『老後破産 [ 日本放送協会 ] 』(新潮社刊)が,話題を集めているが,高齢者層で経済的理由から苦境に陥る人が激増しているという。
明治学院大学社会学部の河合克義教授は,「2012年に東京都港区の,75歳以上の高齢者を含む2人世帯を調査したところ、高齢者夫婦のみの世帯については,年収250万円未満の世帯が26・3%を占めた。4世帯に1世帯は生活保護水準に近い生活をしている」とした上で,
「同じ港区でその前年,65歳以上の1人暮らしを調査したが,生活保護水準である年収150万円未満の人が37%に上った。港区の高齢者の平均所得は全国的にも高いと思われるが,一部の高所得者が平均を引き上げているだけで,貧困にあえいでいる高齢者は大勢いる。年金を満足にもらえている人は多くないうえ,年金額自体が引き下げられ,その中から各種の社会保障費などを払わなければいけない」と,困窮の実態を語っている。
■生活をダウンサイジングする
老後に貧困に陥る人がいかに多いか。そうならないために,あらかじめ生活をダウンサイジングすべきだと説くのが,『老後に破産する人、しない人 』の著者,中村宏氏である。
「老後破産に近いのは“この先不透明だから,今から考えても仕方ない”と開き直って,何も準備しない人。リタイア後,解放感があるし退職金もあるからと,夫婦で旅行に行ったり,飲み会を開いたりと,浪費してしまう。そういう方の多くがクレジットカードを使っているが,カードは捨て,月々使う金額だけを財布に入れてやりくりするのが,簡単にできるダウンサイジングの方法」と,説く。 -出所:「週刊新潮 2015-1-10号」