著書からの最初の原稿 (1次原稿) が編集者の思い描いていたような (あるいは思っていた以上の) 内容にまとまっていれば、後は文章の細かな手直しなど全体のブラッシュアップをお願いして、原稿の完成を待つことになります。 そして編集者は、著者に最後のひと踏ん張りをお願いするとともに、適当な間隔を見ながら励ましの声をかけるなど、原稿の仕上げに向けて著者をサポートしていきます。
しかし、もしこの1次原稿が編集者の期待するようなものになっていなかったときには、その原稿の出来栄えに応じて、いくつかの判断を迫られることになります。
例えば、当初の狙いとは違ったものになっているが、この原稿自体は本として出版する価値がある、と担当編集者が感じる場合があります。 こうした場合、編集者は社内で臨時の編集 (企画) 会議を開きます。 そして、著者から頂いた現在の原稿が当初の企画からは ずれたところにあることを説明した上で、しかしこの原稿自体は別の企画として出版するだけの価値を持っていると思う、という自分の考えを述べます。
そして、現在の原稿を生かしてこのままの方向性で別の本として出版するか、それとも、当初の狙い通りになるように著者に書き直しをしてもらった方がよいか、編集部内で意見を戦わせることになります。 担当編集者の意見が尊重されるとはいえ、前者と後者では狙いの違った本になるため、ここでの決断は、編集者も会社側も大いに悩むところです。
その一方で、著者の1次原稿があまりに魅力に欠けると言わざるを得ない場合もあります。 こうした場合、もう一度、著者と膝を詰めて話し合い、当初の狙いなどを再確認した上で現在の原稿のレベルを正直にお話し、書き直しをお願いすることになります。 ただ、こうした結果になったのは、編集者側にも大きな責任があると思います。 こうしたことにならないためにも、著者との日頃のコミュニケーションが大切になってくるわけです。
著者に大幅な書き直しをお願いすることは、編集者として経験を積んだ人であっても、そして、特に編集者として駆け出しの頃は、とても勇気のいることです。 しかし前回記したように、それをお願いできるのは唯一、担当編集者の自分自身であるということを重く受けとめなければいけません。
編集者は、時には著者に対して厳しいことを言わなくてはならないこともあります。 だからこそ、編集者は “著者に信頼される人物となること” が大切だと思うのです。