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カテゴリ:労働
紹介したい本や、映画が山のようにあるのだけど、なかなか書く時間が確保できません。最近は労働問題で面白い本を幾つか読みました。すこしづつ紹介していきます。
「15歳のワークルール」旬報社 道幸哲也 社会に出る前にぜひ学んで欲しいことがある。憲法もそうだけど、労働基準法もぜひとも「リアルに」学んで欲しい。出来たら、この本を副読本に、学級でああでもない、こうでもない、と議論しながら社会に出て欲しい。 ‥‥‥というような本かな、と思って紐解くとびっくりした。私はむしろ、現代の社会人ほど読んでほしい。「解雇の四要件というのがあってね、アルバイトといえども簡単には首は切ることは出来ないんだよ」などと、したり顔で労基法なんて基本的なことは分っていると思っているような(私のような)大人でも、この具体的なリアルな設問の前に何度も間違った解答をしてしまった。あなたは同僚から、息子からこのような相談をされたら答えることができますか。幾つか、載せてみる。 一「アルバイトにも年休権があるのは判りました。でも、店長はあまりに仕事熱心なので、彼に対し年休が欲しいと言い出しにくくて困っています。仲間に相談しても、「おまえ変わっているな」と反応はイマイチです。」 二「東京からUターンして札幌の会社に就職しました。採用面接のときに、両親の面倒を見るためといったら、社長も大いに感激していました。でも、二年後に東京転勤が命じられ、困ってしまったのですが。」 三「先輩から新入社員は八時に来て仕事の準備をするようにいわれました。でも、始業時間が八時半なので、30分間の賃金は出ていません。この30分を遅刻したら処分されるのでしょうか。賃金も払わないで処分するのはおかしいと思います。」 一について 職場のワークルールを経営者が熟知してそれを労働者に徹底させる、と言う会社はほとんどありません。自分の権利は主張しなければ何も実現しません。(ここで面白いたとえ話を出していた。「今では信じられないことでしょうが、40年前は家にテレビが一台しかなかったので家族の間でよくチャンネル争いが発生しました。一時間ごとに自分の好きな番組を見る、と言ったルールを設定していました。」とか。ホントそうでした!!)だから対立することを恐れない。議論することを恐れてはいけない。同時にルール自体に対する知識も必要です。人間と言うのは、案外理性的な動物なので、この知識と言うのを馬鹿にしてはいけません。加えて、利害の同一性による連帯も必要です。職場の仲間と意思疎通が充分に為されていると、権利主張は容易になります。通常は同じような問題関心、不満を持っているからです。ここに労働組合の結成の契機があります。 ‥‥‥と言うように筆者は説く。この相談は深刻な労使対立がないので、権利主張の心構えをといているだけだけど、この三点は重要なことであり、ここまでたどり着けない労働者はあまりにも多い。 二について 配転命令は、使用者の業務命令の中心です。 ポイントは労働契約です。採用までにどのような契約をしたかが重要。労働協約や就業規則をちゃんとチェックし、契約書は保管しておく必要があります。採用面接のときのやり取りもその場でメモを取っていれば、裁判のときに有利です。労基法15条には、使用者は労働条件を明示する義務を課しています。 なお、協約にないことでも、イヤといわなければ、合意があったことになります。(「包括的合意」)なかなかイヤと言うのは難しいですけれど。 ‥‥‥と言うように筆者は説明する。ポイントは、面接時に社長がどれだけ感激した、と言うことではなく、労働協約や就業規則にどうかかれてあるか、です。「会社は業務上必要がある場合に配転を命ずることがある。従業員は正当な理由がない限り配転命令を拒否してはならない」とはっきり書いていると「正当な理由」に賭けて「いや」と言うしかないわけです。 三について 朝の体操、準備作業、後かたづけ、作業着の着用時間は労働時間にあるかどうかは、使用者の指揮命令系統のもとにあるかどうかによって決まります。設問のように命令がはっきりしている場合には、労働時間にあたります。30分ぶんの賃金請求権が発生しますが、8時に出勤しないと遅刻して扱われます。場合によれば、軽い処分がなされます。うまい話ばかりではありません。 黙示の命令があったときには、労働時間がどうか、なかなか難しいときがあります。例えば、ガードマンの仮眠時間が多く争われています。寝ていても仮眠場所が特定されていることや、事件などが起きたら即時に対応せざるを得ないことから、労働時間とされています。(大星ビル管理事件)タクシーの客待ち時間もそうです。コンビニや居酒屋での準備作業や後片付け、また出席が義務つけられているミーティングや研修も当然労働時間と言えます。 ‥‥‥と筆者は説明する。日本はサービス残業が異様に多い国である。同僚たちが、本音はどうかは知らないが、「僕は好きで残業しているんだ」といってサービス残業が蔓延して、なかなか早く帰りにくい雰囲気が漂っていて、上司がそれを「黙示」していたら、それは明確にサービス残業であり、厚生省もそれをなくすように指導はしている。でもこれもなかなか言い出せないですよね。 長くなったけど、まだ面白い事例がある。続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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