名前名前新聞を開いたら 左右一面文字で埋まっていた 砂浜のような小さな粒の集まりは 震災で犠牲になった 人々の名前だった それに気づいたとき 横たわる活字が列になり波のようにうねった 波が押し寄せたとき 活字と私の間の空気が 急に重く厚くなった 活字が二つずつの目になり じっと私を見ていた たくさんの悲しい目が 無言のままで私を見ていた 私がみえない目をそっと閉じると 身体全体が瞳になり その中を 透明な魂が風のように通り抜けていった 潮の香りが通り過ぎた (2011・7・14 新聞で震災で犠牲になった人の名前の紙面を開いて) |