詳細情報と通常情報を同時に検索、プロテクトデータ確認、プロテクト解除に必要なパス解放、データフローに基づき再構築の後再検索、目標データ該当なし・・


二人は延々と「検索して、データをチェックして、範囲を広げて、また検索する」の繰り返しを行っていく

・・二人がかりで、通常の数千倍もの速さでやっても時間は相当かかるだろう

仮にマスターシステムを見つけても、それが本物である確証も見つけなくてはならないのだ


ユニオンリバー社地下室に、ひたすら二人の作業音が響き渡っていた

・・階上の事務所に残された詩亞とフィアは、ユニオンリバー社一同の成功と、この危機の回避を祈る事しかできないでいた


「大丈夫なんでしょうか、皆さん・・」

「成功率100%って自信たっぷりに語ってたもの、大丈夫でしょう?」


不安げに語る詩亞と対照的に、フィアはにっこり笑いながら言った

余裕こそないものの、その表情は希望に満ちあふれている


・・信頼に足る者達

彼らの成功は、彼女にとっては純粋に願いでもある

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・・ガーディアンの驚異は各惑星の表面上に留まらない

衛星があればその衛星の「遺跡」から現れて周囲にガーディアンを撒き散らし

ヒドイ所では2つの遺跡から2体のガーディアンが現れるという状況だった


宇宙も、地表も、逃げ場はない

・・それでも徹底抗戦の構えを取るS.G、民間の有志たち


そして、地表のアークエンジェルが消えた地球に迫りつつあるものがあった

前に立ちふさがる者はS.Gの衛星軌道艦隊・・西安支部のメンバーを中心とした、地球全土のS.G戦力である

・・最も、彼らの戦力などたかがギア数十機

他惑星には数百、数千のギアが配備されているというのに、心許ない戦力

しかし、中心に位置していた一機のギア・・そのパイロット「一佐」の階級章を持つ少女は余裕の笑みを浮かべていた


「敵機接近、ガーディアン・ギア数百機、ガーディアン本体「アークエンジェル」1機!!」

『とぉっ!!!』


彼女のギアがバーニアを勢いよく噴射し、飛び上がる

そのギアの大きさは30メートル大、もちろんそれは・・リィズに当てられた試作機体「スパイラル」である

リィズは敵の真上に飛び上がらせた機体をくるくると回転させながら、次の行動に移した


『スーパー!!』


ぎゃりぎゃり・・と音がして、脚部のソニックスマッシャーが作動する

同時に背中に展開していたバーニアがさらに大きく開き、最大出力の構えを見せる


『イナズマぁぁ・・・・!!』


右足を大きく突き出すようにして、バーニア・スロットルを全開にするリィズ

同時に大きく叫ぶ!


『キィィィィィィッ・・ク!!!!』


真上からの直上落下攻撃・・とは言っても原始的な、加速を加えただけの直接キック攻撃だが

酔っぱらってやった技をもう一度、今度は宇宙で、正常なハズの頭でやっている


『・・いっぺんやってみたかったのよ・・♪』


・・ホントにそれでいいのか、警察官・・?

しかし思ったより効果的な技であり、ガーディアンの数はかなり減ったように見えた

最も、肝心の本体であるアークエンジェルには全くダメージを与えられていなかったが・・


「・・それじゃぁみなさん、がんばってくださぁい・・・」


開戦の合図としてはいささか間の抜けたレオネの声で、S.Gの決死の戦いは始まった

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「お兄ちゃん、今どこ?」

『火星にもうすぐ到着する』

「私たちは冥王星の辺りだよ」


ブレードバッシャーはセラの報告通り、冥王星近辺に向かっていた

途中でガンマが木星軌道のガーディアンと戦闘を開始し、現在のメンバーはメイとセラ、ネス、シードである

ガンマ一人で戦うことを心配するメイだったが、皆一様にデストロイの性能を熟知している

・・止めるのがもったいないくらいだ。


ガンマは引き続き木星~天王星辺りの援護に向かうという

ブレードバッシャーは先行して冥王星より先、要するに太陽系の安全をまずは確保しようという事になっていた


「マスター、気をつけてくださいよ・・いくら強化されたゼファーでも限界はあります」

『そんときゃ限界以上を俺が発揮すればいいだけの話だろ』


自信たっぷりのロディは、それっきり通信を切ってしまった

・・恐らく火星の戦闘区域に入ったのだろう


「・・どれ、こちらもそろそろ始まりますよ・・・」

「覚悟はええで、ネスはん」

「ドーマ、いつでもいいよ~」

「ユニバリス、大丈夫です」

「・・無理は禁物ですよ、イザとなったらブレードバッシャーの主砲を解放しますから」

「その前にカタしちゃえばいいんでしょ?」

「な、なんて安直な・・・(汗)」

「とりあえず現地S.Gの援護!れっつごー、やで!!」

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・・火星圏

赤い大地に降り立ったゼファーの前に、丁度ゼオの乗ったガイストレイスがいた

ロディは機体の趣味から、それのパイロットを瞬時に判断した


『ジジイ・・あんたか!?』

『おう、スタンの大将?・・・よく来たなぁ♪』

『てめぇ!ンな挨拶してる場合かッ!?』


敵ギア集団に対して徹底的な砲撃を続けているガイスト

通常兵器ながら最大級の兵器が積み込まれているため、意外にも効果を発揮しているようだ

・・最も、やはり肝心のガーディアン本体へのダメージがないため無意味に等しいが


『・・なんだこのガーディアンは・・アークエンジェルとは違う・・?』

『大天使?・・ほう、お前さんがそっちの神話を知ってるとは思わなかったなぁ』

『ちげーよ・・・・そういう名前なんだ、あいつら』


ゼファーの両腰に装備されていた携行型のマシンガンを手に握らせて、ロディはガイストの背後についた

・・周囲には現地S.Gのギアもちらほら戦っているが、どうもかなりの数がやられた後らしい

アークエンジェルとは違うタイプのガーディアン・・そのサイズはまるで四足歩行の巨大要塞、容姿は空想上のドラゴンのように猛々しいものだった


『・・さしずめ、「メタルドラグーン」ってか?』

『なかなかいい名前じゃないか、どっかで聞いた気もするが・・』

『そっから先は言うなよ、ジジイ!』


叫んでロディはゼファーの手にしたマシンガンを腰に戻した

・・続いて背中に背負っていた大型の剣、P.Sブレードを両手にしっかりと握らせる


『おいおい、いつの間にレーザーブレードから斬艦刀に乗り換えたんだ?』

『格好良ければ全てよし、だ!』


冗談のようにもとれて、しかし彼の場合は本気でそう思っているであろうセリフ

全長40メートルにもなるP.Sブレードを振りかざし、ゼファーはさながら竜に立ち向かう騎士の如くドラグーンに斬りかかった

・・やはり作動する相干渉フィールド、しかしP.Sブレードが原子レベルでその存在を切り裂いた!

盾さえ無ければあまりにも脆いガーディアン・・

ゼファーは地球でやったのと同じ、ただの一刀で敵を撃破するのだった

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・・冥王星では・・

宙域の敵はドーマとブレードバッシャーが、敵に襲われ壊滅寸前のコロニーにはユニバリスが突入した

ユニバリス、ネコのような姿をしたセラのギアはすさまじいフットワークでコロニー内部を駆け抜けていた


『うぷっっ・・・・・め・・め・・・目が回る~・・・・』


まともな実戦は初めてのセラ

・・ユニバリスはコントロールを失い、時速300を超える猛スピードですっ転んだ


ずがっしゃぁぁぁっ!!


『うぁぅぅ・・・・・・・・痛い・・・(泣)』


コクピットの機材に頭をぶつけても、泣いている余裕はない

無数のガーディアン・ギアは転んで体勢を崩したユニバリスに容赦なく襲いかかってくる


『伏せろ!』


そう言われるか否や、頭を下げたユニバリスの真後ろから巨大な「クロー」が飛んできた

3本のクローで包まれたロケットパンチのようなものがガーディアンをはじき飛ばし、一体を握りつぶした


『・・え?』


続いて、セラの目の前・・起きあがろうとするユニバリスの前に、一体の白いギアが降り立った

・・白く、神々しく、左手に持ったランサーまで美しいラインのギア

まるでどこかの王子様のように凛としているその姿に、彼女はほのかに頬を赤くした


・・王子様・・・


かなり間抜けな姿をさらした後でそういう事を思うのもナンだが、セラはその感動を表すのにそういう単語を用いた


『起きあがれるか?』

『・・・・・』


ところが、次に声を聞いた瞬間・・・その感動は一気に冷めて、代わりにある時の恐怖がよみがえってきた


『イヤ・・・近寄らないでっ!!』

『・・な、何だいきなり?』

『・・誘拐犯・・・わたしとお姉ちゃんを縛って港に監禁した・・・』


白いギアはぴた、と時が止まったように動きを止めて、しばらく間を置いて問いかけてきた


『・・もしかして・・スタンフォードの妹か・・・?』

『悪いひと~!!!!!』


ユニバリスが有無を言わさず飛びかかり、白いギア・・いい加減にわかりそうなものだが、ゲイルの「リベリオン」が回避する

リベリオンはユニバリスの猛スピードの攻撃にあおられて倒れる


『ま・・待て!今俺は・・・・』

『いやーっっ!!!』


殺されるかもしれない、そういう恐怖を覚えているセラは「悪人ゲイル」に対して過度に反応していた

人の話も聞かず、ひたすらに攻撃を続ける


『さ・・流石はあの男の妹!』


格好付けてみるゲイルだが、全然決まっていない


『悪いひとー!!!』


目的も、今の状況も、しばらくは彼女の頭から消えてしまっていた

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