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2007.12.05 楽天プロフィール Add to Google XML

 原稿の催促について
[ 編集者入門ミニ講座 (改訂版) ]    


 編集者は著者への正式な執筆依頼が済むと、ここから先、著者が原稿を脱稿するまでの間、刊行までのスケジュールを睨みながら、定期的に原稿の催促を行なっていきます。 ここでいう催促とは「先生、その後、ご原稿の進み具合はいかがですか? 少しずつでも、進んでいますか? 期待していますので、頑張って下さい。」 という “著者への励まし” と “進行状況のチェック” などを意味しています。

 普段、編集者が原稿を催促する方法としては、 
    “電話をする  手紙を書く  メールを送る  訪問をする”
などがありますが、 どの方法がベストということではなく、 場面に応じてうまく使い分けていくことが大切だと思います。

 しかし そうは言っても、やはり原稿催促の方法として最もよく用いられるのは電話だと思いますが電話を掛ける際に最も配慮しなければならないことは、その著者の生活習慣や予定がどのようなものかということです。 

 例えば、執筆は専ら夜 (深夜) にするという習慣をもつ著者に、午前中の早々から原稿催促の電話をすれば、 「自分のこと、わかってくれてないなぁ~」 と思われてしまうことでしょう。 また、本来の仕事 (例えば、昼間は会社勤めをしているなど) と原稿執筆の2つの仕事をこなしているような著者に対して会社に原稿催促で電話をするのは、やはり著者から見れば迷惑なことでしょう。
 (著者が大学の先生の場合には、会社勤めの方と比べると、比較的連絡が取り易いということは言えます。)

 電話というのは、リアルタイムで著者と連絡がつくということで編集者にとっては都合が良い反面、相手の現在の状況をわからぬままに、こちらの勝手な都合で相手をその場に拘束するという負の面があることも (特に、著者が会社勤めをしている場合には) 頭に入れておかなくてはなりません。

 これは以前に記したことがありますが、普段 読者の方には知られることが少ない、編集者と著者との電話での原稿催促のやり取りの一コマをちょっとだけご紹介します。 
  「先生、執筆の進み具合はいかがですか?」 と、電話で尋ねてみると ・・・

  (1) 謝り続けます 型
   「すいません、本当に申し訳ないです。 なかなか執筆が進まなくて・・・、すいません。」
 いつものこととわかっていながらも、ついつい、「わかりました。 先生、どうか頑張って下さい。」 って言ってしまいます。
  (2) 蕎麦屋の出前 (いまやってます) 型
   「あー原稿ね。 いま、ちょうど書いているところですよ。」
 不思議なことに、いつ電話しても、まさにドンピシャで執筆中 (らしい) です。 そして、電話の声が妙に元気いっぱいです。 (でもちょっとだけ、声に動揺がみられますが ・・・)
  (3) パソコンの調子が悪い 型
   「それがねー、最近パソコンの調子がどうも良くなくてねー、執筆が進まないんですよ。」
 これも不思議なことですが、電話をしたときには必ずと言っていいほど、パソコンが何らかのトラブルを起こしています。
  その他 ・・・

 ちょっと面白可笑しく書いてしまいましたが、これらの返事にもめげずに何とか乗り越えて、最後にはきちんと原稿を頂くことが編集者には求められるわけです。 (上のパターンのどれかに当てはまる、と感じた著者の方がいらしたら、ごめんなさい。)

 手紙は、相手の都合の良いときに読んでもらえるという点で、著者にとっては好都合なのですが、編集者にとっては、 「あの手紙、きちんと読んでもらえただろうか」 と気になるということはあります。 確かに、手紙の場合には連絡が一方通行なので、著者の進行状況をこちらが掴むことができないという欠点はありますが、手紙 (特に、手書きの手紙) を書いて送るということは、私の経験では、著者に対してとても良い方向にはたらくということが言えます。 私の場合には毎回ということではありませんが、特に執筆が思うように進んでいない著者に対しては、手紙や葉書きを送ることもしています。

 メールは通信手段として大変便利なものですが、原稿催促の主要な手段として用いることは、私はあまり賛成できません。 単なる事務的な連絡で (手違いがないように、伝えたい内容を文章にして残すために) 用いるのは良いと思うのですが、メールを原稿催促の主要な手段にするのは、著者に対して事務的に進行状況の確認をしているようで、私にはかなり抵抗があります。 もちろん、著者がメールで構わないと事前に了解をしているならば問題はないとは思うのですが、 それでも、 メールでの原稿催促はなるべく控えるべきではないかというのが私の考えです。

 著者を訪問する際には、事前にアポをとることが必要です。 著者がよほどの遠隔地に住んでいない限りは、定期的に著者のところに伺う (著者と会う) というのは、原稿催促の鉄則です。 執筆を引き受けて頂くまでは何度も足を運んだのに、その後は、ただ電話やメールだけで催促をするというのでは、著者を大切にしていないということになります。 

 また、“編集者は著者の良き相談相手にならなければならない” ということもあります。 著者が執筆に行き詰っているときには励ましの言葉を掛けたり、これからの話の展開について方向性を確認したりもします。 また、必要な資料があるとなれば、助手として著者の変わりに動くことも必要になったりと、著者に会うことはいろいろな点で大きな意味があるわけです。

 原稿催促は、その本の刊行スケジュールを考慮して、タイミングをはかって行なっていきます。 当初の企画通りの方向で執筆が進んでいるか、脱稿予定はいつ頃になりそうかなどを著者とのやり取りの中で把握し、だいぶ書き上がってきたなぁという感じであれば、それをもとに編集者は本の刊行日を設定し、そこから逆算して、おおよその脱稿日を立てます。 そして脱稿日に向けて、催促と次の催促の期間を少しずつ狭めていきます。 この頃には、著者に対しても刊行予定日などをお話して、脱稿に向けて最後の詰めの作業を進めて頂くように、多少プレッシャーを掛けることもします。

 著者に対して原稿催促をするときは緊張をしますし、気を使います。 「いまは電話をしても大丈夫な時間帯か、前回の催促からどのくらい経っているか、そのときはどのような話をしたか、著者から頼まれていた資料探しはなかったか、 前回の電話のときはあまり進んでいる様子はなかったが今回は良い返事が頂けるだろうか」 などといったことが頭の中で駆け巡ります。 そういった緊張感を持った中で、順調に原稿の執筆が進んでいるというご返事を頂けたときは、本当に嬉しいものです。




Last updated  2007.12.06 01:31:38
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