永久の未完成これ完成である
こんにちは。 既に機を逸してしまった感がありますが、これ。 賢治の未発表詩草稿見つかる…生家の蔵で地図裏に鉛筆書き-引用- 停車場の向ふに河原があって 水がちよろちよろ流れてゐると わたしもおもひきみも云ふ ところがどうだあの水なのだ 上流でげい美の巨きな岩を 碑のやうにめぐったり 滝にかかって佐藤猊猊岩※先生を 幾たびあったがせたりする水が 停車場の前にがたびしの自働車が三台も居て 運転手たちは日に照らされて ものぐささうにしてゐるのだが ところがどうだあの自働車が ここから横沢へかけて 傾配つきの九十度近いカーブも切り 径一尺の赤い巨礫の道路も飛ぶ そのすさまじい自働車なのだ-引用終わり-※「岩」は「山」の下に「品」。(機種依存文字。なお、賢治の原稿では品の部分が間違っている) 先に発売された新校本宮沢賢治全集の最終巻には、この心象スケッチの原稿の写真や本人による推敲・訂正箇所、そして誤字までが記載され、さらに解説がついています。 この新資料発見の話題が何故に今更各紙で取り上げられることになったのか謎ですが、ひょっとしたらこの全集別巻の宣伝の意味もあるのでしょうか? 12,600円と言ふとんでもない価格。 当初予定から遅れに遅れた刊行。(この「新資料の発見」が最終巻の刊行をさらに遅らせたとの噂もあり) そして、生誕100周年の異常な盛り上がりから時間が経ち、宮沢賢治ブームが過去のものとなった現状。 一部の非常に濃い人を除き、こんなマニアックな本は買わないでしょうから。 ・・・・考えすぎ? しかし、非常に遅れたとは言え、別巻が刊行されて良かったです。 何時になっても出ないので、「農民芸術概論綱要」の「永久の未完成これ完成である」になってしまうのではないかと心配していましたよ。