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2006年07月15日
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テーマ:本日の1冊(3685)
重松清の家族小説短編集。とはいっても重松清は基本的に家族小説しか書かない。私は彼によって、いじめやリストラ、離婚や、「負け続けること」や、一般家庭におきるさまざまなことを学んだような気になっている。文庫が出たら無条件に買う作家のひとりである。今回の文庫、最後にドキリとする文章がある。やはりそうだよね、彼にも書けない家族小説というものはある。(一番後で述べます)
小さき者へ
冒頭の「海まで」
同じように頑固な老人を抱えているものにとって、ちょっと身につまされる短編。
夏休み。主人公は一人息子。いなかに帰る。父親も死に、一人で暮らしている母。母親はまるで子供に帰ったように、主人公の二人の息子(つまり母にとっては孫)のうち、次男をひいきにし、長男に「姑いびり」のように接する。むかしは優しい母だったのに、主人公が東京に行くのを一人親族からかばってくれたのに。周りの人が死んでいき、身体にガタが来ている。主人公は思いつき、四時間かけて10年ぶりに母親の実家に墓参りに行こうとする。しかし、母親は途中でへばってしまう。
主人公は慰める。「今度はもっと大きな車を借りるから、墓参りはまたにしよう。」
母は膝をさすりながら呟く。「クーラーの効いているところにおったなら、すく痛うなる。」「今度いうて、いつになるんなら。」母は泣き出す。「なあ、いつ連れてってくれるんな。いつ帰ってくれるんな」「痛い痛い痛い、ほんま痛い、痛い痛い痛い」張り詰めていたものが切れる。裸の感情と向き合う、つらさ。最後は少しだけ目頭が熱くなるエピソードがある。けれども解決は無い。

表題作の「小さき者へ」
登校拒否におちいり、家族に暴力を振るうようになった一人息子に対して、リストラ危機にいる父親が、夜遅く、渡すあてのない息子宛の手紙を書く。自分が14歳だったころを思い出しながら。
「親は、どんなときもベスト盤を子供のために、良かれと思って選んでしまうものなんだな。そして子供の本当に聴きたい曲に限ってベスト盤には入っていないんだな。」
終わり近くのその一言が、作者の意図を超えて、私の心に響く。

どの短編も涙ぐんだ。重松清の小説にはたいてい「弱くてぐずぐずしている男の子」「惨めな姿をさらす父親」「女の子はいつも強くてがんばっている」という構図がある。例えば反対に同じ世代の宮部みゆきは「少年もの」というパターンがある。少年が主人公になると、たいてい勇気があって賢い男の子が出てくる。男と女の「差」なのかもしれない。この文庫の一番最後に「作文家」という肩書きで、中学三年生(今現在はたぶん高1)の華恵さんが「解説」を書いている。読書感想文ではない。れっきとした解説である。彼女はそういう重松清の小説の構造を当然のことながら見破っている。そうして「重松さんに願うこと」を書く。
「女の子は最後に颯爽と歩いていく姿が多い。だからこそ、読んでいると元気が出るし、がんばるぞ、と思える。でも……もし、それが出来なかったら?トモのような女の子が中・高生になって、強がりもできなくなって、力尽きてがんばれなくなってしまったら?「小さき者へ」の主人公の息子ように、一歩も踏み出せなくなってしまったら?ぐしゃっと押しつぶされて、壊れて……出口が見えないような惨めな姿になった娘を、見てくれますか。それでも応援し続けますか。徹底的に壊れた女の子の姿を、いつか描いて欲しい。」
重松清なら必ず応援し続けるだろう。理想的な父親としてではなく、でもボロボロになりながらもそういう物語は書くことが出来るだろう。と私は思う。けれども重松清に「徹底的に壊れた女の子の姿」を書く勇気があるだろうか。と、ついつい彼の気持ちになってしまう。ホント、女の子というのは怖いことを言うものだ。





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最終更新日  2006年07月15日 09時01分10秒
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