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チラシの裏の幻視録

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2010年12月11日
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カテゴリ:原子力
 こんばんは。

 今日のNHK教育のサイエンスZEROは原子力発電でありました。

 この番組、昨年のデコミ番組の酷さに代表されるやうに、原子力に対しては厳しい視点での報道が多いNHKとは思えない、気持ち悪いほどの原子力推進番組でありましたよ。(笑)
 NHKの中の人によると、「番組の方向性を決めてから編集する」のがNHKの方針らしいので、その意味では納得してしまいますが。

 番組の始めの約2/3は、順調に復旧を遂げつつある柏崎刈羽が対象。
 地震で得られた教訓を元に現場で施される改良工事(東京電力)、新たな情報提供システムの開発(JNES)、そして住民が求める情報の意識調査(新潟工科大学)など。
 「地震後に柏崎刈羽では不適合が3000件確認された」とのナレーションを流しながら、画面にはきちんと「蛍光灯の破損などの軽微なものも含む」と字幕を入れたり、また、変圧器の火災についても「周りにコンクリートの壁があるので延焼の可能性は低い」と紹介するなど、細かいところにも気を配った良い説明でした。

 私は地震当時、某機関で働いており、地震直後に現場に飛んで防火壁の健全性をこの目で確認したり、また不適合3000件(小さなネジが一個落ちてました、とか、コンクリートのカケラが落ちてました、なんてのものあった)の全てに目を通して分類して・・・といった事をやっていたので、このNHKの対応には好感さえ覚えましたよ。

 後の約1/3は、キャンドル炉と、加速器を組み合わせたトリウム利用の紹介でした。
 キャンドル炉は実は新しい概念ではないのでありますが、ビル・ゲイツが注目したことで日の目を浴びることになったもの。
 トリウム利用も以前から原子力業界の中の人には広く知られたものでしたが、あまりメディアでは取り上げられることのなかったものでした。
 これらを紹介したのはなかなか良いことだと思います。



 が、しかし!

 限られた時間の番組ですので仕方ないのは十分承知していますが、少しばかり「足りない」と思ったところが二つありましたので、補完したいと思います。

 まず、「想定されていた地震を上回る加速度が確認された」のグラフのところ。 
まるで、「耐震指針で想定されていた地震」=「実際の設備の耐震強度」のようにも取れる表現でありました。

 実際には、発電所は「耐震指針」に沿って作られてはいないのですよ。
 耐震性よりも、まずは、「止める」「冷やす」「閉じ込める」の機能を満足するために、各系統が設計されます。
 この際には金属のもつ弾性限界も考慮し、強度的にかなり余裕を持った(5倍や10倍はざらです)設計がなされています。

 実のところ、耐震指針は「指針を満足しているかどうかを確認するため」にしか使われていないできたのが実情だったりします。

 ですので、結果的に実際の設備が潜在的に持つ強度は「指針で求められている強度」を大きく上回るものとなっていることが当たり前なのです。

 だから柏崎刈羽の主要設備に損傷は一切なかった訳ですね。



 で、もう一つ。

 番組後半では、新しい原子炉の概念として、前述のキャンドル炉と加速器+トリウムを取り上げていました。
 しかしながら、これらの理論を基にした商用炉が実際に成り立つのか、と言ふのはまた別の問題。
 これらの技術開発には私も大変期待していますが、今のところは実証炉も作られておらず、実用化には程遠い段階。それなのに、番組ではそのことに全く触れていませんでした。

 それらが実用化されるまでの主力は現在の軽水炉であり、再処理されたMOX燃料であり、実用化に近い段階にあるナトリウム冷却の高速増殖炉であり、その先の高温ガス炉であると思います。

 今回のNHKの番組を見て、「キャンドル炉やトリウムがあるなら、プルサーマルも再処理も高速炉もいらないよね」とか思ってしまう人が多少なりともいそうで少し怖いです。


 まあ、気になる点は皆無ではありませんが、今回の番組は限られた時間の中でよく出来ていたと思いますよ。
 80点と言ふところでありませうか。


 今度はもう一歩進めて、稼働率70%以上を誇るロシアの高速炉BN-600や、建設中のBN-800の状況、動き出した中国の高速炉、インドのトリウムサイクル計画、潰れてしまった南アフリカのPBMR計画なんかも取り上げてくれると嬉しいです。
(我ながらマニアックだなぁ・・・原子力関係者しか見ないかも。)

 しかし、一番お願いしたいのはフィンランドのオルキルオトとスウェーデンのエストハンマル!
 複数の地域が廃棄物地層処分場の誘致で競い合ったと言ふ事実を、電気を使う全ての人に知って欲しい!






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最終更新日  2010年12月12日 01時31分19秒
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