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カテゴリ:洋画(08)
「我々は働いた。しかし動物扱いだ。」
監督 : ケン・ローチ 出演 : キルストン・ウェアリング 、 ジュリエット・エリス 、 レズワフ・ジュリック 、 ジョー・シフリート 、 コリン・コーリン 製作年 : 2007年 製作国 : イギリス=イタリア=ドイツ=スペイン ユーロは成功した、と聞いている。イギリスは立ち直ったというイメージが伝わってきている。根拠はドルに対するユーロの価値、あるいはイギリスの失業率の低下。経済や国際情勢に強くない私などはそんな風にイギリスを見ている。自覚的な人は別として、そんな人は多いと思う。 <gooあらすじ> シングルマザーのアンジーの仕事は外国へ行き、労働者を集める事。ある日突然クビを告げられた彼女は、今までのノウハウと経験を生かして、自分で職業紹介所を立ち上げる。親友のローズを共同経営に、二人は移民労働者たちを集めて仕事の斡旋を始めた。アンジーの努力もあり、仕事は増えていくが、やがてトラブルが出始める。会社の賃金未払いのため、移民たちにお金を払えなくなった事から、彼女は道を踏み外していく…。 ケン・ローチが実に久し振りに歴史モノや恋愛モノから離れて現代イギリスに立ち向かうと、私の皮相的な見方とはまったく違う世界が見えてくる。ユーロは成功した。それは東欧の低賃金労働者が西欧に流れるのを意味する。イギリスは立ち直った。けれども勝ち組負け組みの論理がまかり通る社会になったに過ぎない。 アンジーはセクハラ上司の思惑一つで簡単に首を切られる。彼女は負け犬になりたくない。自ら職業斡旋所を立ち上げ、成功のために、捕まらない程度の違法に手を染めていく。賃金未払いのトラブルのとき、彼女は移民たちに「この不渡り手形を見て、私も損をしたのよ。賃金は払えない。」と言う。けれども彼女たちには別のビジネスで儲けた数万ポンドがあった。親友のローズはこれで払えばよかったのに、と言う。アンジーは吐き捨てる。 「払ってやれば。あなたのお金で。私は気にしない。自由な世界よ。」 やがてローズは一線を越えた親友に詰め寄る。 「何をしても自由なの?」 「‥‥‥たぶん違うわ」 けれどもアンジーは「お金のために」さらに違法な世界に入っていく。 昨日の処凛さんも言っていた。「新自由主義はイタリアでもドイツでも、韓国でも同じことが起きている。海外との連帯を大切にしたい。」もちろん日本でも同じことが起きている。ここに描かれているように、日本でも日雇派遣はまかり通っている。この世界では、ピンハネは上限がない。外国人労働者は研修と言う名目で、1時間300円と言う信じられない安さで働かされている。映画で、ポーランドの若者が「ボクは人間だ。召使じゃない」と言って故郷に帰る。冷徹な現実をケン・ローチは我々に見せながら、それでも「人間」を描いて映画は終わる。 ユーロの四カ国がこの映画を製作した。そこに私は希望を感じる。 万国のプロレタリアートよ、団結せよ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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