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カテゴリ:邦画(09~)
君の見た世界は悲しいだけのものだった?君の目に世界は少しは美しかっただろうか?
監督・プロデューサー・脚本・編集 : 是枝裕和 原作 : 業田良家 出演 : ぺ・ドゥナ 、 ARATA 、 板尾創路 、 オダギリジョー 、 高橋昌也 世の人達に「私は空気人形なの」と告白すると、「実は僕も空っぽなんだ」と返す人間のなんて多いことか。 「こころをもってしまったのでうそをつきました」片言の言葉で話し、さまざまの表情をみせる空気人形。世界を初めて見て、すなおに愛する空気人形。この人しかありえない、という絶妙の配役である。今年の主演女優賞は、初の外国人女優で決まりか。 空気人形を毎日丁寧に着せ替え相手にする男は「なぜ私だったの」と聞く空気人形に「めんどくさかったんだ」という。空気人形は心を持っているので、それは最高の侮辱の言葉である。男は言い訳をする。 「いや、君じゃないんだ。人が、だよ」もう遅い。 言葉に出さないけれども、みんな鬱屈がたまっている。溜まれば貯まるほど、こころが空虚になる。 私には空気を抜いて空気を繰り返し入れる、青年の気持ちは分からない。けれども、それは人「形」を傷つける行為のような気がする。いや明確にそうだろう。空気人形だから許されるというのか。彼女が青年を好きだから許されるというのだろうか。 空気人形はやすやすと許す。愛は惜しみなく与える。そして惜しみなく奪う。青年はみごとに罰を受ける。 冒頭の空気人形作者の質問に、空気人形はうなずく。そして、 「うんでくれて、ありがとう」というのだ。 なんという肯定の言葉。 太宰治も真っ青である。 ああ、わたしはこの映像のたくさんのものを見落としていたのかもしれない。 下町のトタン屋根の家から見える世界は美しくはなかったか。 海辺で拾った空き瓶はキレイではなかったか。 彼女から見える世界をまたもう一度きちんと見てみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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