ブックレビュー:漫画家本vol.1 藤田和日郎本~その3~ キーワードで読み解く藤田和日郎作品
BEFORE/漫画家本vol.1 藤田和日郎本~その2~藤田和日郎ロングインタビュー 前回・前々回の続きです。これがラストになります。3.キーワードで読み解く藤田和日郎作品このコラムは、「妖怪」「人形」など藤田作品に頻出するキーワードから、藤田先生の作品を解説するものなのですが、どれも読みごたえがあって面白いです。私が紹介するのは「少年」というキーワードから。いじめに関することについてです。藤田先生は作品中で書かないと決めていることはと過去に問われ、「いじめ問題の解決方法」と答えていたそうです。この本の中で、「うしおととら」のエピソードの1つ、「時限鉄道」のエピソードについて書かれている部分に紹介されています。私もこの本を読んで気づいたのですが、「時限鉄道」に登場するいじめられっ子の少年がいじめから解放された描写はありません。ただ10年後にその少年が教師になり、同じようにいじめられている少年に寄り添うシーンがあるだけです。「時限鉄道」では、彼の抱える問題がトンネルに例えられています。私もすごく好きなセリフなので、抜粋させていただくと、「トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ。一人っきりで、寒くてよ… …でもな、いつかは抜けるんだぜ」(主人公蒼月潮の父紫雨の言葉)とあります。このコラムでもこのセリフを抜粋して、苦しみぬいた時間も、自分が大人になり成長することで過ぎ去っていくものだと述べられています。私も学生時代人間関係によく悩んでいたので、いじめられっ子の気持ちはわかるところがあります。薄暗いトンネルの中にいる時間は、まるで永遠に続くかのようです。しかし明確な解決方法などというものはないのです。苦しみの底にいる人には酷な話でしょうが、最後は自分を成長させ、強くなっていくことでしか問題は解決しません。それは、いじめという問題が加害者の主観ではなく、被害者の主観によって作られているからなのです。人をからかって、馬鹿にして、「いじってやっているんだ」といじめっ子は言います。いじめっ子の中にいじめという意識はありません。悪いことをしてやろうと言って悪いことをする人はなかなかいないのです(もちろんごく一部いますが)。しかしいじめられっ子の視点から見ると、それは自分に対する悪意に他なりません。そこにいじめが生まれます。いじめはいじめられっ子がいじめられていると感じて初めていじめになるのです。もちろん、いじめられっ子が被害妄想が強いなどというつもりはありません。多くの場合、客観的に見てもいじめと断定できるケースが多いと思います。しかしいじめられっ子の中からいじめが生まれるなら、解決できるのは当人たるいじめられっ子しかいないのです。藤田先生と同じように、私もどうすればいじめが解決できるかなどと偉そうに講釈する気はありません。というかできません。人間関係の問題は、個別的で複雑で、一定の解答などというものは出ないからです。しかしそれでも今の苦しい時期を「トンネルの中」と思い、耐えて成長していけるなら、その時にはもうトンネルを抜けているのではないでしょうか。以上ブックレビューをしていたつもりが、自分の意見ばかりになってしまいブックレビューといえるかどうかはわからないものになってしまいましたが、いろいろな意見があると思うので、一つの意見として適当に聞き流してください。面白いと感じた方がもし少しでもいてくださったら、とてもうれしいです。ブックレビューもたまに書きたいので、不定期で更新します。ぜひご期待ください。それではまた。