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カテゴリ:洋画(09~)
シネマクレールにて鑑賞。
監督・脚本 : ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 出演 : アルタ・ドブロシ 、 ジェレミー・レニエ 、 ファブリツィオ・ロンジョーネ 、 アルバン・ウカイ 、 オリヴィエ・グルメ 少し粗筋 アルバニアからベルギーへやって来たロルナは、この地で国籍を得て暮らしていくため、ブローカーのファビオの手引きで、ベルギー人青年クローディと偽装結婚し、共に暮らしている。クローディは麻薬に溺れる生活から抜け出そうと、ロルナに希望の光を見出していた。だが、ロルナを使って国籍売買しようとしているファビオには、ロルナが国籍を取得したら彼女を未亡人にしてしまう計画があった…。 営業力強化研修なるものを受けたときに、人は良いとか悪いとかではなくて、四つのタイプがあることを学んだ。人はセールスを受けたときにどのように反応するのか。正確ではないかもしれないが、こうである。ひとつは、協調型。非常にフレンドリーに接してくれる。けれども買うというところまではいかない。ひとつは、攻撃型。批判もするし、さっさと拒否をしてすぐに結論を出す。ひとつは、優柔不断型。もうちょっとで買いそうだと思ってずっと話をして時間を無駄にしてしまう。そして、ひとつは、むっつりスケベ(名前を忘れた)型。表情をまったく変えない。興味を持っていないのか、失敗だな、と思っていると「じゃあ買います」と言うタイプ。 ロルナはむっつりスケベ型である。表情を表に出さない。一見すると、彼女は彼を嫌っているようにしか思えない。しかし、冒頭から私はふとびっくりする。偽装結婚の二人だから、部屋が別々なのは当たり前だ。しかし彼女は着替えると、下着のまま彼の前を通るのである。彼女は彼のことを芯から嫌ってはいないのである。ヤク中で生活力のない彼のことをどうやらいやいやながらも更正させようといろいろと試した節がある。彼はそんな彼女を信頼している。彼女はいやいやながらも彼のために食べ物も買ってくれば、薬も真夜中の薬屋を起こして買ってやったりする。彼女にも恋人はいる。アルバニアから一緒に流れてきた恋人とこのベルギーでお店を出すのが夢なのだ。こんな男のことをかまっていられない、そう思っていたのだろう。けれども、無表情の奥でしだいと「情」あるいは「恋」が育っているのを彼女はうすうす気がついていたはずだ。 あともう一歩で彼を救うことができる。それを確信したときに、彼女は恋を自覚する。むっつりスケベが行動を起こすときは大胆である。 予告を見る限りは、彼女が彼を救うために奇跡を起こすのだと思っていた。 だから後半の展開は、びっくりである。 「奇跡」とは何なのか。 重ねて言うが、むっつりスケベは動くときには大胆である。いうまでも無いが、「むっつりスケベ」は人間の型の仮の呼称であって彼女がスケベであるということではない。営業はその彼女のわずかな反応を見逃してはいけない。でもほとんどの男はその変化には気がつかない。部屋を出るときに彼女のまっすぐな瞳が少し潤んでいることに気がつかない。 東欧の出稼ぎ、偽装結婚をしてまでベルギー籍を取ろうとする若者。アルバニアの彼が金を手っ取り早く稼ぐために原子力発電所のバイトに出るような、ヨーロッパを覆う現実を背景に、決して甘口ではなく、ダルディンヌ兄弟らしくリアルに、この恋の行方を追う。決してハッピイエンドではない。けれどもはじめて使ったという音楽効果は抜群であり、静かな彼女の「決意」を知るのである。「かれら」のしあわせを私たちはベートーヴェンピアノソナタ「アリエッタ」と共に祈るのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月16日 23時42分13秒
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