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■『サザエさん一家の公的保険 』梅本達司 2011年発行
ジャンル名:福祉・厚生 364ウ この本は新着本のコーナーに置いてあった。題名からして眼につく。 冒頭にサザエさん一家が加入している公的保険制度の紹介があり、ついつい見てしまう。 サザエさんは、フグ田家、磯野家、波野家、いささか家などに属している人物たちである、へえ~。フグ田マスオさんは海山商事営業課29歳。健康保険の被保険者、厚生年金の被保険者、国民年金の第2号被保険者、雇用保険の被保険者、労災保険の適用労働者である。へえ~。フグ田サザエさんは、専業主婦で、28歳。健康保険の被扶養者。国民年金の第3号被保険者。フグ田タラちゃんは、3歳。健康保険の被保険者。へえー。 もっともこれは保険の説明のしやすさに即しての設定だろうから、この本の中だけのサザエさんかもしれない。著者も冒頭で、「原作の『サザエさん』のストーリーとはいっさい関係ありません」とうたっている通りであろう。それでも覗いてみたくなるのはなぜ? 磯野家の磯野波平さんは54歳(ほんとは若かった)、海野商事経理部。健康保険の被保険者、厚生年金被保険者、国民年金の第2号被保険者、雇用保険の被保険者、労災の適用労働者、介護保険の第2号被保険者。フネ、カツオ、ワカメ。 波野家の波野ノリスケさん28歳、出版社勤務。タイコ、イクラ。 いささか家のいささか先生、59歳、国民健康保険の被保険者、国民年金の第1号被保険者、介護保険の第2号被保険者。お軽さん、専業主婦。保険はいささか先生とまったく同じ。 この設定の下で人生いろいろが起こる。とくにマスオさんの浮き沈みは保険の例として挙げられているにしては、ひと繋がりのドラマ性があり見事に学習させられてしまう。 いわく、もし、マスオさんの4月~6月の残業が多かったら→(ここぞとばかりに海外旅行)もし、タラちゃんが海外旅行中に病気になったら→もし、マスオさんが降格し、役付手当がなくなったら→もし、サザエさんがパートに出たら→もし、マスオさんが玄関先で転倒してケガしたら、と徐々におかしくなり、兼職や単身赴任の末、脳出血で長期入院、もし、マスオさんが病気のまま退職したら→と、おおっと思う。サザエさんという日頃何事もない家族だからこそ、こうした意外な出来事はリアリティが2倍になる。実によく出来ている。 いや、内容もそれに伴って判りやすい。 育児休暇をとり、職場復帰をするマスオさん(タラちゃんの下の子の名は○○ちゃん!)。残業を減らしてもらったりしたことによっては、従来なら固定賃金の変更ではないので、標準報酬月額は改定されないため、それまでの給与月額に基づき、健康保険、厚生年金の保険料が決められてきた。が、実際には給与月額が下がっているのだから、取られるほうも固定賃金がさほど下がっていなくとも、保険料負担は減るように、育児休業終了時の改定がなされたという。かといって、その分将来の年金額が減ってしまっては身も蓋もないので、少子化対策として「従前額みなし措置」が平成17年度から実施されているという。標準報酬月額の低下がなかったものとみなして計算してくれる特例だそうだ。なるほど、ここまで説明されると納得。 他にも、もしマスオさんが玄関先で門でつまずいて転倒してケガしたら、通勤災害にあたるのか、とか、高額療養費制度のこととか、高年齢雇用継続基本給付金の存在だとか、私も外仕事での中高年の労務管理において、この辺についてはだいぶ悩まされた経験がある。具体的な計算もかなり痒い所に手が届く配慮がされていて、実務者にはお勧めの本といえる。 ちなみに、59歳のいささか先生。19年間会社勤めで保険料を納付。その後自由業となってからはずっと保険料をまったく滞納。第1号被保険者でいられるのは60歳まで。あと1歳では、保険を受け取れる25年を満たすことが出来ません。うーん、谷中のあまたの自由業者にも関係ある(だろう)から、身につまされるところ。ところが実際には、国民年金の特例として、任意加入被保険者として69歳まで保険料を払えば、その時点で年金が受け取れるそうだ。ほっ。 (1659字) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年09月30日 02時07分47秒
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