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カテゴリ:洋画(07)
モーツァルトの「魔笛」のオープニングの曲に合わせ、俯瞰映像から個別の映像へ、やがて俯瞰映像へ移っていくオープニングが素晴らしい。太陽の光から春の野原、スミレに移り、その花を摘んだ男の手が塹壕に入る。時代と場所は第一次世界大戦のある戦場だと分かる。塹壕を走り回る兵士、塹壕の端で将軍が車から降り戦闘の合図をする。雲の合間から旧式の戦闘機が姿を現し、俯瞰映像に、そして戦場では一人一人の兵士の突撃場面へ。人が次々と倒れていく。
監督・脚本 : ケネス・ブラナー 音楽 : ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 出演 : ジョセフ・カイザー 、 エイミー・カーソン 、 ルネ・バーベ 、 リューボフ・ペドロヴァ 、 ベンジャミン・デイ・デイビス 二時間弱。オペラ「魔笛」をほぼ丸々聴くことになる。(すみません。音楽はからしき知らないので全て聞いたのかどうかは不明。)なによりもモーツァルトのこの曲が素晴らしい。なかなかこの曲の全体像を聴くことが無いので、「そうか、この有名な旋律はこのように繋がっているのか」と感心することしきり。 構成には感心するところと退屈なところがあった。うまいこと、戦争映画にこの「魔笛」を移し変えているところもあった。一方、じっくり歌を聴かせたいと言う意図なのか、背景もあまり変わらず、ひとりの歌をずーと画面に載せている場面もあった。歌自体が素晴らしいのかどうか、よく分からないのでそこは退屈。ミュージカル映画とは違う。オペラという曲重視の演劇に映画をくっつけたこの試み、とりあえずほとんど退屈はしなかったので成功しているのではないか。決定版というほどではないかもしれない。次回作に傑作が待っている、ということで楽しみは増えたかも。 映画は戦争と平和という問題を真ん中において、最後は平和をたたえる、という風に終わるのではある。うーむ、意図はよく分かるし、タミーノは「平和のためよりも愛のために僕は行く」と答える所なんかなかなか意味深ではあるのだが、最後の試練の洪水があまりにも局地的な試練であってイマイチだったりしてのめりこめない。モーツァルトに「戦争と平和」を託そうという試み自体が無理なのではないかと思う。モーツァルトはそんな男ではない。人間の「自由」を主題としたところで光り輝く人なのではないかと思う。それを証拠に魅力的だったパートは、夜の女王の場面だったり、パパゲーノとパパゲーナの小鳥のような求愛場面だったりする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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