■『「退化」の進化学』犬塚則久 2006年発行
本棚:生きもの 481.1イ
今年も
芸工展のポスターが出番を待っているようだ。「やっぱり、好き」のタイトル。百からの企画を束ねるタイトルだけに、とってもチャーミングだ。10月8日(土)~23日(日)の芸工展に向けて、谷根千じゅうでこのポスターを見かけることになる、楽しみだ。
そんな中で、いつの頃の芸工展からか、登場するようになった「かたつむり君」(カタツムリを背負った少年)。
『「退化」の進化学』を読みながら、「かたつむり君」のことを思った。いや、逆かな。ヒトにのこる進化の足跡から、ヒトに到る4億年の歴史を扱っている。
目次の章立てが発生学のステージをよくあらわしている。
上陸して-4億年前から
哺乳類から-2億年前から
サルとなって-7000万年前から
類人猿より-3000万年前から
木からおりて-700万年前から
ヒトになる-250万年前から
男と女のはざま-誕生前から
全体を貫くトーンは「個体発生は系統発生を短縮して繰り返す」という反復説。それに沿って、退化とは進化の逆ではなくむしろ進化によっておこる、進化の一部だという視点。
面白いのは、心臓の部屋数。魚類で一心房一心室、両生類から二心房一心室、ワニや鳥、哺乳類で二心房二心室と増えてきたが、この進化は部屋を建て増ししたのではなく、下の部屋に間仕切りをしただけ。両生類になって新たに肺循環が出来たことで肺から戻って来た所に間仕切り。やがてそこが肥大して新たな心房になる。
…というくだり。陸生活にライフスタイルが変わっても、広い空間を与えてもらえず、間仕切りでしのいでいるというのはイジラシイというか、谷根千の住宅事情にも似ているような。かたつむり君流の宿がり、のような。
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