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■『盲ろう者への通訳・介助-「光」と「音」を伝えるための方法と技術』全国盲ろう者協会 編著 2008年発行
ジャンル名:福祉・厚生 369.2 日暮里の夕やけだんだんで2006年に行なった点字物語2006で、「ねこに、さわったこと」という本人の体験談を投稿して、実際にも読み昇りに参加してくれたみやぐちさんへのコミュニケーションの時、本書のような本が出ていたらさらに充実していたろうと思われた。 本書は、1991年に設立した全国盲ろう者協会による研修会などで使われてきたテキストなどの蓄積を元に、盲ろうの当事者や通訳方法における熟練者による実践的実技の本といえる。 ひと口に「盲ろう者」といっても、視覚や聴覚の程度によって、(1)全盲ろう(2)全盲難聴(3)弱視ろう(4)弱視難聴に大別され、また、障害の発生の順序によって、(ア)「盲ベース」の盲ろう者(イ)「ろうベース」の盲ろう者(ウ)上記のいずれでもない盲ろう者(エ)幼少期からの盲ろう者に分かれ、「先天性の盲ろう児・者、かなり短期間のうちに盲ろう状態になった人、進行性の疾病などから徐々に視覚と聴力を失っていった人、さらには知的障害や運動障害を併せ持っている人など、状況は様々」だという。 それに合わせて、コミュニケーション手段も多種多様だ。盲ろう者が直接他者と会話を交わす場合、また、通訳者を介して交わす場合、特に後者の場合には守秘義務、マナーや状況説明、気配りなども加わる。コミュニケーション手段には、手話・指文字・ブリスタ・手書き文字・筆記・音声・パソコン・キュードスピーチなどがあり、盲ろう者の置かれた状況により、通訳・介助者も養成されている。 基本的マナーとして、盲ろう者と話し始める時には、名前など自己紹介をする。話し始めたら盲ろう者の手にいつも触れているようにする。(盲ろう者の手を触れたり離したりするのは、盲ろう者にとって不安を感じることだと著者の一人福島智さんが書かれている)。話を中断してその場を離れる時や対話を終了する時には必ず事前にその旨を伝える。 さらに通訳の際の一般的注意点が挙げられているが、これこそコミュニケーションの基本とも言うべきもので、注意点として教えられるというよりも、私たち一人一人がコミュニケーションの本質に向き合うことで本来は自分から発見しなければならない重要なことばかりである! とても紹介しきれないので、ぜひ直接、本書にあたられたい。 ひるがえって、私たちの考える防災コミュニティにも、災害時には同時に多くの不安な状況が降りかかることでしょう。その意味でも、このコミュニケーションの本質に触れるこれらの実践的注意点はすべての人にとって重要に思う。 本書では、他にも盲ろう者の手のひらに話しての指で字を書くコミュニケーションにおいては、正しい筆順が盲ろう者には理解しやすいこと(「道」などは首から。ただしコの字など例外もあり)。話し言葉の通訳、電話での内容を相互に伝える通訳。騒がしいパーティ会場などでの弱視難聴者の困難さへの理解。音声通訳での理解を確認しながらの進め方、同音異義語、ろうベースの盲ろう者で、あとから視覚障害が進行した場合に、その障害の受容に時間がかかることもあり、「周囲との円滑なコミュニケーションや人間関係づくり、白杖の所持」など、時間をかけての取り組みが必要。「見る手話」(弱視手話)「触る手話」(触手話、触読手話)での手指を動かす速さや幅、聞き手に合わせた表現の工夫、身だしなみについて。盲ろう者の移動介助の基礎、通訳・介助者からみて「安全」に移動介助ができると思われる方法が、必ずしも盲ろう者にとって「安心」を感じられる方法ではない場合があるなど。 巻末には年表、生活実態調査(聞くときの方法は20項目に及ぶ!)、書籍紹介、賛助会員の募集などが掲載されている。 (1506字) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年09月08日 12時20分47秒
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