新参教師徳間文庫 熊谷達也
熊谷達也の文庫新作である。彼にしては、軽い読み物になっていて、一気に読ませていただいた。
熊谷達也といえば、なんといっても
「邂逅の森」がすごかった。今回、彼得意の動物は一切出てこないし、時代物でもない。ほんらいシリアスなものを書いてきた作家がギャグものを書くと案外面白いことがある。なぜならば、作家はエンターテイメントの基本をすでに抑えているからであろう。
この作品は、最近はやりだした民間企業から教師を迎えるという枠を利用した一介の中年男性の目から見た「公務員としての教師の世界」である。新任教師からみた教師の世界はよく小説にもなっているが、出世競争や企業世界の酸いも甘いも経験したサラリーマンから見た教師の世界というのは、新鮮である。たまこの主人公安藤亮太、ぜんぜん純情でも善良でもないというところがいい。出世にも欲があり、自己保身には熱心で、胸が大きい女性には鼻を伸ばす、仕事をしない教師は「税金泥棒」と罵倒する。
そんな男から見ると、車のタイヤを破られても警察には連絡しない、タイムカードはあってなきが如し、部活で放課後、休日はみごとに潰れ、修学旅行では二日丸丸徹夜をする、昼休憩は給食があるからぜんぜん休まらない、偏差値で進路指導をするのがいちばん合理的なのに、一切そんな数字は使えない、とうとう彼から見れば不満だらけである。そんな彼に正体不明の怪文書がやってくる。誰かが彼の出世を陥れようとしている。という学園ものかと思いきや、なんとミステリものになっていて、最後まで飽きさせない。
現役教師が読むと、共感したり、反発したり、いろいろと面白いのではないかと思う。