用字 ・用語の統一をしながら、 原稿を一通り読み終え、 これで特に内容的に問題がない (まだ若干気になる箇所はあるが、 それは校正の段階で処理すれば済む程度) と判断した編集者は、 次に、その原稿に割付 (わりつけ) という作業を行なっていきます。
割付とは、その原稿の読者対象やレベル、読みやすさなどを考慮しながら、原稿に書体や文字の大きさの指定、図の配置などのレイアウトの指定を入れていくもので、原稿に本の1ページごとの設計図を書き入れていくようなものと言えます。 具体的には、次のような作業を行ないます。
1. 章や節の見出し文字の書体や大きさ、配置を指定する。
2. 読みやすさ ・わかりやすさに配慮しつつ、本文活字の書体や大きさ、配置を指定する。
3. 図をどこにどのように配置するかを指定する。
編集者の頭の中では、具体的な割付まではいかなくても、その本を企画した時点で、仕上がりのイメージというのは大まかにでもできているのが普通です。 そこで、その本の読者対象をイメージしつつ、また位置づけ (啓蒙書や入門書か、それとも教科書的な本か、あるいは専門的な本なのかなど) を考えながら割付をしていくことが必要となります。
これはとても重要なことですが、同じ原稿であっても、割付の仕方によって、その本の読みやすさや印象は全くと言っていいほど変わってしまいます。 そのため、その本の狙いや読者対象をきちんと押さえて、それに合った割付をしていかないと、割付の方向性を間違ったがために、売れるものも売れなくなってしまうということになるわけです。
例えば今、何かあるテーマについて勉強したいと思っているとします。 多くの方は、まず最初は入門書から読んでみようと考えると思います。 そして、それを一通り読破した上で、いよいよ本格的に勉強してみようと考えたときに、手にした本が (表現としては不適切かもしれませんが) 遊び心の入った見出しやレイアウトだと、 「この本は入門書みたいで、専門書としては物足りない内容かも・・・」 という印象を持つのではないかと思います。
すべての読者が上のように感じるというわけではないと思いますが、 “内容は、まさにあなたに読んで欲しいレベル” であるにもかかわらず、割付から受ける印象で、本来買って欲しい読者に敬遠されてしまうということが起こりうるわけです。 また逆を返せば、たとえ難しい内容の原稿であっても、割付の工夫次第で、読者に易しい印象を与えることもできるということになります。
“原稿の内容、読者対象に合った割付をする” というのは言葉で言うほど簡単なことではなく、特に編集者として駆け出しの頃は、仕上がりのイメージがうまくできず、思うように割付ができません。 そのため、割付して印刷所に入稿した原稿が組版されて出てきた校正刷を見て、指定があまかったことに気がついて大幅に軌道修正したりということがよくあります。
原稿の割付に正解というのはないと思うので、 こればかりは、 多くの経験を積んで、多くの本を参考にして、そしていっぱい悩んで、自分なりに会得していくしかないと思います。