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銀の鬣●ginnotategami

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銀鬣◇1956

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2007.02.25
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暖冬だと言う今年にしては、木枯らしの寒い一日だ。
こう言う日には、ここのエスプレッソに限る。

「やあ、マスター」
アルコールランプの火がゆれていた。
青白い炎なのに、温かく 見えた。
「例の、奥の席、空いてるぞ」
「いや、今日は、カウンターで」
一人で、あの席に座るのは寂しすぎる。

もう3ヶ月になる。
誰にも言わないで、黙っていた、けど。
ここでは、話が別だ。
初めて 君と会った。あの奥の席で。
物憂い横顔が 悲しそうだった。

何日も、君はここに通い
その君が気になって 同じだけここに来た。
「話しかけてみたら」とマスターが言わなかったら
そのまま、僕たちは出会わなかっただろう。

よく君の話を聞いたよ
別れた人が忘れられなくて、
ここは 君たちの 忘れられない場所
そして今は 僕の 忘れられない場所。

「ほら、エスプレッソ」
「どうも」
「恋人同士だったわけじゃ無いだろう」
「ええ、ただの友達です」
「そうか。君には恋人、か」

何時も、お茶を飲み、話しただけだよ。
手も握らず、キスしたことも無い。
だから、君が死んだ時、
こんなに 長い冬になるとは、思わなかった。
もう会えないのに、今でも君に会いに来る。

君の元彼を僕は恨む。
そんなに出来た人間じゃないから
でも、今日から、その思いはよそう。
君が 決して喜ばないことを、僕は知っている。

堅物の僕には、
君を喜ばせるなんて芸当は とても出来なかった。
「こんな話し面白くないね」と、君は言って
「そんなことないよ」と、毎回同じ言葉を返した。

男運が悪いと、彼女は、よく言った。
と、言うことは、僕も・・・と、思う。
彼氏でなければ、あなたを判れない訳じゃない。
彼氏でなくてもいい。・・・あっても、いいけど。

いずれにしても、君はいない。
こんなに、世界の色が変わると、思わなかった。
「元気だしなよ」と君に言った言葉。
あの時の僕が、今更ながら、ウソに思えた。


カウンターの隅に
冬だと言うのに、紫のアザミが飾られていた。
夏の花。温室栽培か、それとも時の気まぐれか。
「キレイですね」と、僕は言った。

「細君が好きだったのでね」
マスターの過去を聞いたことが無い
「名前はね・・」
カウンターに濡れた指で「夏花」と書いて
Cafeの看板を指差した。





     





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最終更新日  2008.06.15 01:12:47
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