第11話

・CHAPTER-11「発掘!さがしものはなんですか?」

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夏休み終盤戦、もう17日だ・・

どうでもいいけど僕達、なんか今日まで夏休みを楽しんだ記憶がないような・・

というワケで、夏休みらしいことをやることに決めた

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天導寺重工本社地下施設「エリアル・ホーム」


ここでは工業製品のテストを行うと同時に、極秘裏に開発された私的なシステムの実験施設でもあった


暗い天井の下、広い荒野のようなフィールドが広がり・・

その真ん中には、右手にライフルを構えたアリスが佇んでいる


・・ぎぃぃぃぃん・・・


重金属音がして、アリスの前を数台のロボットが通過する

アリスと同系統の、標的用の機体だ


コクピットの景は口元で何かをぶつぶつとつぶやき、右手の操作を実行する

ライフルは軽快な音を立てて銃弾を速連射し・・・


標的は次々、沈黙していった

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・・・その時僕達はホーム内にあるラウンジで一服していた

すぐそこはガラス張りになっていて、外(地下施設)が見える

・・東京の地下にこんなトコがあると、誰が想像できるのか?

アンダーグラウンドだから何をやってもいいというワケじゃないだろうけど・・

アリスの銃撃音なんかその手の人が聞いたら絶対怪しむと思うな(汗)


「・・で、今日はどうするのさ?」

「ああ・・神社に行こうと思ってね。」

「・・・神社ぁ・・・??」


・・明は緑茶をすすりながら、にこっ・・と笑う


「宝探し、だよ。」


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戻ってきた景と一緒に地上に戻る・・

途中でアリスをいつも送り届けている佐渡さんにも挨拶してきた

・・大変な役割だよね、工場長ってだけで景の野望につき合わされて・・


「さて、それじゃ行ってらっしゃ~い♪」

「・・・行ってきます・・・。」


今回出かけるのは僕とメイちゃん、咲妃ちゃん、明の四人だけ

景は・・ここに呼んだのはただ単にホームの詳しい説明をしたかっただけで、別な用があるらしい

・・なんでも、前回のドーム決戦の後で面白いモノを拾って研究しているそうだ

いいよね、楽しみがある人はさ。


「神社で宝探しねぇ・・祭りの企画か何か?」

「いや、大分前に神主さんから聞いた話なんだけどさぁ・・なんか面白そうだと思ってね」

「宝っていうからにはすっごーいのだよね?・・わくわく♪」

「・・・見つかるといいですね・・」


咲妃ちゃんがうかない顔をしているのは、昨日その話を聞いて景に無理矢理センサーの類を取り付けられてしまったからだ

・・だってねぇ・・コレ、「センサー」ってより「ただのウサ耳」でしょ・・?

道行く人がひそひそと話すような素振りを見せる

咲妃ちゃんの顔はもう真っ赤で、隠れる所さえあれば飛び込んでしまいそうだった

・・とは言っても普段着の僕達に対していつものメイド服って・・


時々感覚が理解できなくなっちゃうよ・・(汗)

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六澄の外れ・・例の坂道を少し登った辺りに、確かに神社があった


「へ~・・こんなトコに移転してたんだ」

「以前は大阪にあったんだけど、色々な事情で移転したんだよ」


明はホントに詳しいらしい・・知り合いでもいるのかな?


境内はそれなりの広さ・・まぁ、祭りをしたら出店が十か十二くらいは出そう。

定番の賽銭箱に瓦張りの屋根、砂利の敷き詰められた敷地・・

入り口に二つある灯籠には「冥凰神社」とある


「先輩・・せ・ん・ぱ・ぁ~い~っ♪」


境内の中・・建物の向こうから着物姿の女の子が走ってきた

先輩って・・誰?


「夢奈、連れてきたよ」

「この人達が助っ人ですか?・・・・・むっ・・・」


夢奈と呼ばれた娘は、明に対しての笑顔から何故か怪しいモノを見るような目つきに変わる

じ~・・・っと僕らの顔を至近距離まで近づいて、睨んでくる


「な・・なに??」

「下がってください先輩!!・・この人達、何かに憑かれてます!!」

「つかれてる?・・暑いけどボクたち別に疲れては・・」

「・・これが人間の波動なものですか・・!・・あなた方の波動は人間のものではないっ!!」


・・もしかして、僕らが変身できるのと関係あるの?・・・あ、咲妃ちゃんはロボだし・・

とりあえずワケのわからない殺気を向けられ、僕らはそのまま動けない

明はきょとんとしている


その娘・・夢奈ちゃんが、懐から三枚の札を取り出した


「憑いているものを除去します・・」

「ちょ・・・ちょっと待ってくださいっ!!」

「ああ、みんな人間じゃないから、気にしなくていいよ」


明の一言は、今度は夢奈ちゃんをきょとんとさせると同時に僕達を唖然とさせた


「・・人間じゃないって・・そ、それはこの方達は憑かれているのではなく本体だと!?」

「違うよ、裕司とメイちゃんは変身できて、咲妃ちゃんはロボットだからさ」

「・・・」


しばらく構えていた夢奈ちゃんが、ようやく手にしていた札を懐に戻した


「・・奇抜なお友達をお持ちですね、先輩・・」


・・そうか、僕らは奇抜か・・・つーか明ィ、僕とメイちゃんは人間じゃないのか?


「とにかくまぁ・・中へどうぞ、お話はそれからにします。」


こうして一行はとりあえず建物の脇、物置のように見える離れの方へ向かった


・・ところで夢奈ちゃんはさっき、なんで札なんか出したんだろう?

・・悪霊払い?(汗)

咲妃ちゃんはともかく僕らの事に気付いたのはすごいよね・・

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そのころ・・浅草は仲見世通りを歩いている忍と改都の姿があった


「やっぱココ歩くなら人形焼き食べながらに限るな」

「そうでござるな・・伝統ある一品でもあり・・」


忍はラフスタイル、改都は袴姿でやはり流星牙皇を背負っていた

ようやく縦にかつぐという事を覚えたようだが、前後に突っ張った状態では何の解決にもなっていない

彼が振り向くたびに、周囲の人々がぞろぞろ倒れていった


頬に人形焼きを2,3個詰め込んだままで、改都が立ち止まる(そして後ろにいたお兄さんが突かれて転倒した)


「どーした、改都?」

「・・・殺気でござる・・・」


彼は忍の質問も聞かず、口にためていた分を飲み込み、流星牙皇に手をかけ、鞘から少し引いた


「・・そこか!」

「・・のようだな!!」


忍もどうやらそれを確認したらしい

・・誰かはわからないが、改都の言う方向に何者かに追いかけられている女の子を発見したのだ

それを追っている男の手には・・紛れもない、拳銃が握られていた


「・・門を出るぞ!!」

「逃がしはせん・・!」


忍は少女の前に盾のように立ちはだかり、改都は流星牙皇の鞘を投げ捨てるように放ると、その切っ先を男に向けた


「おいおい・・おっさん、物騒なモン持ち歩くなよ」

「ど・・どっちが物騒だ!?」

「いかなる言われあれど、女子供に武器を向けるとあらば・・私が斬る!」


流星牙皇を向けられればさすがに怯むかと思ったら・・

男はバックステップをするようにして、銃弾を放った

・・改都!?・・・いや、大丈夫か・・改都はその弾を水のごとき流れで避ける

無言のまま改都も刀を振るい、今度は男の放った第二弾を真っ二つにするという芸当をやってのけた


「いいぞ五右衛門!!」

「またつまらぬものを斬ったか・・」


意外とこういう時の方がノリいいようだな、お前・・


「さて、逃げるとしますかねェ」

「え?・・で、でもあの人が・・」

「心配しなさんな、あのお兄さんはすばらしく強いから・・」


改都が※「裏篠目百鬼夜行」を出してマシンガンの弾を切り刻んでいる

※読み:うらさざめひゃっきやこう


・・うむ・・あれから3日間山ごもりしたというのはホントのようだ

とんでもないケドな、人間離れしすぎてるし・・・(俺も人の事言えた義理ぁねぇか)


とにかく俺はその女の子を連れて、その場を一時離れた

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再び冥凰神社・・


宝探しにしても、その地図は結構アバウトなものだった

お約束のように何が隠されているか詳細は不明だし、ましてそれを探す気になったのは実は夢奈ちゃんじゃなくて明だし。


「大丈夫大丈夫、何かいいものがあるって」

「・・あるといいね、あると・・」

「ユナぁ、これって何の印なの?」

「えっとですね・・メイ先輩だけじゃなくて、みなさんも聞いておいてくださいよ」


言われて四人、ごそごそとその地図を囲むように集まる


「ここが東京タワーの辺り、こっちがお台場方面・・そしてこっちは東京湾です」

「・・なんかこの点・・東京湾のど真ん中にない?」

「・・そんなぁ・・海の中じゃ無理だよ」

「・・いいえ、これは座標の目安だと思いますよ、ほら・・こことここをつなぐとちょうど縮尺図の目盛りと同じように使えますし」


ぱちぱちと拍手喝采

・・さすが咲妃ちゃん、考えどこが違うね・・


「これを縮尺とするならばぁ・・」

「これがこーでこーなって」

「あれがああでこうして・・」

「・・・・・・」


ヤバイ

・・わからん・・・・・(汗)


「・・ぐ~・・・・」

「・・・寝てる?」

「何を考えているのかと思ったら・・」

「メイさん、寝るならせめてベッドなりに行かないと・・」

「ふ・・ぇ?」


メイちゃんが起きて、もう一度情報をまとめてみた

・・・縮尺目盛りを参考に行くなら、これは近場と言えば近場になる


「この範囲・・今の地図だとどこらへん?」

「永田町。」

「・・・・・・」


どっちかというと政治家の横領金とか裏金とかがありそうな・・(汗)

・・・そう思ったのは、おそらく僕だけだろう・・

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・・浅草・・


水上バスを横に見るようにして、俺は歩道のフェンスにもたれかかっていた

・・結構走ったな・・・俺は全然だが、この娘はちょっと息が上がっている


「・・追われるような覚えは?」

「ストーカーみたいな人は時々いますけど、あんな危ないの持ってる人は初めてです・・・」

「・・・身に覚えのない話なのか・・大変だったな・・」


そういえば、一応聞く事聞いておいたほうが後のためだよな?

・・まぁ礼金目当てとかそーゆーんじゃねぇけど(笑)


「そういや、君はなんて名前なんだ?」


その時、顔を上げたその娘と目が合った


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


・・って!?な、なんだこの間は!?

お、俺も・・?


その娘は見たところ小学3、4年くらい、もちろん特に変わったところがあるでもないが・・

・・可愛い・・

ち・・違う!?お、俺は別に・・・


・・しかし、その娘もなぜか顔を赤くしている


「・・・っ・・」

「・・あ、あの・・私は・・・・すばると言います」

「すばるちゃん・・でいいのかな?」

「ええ、「白銀すばる」です。」


・・もう一度、今度は俺だけが妙な間を持った

・・はて、白銀・・・?


最近どっかで聞いたような・・というより秋葉原辺りでなぜかその名を聞いたような見たような・・

次の瞬間、俺のそれは確信をついた


「・・え・・新人アイドルの?」

「はい・・」


またしても俺と目が合い、顔を赤らめるすばるちゃん

・・ってェか・・・えええ!?

俺は今までで初めて、しどろもどろという行動を実践していた


「お兄さんの名前はなんて言うんですか・・?」

「あ、俺は・・忍、高杉忍だ。」


・・しばしこの、ありきたりなようで結構現実味を帯びないストーリーに唖然としていた

お、俺って年下趣味だったのか!?・・・・

イヤ、それより・・アイドルって・・・


「忍どのぉー!!!勝ちましたぞ!勝ちましたが・・・・・」

「待てぇー!今日こそ逮捕してやるぞ少年ッ!!」


改都がパトカーに追われながら追いついてきたので、俺はまたすばるちゃんを連れて逃亡を始める事になってしまった(汗)

考える間くらいくれよ!とっつぁーん!!

BGM:ルパン三世のテーマ(87’)or銭形警部のテーマ(笑)

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四時間後・・

様々な憶測に基づき彷徨った裕司一行だが・・

結局、何の手がかりもない状態であった


「・・あ」

「どうしたの、咲妃ちゃん・・・」

「もしかしてコレ・・昔の関西地方の地図じゃないんですか?」

「・・・・・・・」


根本的なコトを忘れていた

冥凰神社は大阪に建っていた神社・・・

・・「移転してきて見つけた地図」ならともかく、そこにあった地図というなら、もちろん大阪を探さないと見つかるわけがない


「わ、私・・てっきり東京の地図だと・・」

「夢奈、別に君のせいじゃないよ」


わたわたと慌てる夢奈を、明が制する


「・・つかれたー・・・」

「結局・・私のコレも役に立たなかったワケですね・・・」


メイちゃんと咲妃ちゃんがぺたん、と座り込んでしまった


「・・あっつい中歩き回って、無駄な苦労しただけか・・」

「じゃあさ、今度大阪行って探さない?」

裕司が明の提案を力一杯却下したのは、言うまでもない(汗)

結局・・

骨折り損のくたびれ儲け、となってしまったようだ

・・いや、代わりにA.R.Kに新しいメンバーが一人加わる事となった


「向坂夢奈・・13人目のメンバーに確定」


・・景はさらさらっとメモをとって、彼女のデータを登録した。

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・・そして再び忍達は、というと・・


お台場で海を眺めていた


「・・・・」

「・・・・・」


潮風が爽やかに吹く・・

忍とすばるは、先ほどから赤い顔で海を見たままである


「・・・?」


(・・何をやっているのでござろう?・・さっきから何か言おうとしたりしなかったり・・?)


改都は流星牙皇を壁に立てかけ、警察官が追いかけてこないかをしきりに警戒している

・・しかし、その疑問は改都に理解できるワケもなかった


「あ、あの・・」

「な、なに・・?」


しばらく口をぱくぱくさせて、必死に声を出そうとしていたが・・・

ようやく気持ちを決めたようで、きっ・・と真面目な顔をしてすばるが言った


「こ、これ私のアドレスです!!・・で、ではここまで色々ありがとうございましたぁ!!」

「あ、ちょっ・・・」


行ってしまった

・・ま、一応フジテレビまで送り届けたワケだし・・・コレでお終いだよな


「・・忍殿・・先の行動はどういう意味があったのでござるか・・?」

「・・・なんでもねぇよ」


忍は照れ隠しのように笑って、改都に背中を向けた


「・・何がなんだかわからぬが・・まぁ、忍殿がその様子ならばよかったのでござろう」

「・・そーゆーことにしといてくれや」


二人は潮風に吹かれながら、お台場を後に・・・


「いたぞー!!」

「少年!その目立つ刀が仇になったな!!!」

「ちぃ・・!!逃げるぞ五右衛門!!」

「同感、逃げるが上策でござる!!」


・・彼らはこうして、再び警察と大逃走劇を繰り広げたという・・。


BGM:ルパン3世愛のテーマor五右衛門のテーマ

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フジテレビ・・


出演していた歌番組が終わった後、白銀すばるは楽屋で携帯電話をいじっていた

・・今日撮った写真が、そこに保存されている


「・・忍さん・・・・」


高杉忍・・彼女から見れば年上の男


(・・また会えるといいなぁ・・)


すばるは忍の照れ笑いの写ったその画像を、恍惚とした表情で眺めていた

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「・・忍、そのDVD・・?」

「ああ、コレなぁ・・・」


あの翌日・・・街で見かけた所、忍の様子がおかしかった

・・なんで君が白銀すばるのプロモDVDなんか持ってるの???


「・・あ、当たったんだよ・・CD買ったら」

「なんだ・・そーだったの・・てっきり忍がミーハーな趣味でも持ってるのかと・・」

「・・・なワケねぇだろ・・」


・・?・・あ、あれ??(汗)

いつもなら「んだとてめぇ!!」とか言いながら突っかかってくるのに・・?

・・熱でもあるのかな、もしかして(笑)


「あ・・・じゃあ、僕帰って母さんの手伝いしないといけないから・・」

「・・・そうか、じゃあな」


・・やっぱり、なんかおかしい・・・


僕は疑念を抱きつつ、帰路についた

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「・・な~るほどぉ~☆」


その様子を影で見ていた者がいた

ニヤ・・と怪しい笑いを浮かべると、メモを取り始めた


「・・改都くんに聞いた事はホントでしたね・・・怪しい・・怪しすぎますよ忍くぅん?」


雫・・彼女はどうやら、感づいたようだ

忍がすばると接触して、どう変わったかに・・・・・


一方で想い出にも残らない失敗談となったが、一方では一生に残る出会いが生まれていた

・・果たして、忍の内に秘めた思いはどういうものなのだろうか?


今はまだ、はっきりとはしていない・・


・NEXT-12「吼えて出撃!熱血小隊」

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