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カテゴリ:07読書(ノンフィクション)
大きな本屋なら今も置いてあるかもしれない。岩波文庫が今年で創刊80年を迎えた。その記念の臨時増刊「図書」が無料でとっていってください、と置かれているはずだ。
各著名人232人が「私の三冊」を選んでいる。このアンケートは今回で三回目になるそうだ。前二回のアンケートで最も多くの支持を集めた書目は20年前が「銀の匙」。10年前が「「いき」の構造」だったそうだ。今回は18人の人が「きけわだつみのこえ」をあげている。(最終ページの署名索引で数えた。1ページに二人の人があげていたら数は違うかもしれない。)岩波文庫編集部は「「憲法改正」の動きが伝えられる今日の状況と無関係ではないと思われます」と書いている。 私が嬉しかったのは、次は8人で「吾輩は猫である」「忘れられた日本人」が同列二位、その次は7人で「種の起源」、その次は6人で「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「意識と本質」「銀の匙」と並んで「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)が入っていたことだ。 私も選ぶとしたら吉野さんのこの本と中江兆民「三酔人経綸問答」(5人が選んでいる)ドスエフスキー「罪と罰」(4人が選んでいる)だろうか。 「君たちはどう生きるか」については例えば池坊由紀(華道家)がこのようなコメント。 「多感な思春期にあって、私はどう生きていくのか真剣に考えるいくつものヒントを与えてくれました。価値観の多様化した現代だからこそ、改めて読み返したい一冊です。」財政学、環境経済学の宮本憲一さんは「戦争中の少年時代に、この本にどれほど感激しただろうか。戦後、吉野さんに私もこのような本を書いてみたいといったら、彼はあれは暗い時代のやむをえぬ産物です。それよりも専門の業績を書いてくださいといわれてしまった。」といいます。 この作品が発行された時、この前70周年を迎えた盧溝橋事件が勃発している。とてもそんな昔の本とは思えないほど平易な散文小説だ。中学生のコペルくんの経験とそれを見守るおじさんの目を通した「倫理の本」である。 ちなみにほかにもいろんな人が「私の三冊」を選んでいる。かの品川正治さんが選んでいるのは、中国大陸転戦中ずっと嚢中に入れて持ち歩いたという「山家集」(西行)、カントの「実践理性批判」、そしてバルザックの「谷間のゆり」にはこのように書いている。 「25年前、亡くなった前妻の聖路加病院の病床の傍らに椅子を寄せ、苦しみを隠し微笑さえ浮かべて目を瞑って聴いている顔をそっと盗み見しつつ、丁寧に朗読を続けた。この小説を読み終えたときが彼女がこの世を去る時だと互いに覚悟を定めて抑揚もつけずに低い声で読み続けた。残り少なくなったページをめくる私の手が震えていたことは忘れようもない。「谷間のゆり」は彼女の棺ととともにあの世に去った。」愛妻家だったようです。こんな夫婦は憧れですね。 小田実さんも自分の病を知る前だと思いますが、書いています。「一外交官の見た明治維新」(アーネスト・サトウ)「人権宣言集」とともにこの本が目に留まりました。「アリランの歌」(ニム・ウェールズ、キム・サン、松平いを子訳)「一民族の開放独立闘争という大きな歴史が一個人の人生という小さな歴史の中にこれほど生々しく出てくる例は少ないに違いない。しかもこの歴史は、大小ともに日本の植民地支配がかかわる歴史である。」俄然興味がわきました。 その後、「君たちは-」がどこにあるかわからなくなったので、新たに買い求め、同時に「アリランの歌」も買い求めました。この二つの本についての「読書感想文」は次回。 今日は参議院選挙投票日。これから投票に行きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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