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テーマ:世界を動かす国際金融(373)
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石油企業はここ数年で、大手をさらに大手が飲み込むことで「再編」が進んでいる。最近では、先日も書いたようにシェブロン・テキサコがユノカルを約2兆円で買収することが報じられたばかりである。 金額の大きい順に最近の買収を並べる(5件)と以下のようになる。 買収企業 被買収企業 金額(10億ドル) 買収完了日 Exxon Corp. Mobil Corp. $85.2 bln Nov. 30, 1999 BP Plc Amoco Corp. $61.7 Dec. 31, 1998 Chevron Corp. Texaco Inc. $45.8 Oct. 9, 2001 BP Plc Atlantic Richfield $33.1 Apr 18, 2000 Phillips Pet Conoco Inc. $25 Aug. 30, 2002 石油メジャー(国際石油資本)の動向を見ることは、世界情勢を知る上で重要なことだと思っている。 現在、世界最大の石油会社は、エクソン・モービルである。先日の世界優良企業番付では6位に登場しているロックフェラーのスタンダード石油に起源を持つ会社である。 エクソン・モービルは、2月18日に株式時価総額でGEを抜き世界1位の時価総額となったが、この日の終値、約3833億ドルという驚異的な数字は、オランダやオーストラリアや韓国のGDPに匹敵する数字なのである。2004年は、売上げが約3000億ドル、純利益が250億ドル強だったので、これはシティグループを上回って世界1位になっていることになる。 石油メジャーでは、ロイヤル・ダッチ・シェル、BPがこれに続く。 以前は「セブン・シスターズ」という言葉があった。これは国際石油資本の7社を総称した言葉である。 ★ ロイヤル・ダッチ・シェル ★ ブリティッシュ・ペトロリアム(BP) ● エクソン ● モービル ● テキサコ ● ソーカル ● ガルフ 以上の7社である。 これらも合併(吸収合併)を重ねてきたことにより、エクソン・モービルとロイヤル・ダッチ・シェルとBPの3強になっているのが現在の「セブン・シスターズ」の姿である。 エクソンとモービルが合併し、エクソン・モービルに。 ガルフがソーカルに吸収されシェブロンとなり、そのシェブロンがテキサコと合併して、シェブロンテキサコになった。先日ユノカルを買収したシェブロンテキサコが現在の姿である。シェブロンテキサコは、2003年の売上高は石油業界で世界第5位であり、米国では第2位であるが、先日の「世界優良企業番付」では20位に登場している企業である。 スーパーメジャーが3社、その下にシェブロンテキサコやトタールなどが続くわけである。 エクソンとモービル、シェブロン……これらは元々、スタンダード石油から分割(1911年)された同系列の会社なのだが、解体された会社の合併が許されているという不思議な光景を見ていることになる。 ● エクソンは、トラスト解体によりスタンダード石油ニュージャージーとして独立、72年にエクソンに社名変更、99年にモービルと合併してエクソン・モービルになる。 ● モービルは、トラスト解体によりスタンダード石油ニューヨーク(通称ソコニー)として独立、31年にヴァキューム石油と合併してソコニー・ヴァキュームに社名変更、55年にソコニー・モービル石油に社名変更、66年にモービル石油に社名変更、99年にエクソンと合併してエクソン・モービルになる。 ● シェブロンは、トラスト解体によりスタンダード石油カリフォルニアとして独立、33年にカリフォルニア・アラビアン・スタンダード石油(アラムコ)を設立、84年にガルフ石油を買収してシェブロンと改称、01年にテキサコと合併してシェブロン・テキサコになる。そして、ユノカルを買収、と。 ● ガルフ石油は、メロン財閥(メロン家)が設立した会社で、財務長官アンドリュー・メロンが総帥を務めていたが、84年にスタンダード石油カリフォルニアに買収されてシェブロンに統合される。01年にシェブロンがテキサコと合併してシェブロン・テキサコになる。 ★ ロイヤル・ダッチ・シェルは、マーカス・サミュエルに起源があるが、オランダとイギリスをロスチャイルドが合併させた英蘭連合企業である。シェルについては長くなるので省略するが、『石油の世紀』などが詳しい。 ★ 最近BPが飲み込んだアトランティック・リッチフィールドとアモコは、どちらもロックフェラーのスタンダード石油である。 1886年にビルマ石油が設立され、1909年に設立されたアングロ・ペルシャ石油がビルマ石油の子会社となり、1914年にアングロ・ペルシャ石油の株52%をイギリス政府が取得、1935年にアングロ・イラニアン石油に改称、1954年にブリティッシュ・ペトロリアム(イギリス石油)に改称、1970年にスタンダード石油オハイオと合併、1978年にスタンダード石油オハイオを完全子会社化、1998年にアモコ(スタンダード石油インディアナ)と合併してBPアモコとなり、2000年にアトランティック・リッチフィールドを買収、そしてBPと改称し現在に至る、と。 以上がメジャーの動きを簡単にまとめたものであるが、本当はもうひとつメジャーが誕生するはずだった。それはロシアから。規模はシェブロンテキサコを抜いて世界第4位の石油メジャーが誕生するという計画だった。しかし、プーチンが潰した……(拍手) 逮捕されたロシアトップの大富豪ミハイル・ホドルコフスキーは、「ユコス」が「シブネフチ」を吸収するかたちでの経営統合構想を諦めた。ホドルコフスキーは逮捕によって「ユコス」社長を辞任に追い込まれた。プーチン・ロシアでは“泥棒”が逮捕されることもあるようだ。 逮捕に動いたのは以前プーチンが長官を務めていたFSBだったので、ホドルコフスキーはプーチンの命令で逮捕されたのである。「国家に10億ドル以上の損害を与えた」として起訴されたが、ホドルコフスキーの資産は80億ドルと言われていたので、10億ドルどころじゃない規模の“泥棒”をしていたはずである。 話がズレてきたが、このまま続けてしまおう。 べレゾフスキー、グシンスキー、フリードマン、スモレンスキー、アブラモヴィッチ、チュバイス、そしてホドルコフスキーという「オリガルヒ」と呼ばれたロシアの富豪はみんなユダヤ人である。こいつらがみんなユダヤ人であるのは偶然だろうか。 ユコスの創業者のひとりであるネヴズリンはロシア・ユダヤ人会議の会長であり、ホドルコフスキーが逮捕されるとイスラエルに逃亡した。 ホドルコフスキーは逮捕される2年前、ロシア開放財団を設立し、理事にヘンリー・キッシンジャーとジェイコブ・ロスチャイルドを迎え入れていた。ジェイコブ・ロスチャイルドとは何者か。ロンドン・ロスチャイルド銀行の重役、ロスチャイルド投資信託(RIT)の会長、ナショナル・ギャラリーの会長、ロスチャイルド家が設立したイスラエルのヤド・ハナディヴ財団(イスラエルの国会と最高裁は実質的にこの財団の資金によって運営されてきた)の会長、ユダヤ人の政策シンクタンク「ユダヤ人政策研究所」の所長などなどの肩書きを持つ人物である。さらにホドルコフスキーはカーライル・グループの相談役も務めていた。ホドルコフスキー逮捕後にシャロンやソロスが動いた理由がここにある。 プーチンにとってロシアの天然資源を奪われるわけにはいかないのである。 「ユコス」と「シブネフチ」の事業合併が完了したと発表されたのが2003年10月3日である。あとは残った財務手続きなどを完了させれば正式にユコスシブネフチが誕生するのである。ここで同じ日にエクソン・モービルの会長レイモンドがロシアに入った。ホドルコフスキーがプーチン大統領を無視して進めてきたこと、それはエクソン・モービルが新会社ユコスシブネフチを40%買収するつもりでレイモンド会長がロシアへ飛んできたことだったのである。ホドルコフスキーの逮捕は10月25日である。プーチンの心境(怒り)が透けて見えるではないか。 石油掘削会社「ユガンスクネフチガス」という会社がある。設立はホドルコフスキーの意だが、登記上の本社がロシア国内にではなく米テキサス州に設立登記された企業で、名称はロシア語だが実態は米国系企業である。 「ユガンスクネフチガス」を含めてホドルコフスキーの動きをうまく説明している文章があるので、以下に抜粋転載して終わることにします。 石油メジャーの話がロシアに移ってしまったけど、無関係ではないので良しとします。 2005年2月28日 新興企業家として成功の道を歩み、僅かな期間で世界の資産家に名を連ねたユダヤ系ロシア人の一青年が、テキサス州に企業登記し設立した会社、即ち、ユガンスクネフチガス社が、何故にテキサス州に本社を構え、事業定款をユーラシア大陸の石油掘削事業に当てたかは、今更解説する迄もなかろう。 最も重要なる意味は、ロシア国家国民の共有資源でも在る「天然資源」の開発を、ユコス社と云う経営母体が担いながら、1ルーブルたりとも国家若しくは地方税収としてすら当該グループは納付しなかったばかりか、意図的に経理操作を為し、コストとして国外にそれを移動させ、新たなる外資の導入に名を変えて還流させ、ユーラシア大陸に眠る石油ガスエネルギー資源を一とする天然資源そのものと開発権を、第三国資本家の手に、名実ともに委ねようとしたそのからくりが発覚した事にはある。 賢明なるプーチン大統領が、戦略物資の要ともなる当該石油ガスエネルギー資源の第三国資本家への譲渡を無為無策の侭に見過ごしにする事はなく、ユガンスクネフチガス社の発行済み株式をシオニストユダヤ系大財閥資本家群に引渡す工作を図り、その後に為されるであろう増資を以って、その母体でもあるユコス社の呑み込み合併をも意図したホドルコフスキーの作為を、行政権を行使して未然に止めたプーチン政権の手腕は評価されこそすれど批判される事はないのである。基より、評価基準となるのは言う迄もなく、国家社会安全保障全体に照らしての基準としなければならないが、立法上に未整備問題が在ったとは言え、それは赦されるのである。 当該問題をもう少し噛み砕いて整理してみると次の様になる。 ユダヤ系ロシア人企業家ホドルコフスキーは、ロシア企業として設立した総合石油業「ユコス社」を、米国で設立したグループ企業「ユガンスクネフチガス社」を旧セブンシスターズ系列企業に売却する事で何れ逆併合を目論み、ユコスグループ全体を、旧セブンシスターズでもあるシオニストユダヤ系大財閥資本家群の傘下に収めるべく画策したと言う事であり、プーチン政権はそれを国家反逆罪として受け取り、脱税と云う容疑事実を突き付けてホドルコフスキーを収監、利権の移動を未然に阻止、競売に掛け、ガスプロム社がダミーとして俄かに設立したロシア国企業に、それを落札させたのである。 石油ガスエネルギー資源の利権剥奪に成功すれば、アルミ、パルプ、木材、希土類へと外資の魔の手が伸びるのは必然の流れ、機を逸する事なく、或いは秩序立った外資の導入へと、抑止の楔を打ったプーチン政権の荒業は、一見すれば資本主義経済ゲームのルールに抵触する場面なしとしないが、それは国家社会安全保障を期する上での不可欠な抑止力ともなれば、国際社会はプーチン政権を無定見に批判するのではなく、プーチン政権に拠るグローバルスタンダードに潜む無秩序の制覇をこそ褒めて然るべきなのである。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~ntabega/nta_essay0205.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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