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once 50 悲しい顔

***50***

有芯はまっすぐに朝子を見つめ返している。

負けそう・・・。

朝子は有芯の正直な瞳に耐えられず目をそらした。そのまま見つめていれば、彼への愛しさが爆発し胸が裂けそうに思えたのだ。

朝子は負けないためにと、未だベッドに押し付けられたまま、平静を装い訴えた。

「だって、さぁ、有芯、昔ほどもてなくなったって聞いたし、私が好きだったのは高校時代の有芯だしさ~、私の好きな人はもういないんだって思えれば、それで済む話じゃない?! だから来たのよ!?」

「・・・お前なぁ」

有芯は呆れていた。

「そんなこと言って、俺が納得すると思う?」

「・・・そんなこと言われたって・・・」朝子はもうヤケクソだった。何か言わないと、とにかく何か言わないと・・・。

「・・・そんなこと言われたって」

「朝子先輩、慌て過ぎですよ」

有芯の言葉にむっとして、朝子は彼を見上げた。しかし彼が、今までに見たこともないような優しい表情で自分を見下ろしていたので、呆然としてしまった。そして一瞬後、朝子の顔は一気に火がついたように熱くなった。

私のバカ、今有芯に惚れ直して、どうするのよ・・・っ!

有芯は朝子の頬にキスをして言った。「さっき、どうして俺にキスしたの?」

「それは・・・最後だと思ったから」

「何で泣いてたの?」

「それは・・・」朝子は口をつぐんだが、有芯が、言葉の先を引き継いだ。

「・・・俺を愛してるから?」

朝子は呆然とした。が、我に返ると叫んだ。

「違う! それに私、泣いてないし・・・」

有芯は強い口調で朝子を遮った。「絶対違わない。お前、俺のことをこの先もずっと愛してるって言ったよな」

「あんなの・・・!」朝子の目に、また涙が滲んだ。「あんなの・・・っ、嘘よ」

「俺は朝子を愛してた。今も愛してるし・・・きっと、これからも愛してる」

「・・・・・それも嘘よ・・・ねぇ、嘘だって言って・・・」

朝子の瞳から零れ落ちそうになる涙を、有芯の唇がそっと受け止めた。彼は怯えた表情の朝子を見つめ言った。

「嘘じゃない。まったく・・・朝子は泣き虫だなぁ。ほら、俺の気持ち言ったぞ。吹っ切れたか?」

「馬鹿にしないで! もう吹っ切れてるわ! 言ったでしょう、嫌いだって!」

「じゃあ俺に触られても何も感じない?」

有芯は朝子のカーディガンと下着をまくり上げるとあらわになった胸に噛み付いた。朝子が思わず声を上げると、有芯が彼女の顔を覗き込んだ。

「好きじゃない男に触られても、女はちっとも感じない、って昔、どっかの誰かさんが言ってたよ、な?」

そう言って悲しそうに笑うと、有芯は朝子の服を脱がせていった。彼女が抵抗しようとするたび、彼は彼女の唇を塞ぎ、朝子を動けなくさせた。

こうなったらもう、かわいそうだけど有芯の大事なところを膝蹴りするしかない・・・と思い、彼の顔を見上げた朝子は愕然とした。

彼が、心底悲しそうで、必死な顔をして朝子を脱がせていたからだ。




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