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天使の絵本
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小さな魔法使い

川浜沙菜
13才
かわいい物が大好きな中学一年生。
将来の事なんて考えらんないお年頃。
座右の銘は『一日一善』
お父さんが言ったから一日一善。
座右って何?
銘ってどういう意味?
って思ったけど、
長くなりそうだからパスした。
今日はおはしを出したから一善。
昨日はお茶を出したから一善。
そんな毎日。

そんな毎日が続くんだなんてなんとなく決めた気でいたけれど、
今夜私は魔法使いになった。

お母さん曰く
フォン・レ・マーブレ。
継承の儀。

フォンが繋ぐっていう意味で、
マーブレは儀式。
レが接続語の魔法言葉。

私とお母さんとお婆ちゃんの、
秘密の儀式。

内容はなんて事ない魔法の呪文だったけれど、
最後に小さなお守りをもらった。
かわいいくまさんのお守り。
肌身はなさず持ってなさい。
なんて。
こんなにかわいい物手放すわけ無いもの。



その夜の話を友達の高菜ちゃんに話すと、
「あはははははは。
面白い!座布団一枚!!
…え?
本気にしてる?
担がれてんだよー。絶対。
あはははは。お腹イタイ。」

なんか…

「そんな事もあるかなーと思って。」







そんなよるから3日がたった。
私は相変わらず魔法使いで、
高菜ちゃんは相変わらず笑ってて、
冗談半分に受け流す高菜ちゃんに私はくまさんのお守りを見せ付ける。

確かにかわいいのだけど…。

これじゃあ証拠にならない。

にっこりと笑う小さなくまさん。
元は肉食獣なのに人間って凄いな、なんてわけの分かんない事に感心しつつ、私は今日も一人小さな魔法使いだった。





学校の帰りにアイスを買って行くことにした。
チョコチップとアーモンドのクッキーサンド。
実はバニラが自慢のラブ屋の看板娘。

ちょうど日も落ち始めたころ、紅く染まる住宅街を早足で。
早く行かなければ売り切れてしまう。
なんたっていくつもの校区が密集しているこの荒巻町では、ラブ屋のアイスは定番の売り切れ商品なのだ。
そんなことを考えてると、何かに足を取られて盛大に転んでしまう。
大丈夫。転びかたのわりに怪我はしていない。結構痛かったけれど。
足を払って立ち上がる。
埃が少し舞い上がる。

なにげなく左を向くと細い路地が見えた。

間に合うかもしれない。

そう思って足を踏み出す。

沈みかけた太陽が見える。

夕暮れが闇色に染まっていく。

猫の鳴き声が聞こえる。

どこかの家のカレーの臭い。

子供の笑い声。

曲がりくねった細道。

どこまでも続いてゆく。

沈みかけた太陽が見える。

夕暮れが闇色に染まっていく。

終らない細道。

聞こえなくなった猫の鳴き声。

途絶えた子供の笑い声。

ふと足を止める。

終らない細道。

何かおかしい。

こんな昼夜の曖昧な頃は、なんだか嫌な事を考えてしまう。

背筋に冷たいものがはしる。
嫌な予感がして、
引き返そうと後ろを振り向くと、そこにはただ地平へと続く真っ直ぐな道が続いていた。

その道の先にはいつまでも沈まない夕日が浮かんでいる。

音も無く。
ただ夕焼けが続いている。
不意に沸き上がるような恐怖を感じて辺りを見回す。



ひとつ

小さな人影が目を入った。





終らない細道の先に。
ただじっと立ち尽くしている。

それが誰かはわからない。
半分シルエットになったような。
よくわからない距離感。

遠いのか近いのか。
男の子なのか女の子なのか。
それが誰かはわからない。




ふと

その影が笑った気がした。
気が遠くなってゆく。
その影の口元が動いた気がして、私は意識を失った。




誰そ彼――――





気がつくとお母さんの背中の上だった。
淡いカレーの匂い。
ゆっくりと上下する。
それが何だか心地よくて。
仄かなまどろみが私を包み込む。

「落としちゃだめって言ったでしょ。」

そういって熊さんを手渡してくれる。
落としちゃったのか。

そんな事も、まどろみの中に溶けてしまう。

少し眠い。

一つあくびをして、
私はもう一度眠ることにした。



小さな魔法使いの、最初の物語。
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