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自分で紹介していてなんなのだけど、映画「おとうと」に出てくる民間ホスピス「みどりのいえ」のモデルになった「きぼうのいえ」のHPを見ていると、時の経つのを忘れてしまった。
スタッフのブログでは今自称「新人」のスタッフSさんが毎日入居者の最期の様子を書きつづっているのだけど、一つ一つがとても深い。 たとえば、今日の「ここではないどこかへ」では「いつもどこかへ行かねばならないと思ってるMMさん、そして禅問答のようなことをポロリと言うMMさん。」のことが綴られています。 「氷は溶けるとどこに行くの?」という素朴な問いは、MMさんが言うと可笑しくもあり、意味深長な気がしないではありません。 他の日には、「善いものと悪いものを計るハカリがある、それを探すんだ」って言いました。 「おとうと」には、ホームレスの終末ケアがテーマに入っている以上、昨今の貧困問題に対する監督の目線も見え隠れはします。けれども、それ以上に見えてくるのは、「生と死」であり、やっぱり「幸せとは何か」という沈思せざる得ないことなのです。スタッフSさんの以下のようなつぶやきに、私はやはり沈思してしまうのです。 S.ベケットに『ゴドーを待ちながら』という有名な戯曲があります。ストーリーはありません。2人の登場人物が、ただひたすら誰だかわからないゴドーという人物を待ち続け、ゴドーは最後までやって来ないのです。そして2人は「行こうか」「行こう」と言いあいますが、しかし一歩も動かず、そのまま幕が降ります。 私はきぼうのいえで働くようになってから、この戯曲の意味がよく飲み込めるようになった気がします。大いなる瞬間がくるその日まで、わたしたちは一歩も動くことができません。そして、やはり2人の登場人物のように最後まで、一見すると無駄にさえみえるやりとりをやめないのです。 学生時代、待ち続けるだけの状況は悲劇と思いました。 今は、もしかするとその時間こそ愛しいものかも知れないと感じています。 このきぼうのいえがどのように立ち上がって、どのように運営されているのか、幸いにも、多くのすぐれた雑誌や新聞のルポがあり、このHPでは「資料室」でそれをそのまま見ることができます。いくつかを読めば、それはやはり「しあわせとはなんなのだろう」と沈思せざるを得ないのです。 施設長山本雅基さんのインタビュー(PDF)隣人の中にいるもう一人の自分と出会う -入居者の方たちと向き合うのも 結構大変ですね。 大変ですよ。ここのおじさんたちは元気ですから、言いたいことを言う。若い女性ボランティアが 「横に座れ」と言われて「セクハラだ」と泣きついてきたこともあったし、「女のほうがやさしくていいな」と言われたシスターが「私だって女なんですけどねえ」って。 ともかく人を怒らせることに関しては天才的なおじさんたちですから、あらゆる人の気持ちを逆撫でする。初めはぼくもいちいち反応していたから、パニック障害を起こしてしまいました。 -そんなおじさんたちとも理解し 合うことはできたのですか? これだから社会に受け容れられない、自業自得だ、と言ってしまうことは簡単です。でも生活歴をたどってみると、そこには人を恨んだり、疑い深くなったりしても仕方がないと思うような人生がありました。 山谷にいる高齢のおじさんたちの多くは、中学卒業後に東京に来て、労働者としてこつこつと働いてきた人たちです。仕事がないという人に聞いてみると、新聞社で活字拾いをやっていたという。活字を間違いなく拾えれば昔はどこに行っても困ることはなかったけれど、今は何の役にも立ちません。日本の経済成長の土台を支えてきた人たちが、景気の波や機械化に翻弄され、ある時点から用なしになって放り出されてしまった。山谷のおじさんたちは、本人の努力如何にかかわらず落ちこぼれるしかなかったのです。愛情を受けた経験が少なければ、愛情の受け方も、愛情がほしいというサインの出し方もわかりません。相手から感謝されることをとおして自分のアイデンティティーを見つけようとするのではなく、自分は相手を潰すことができるくらい影響力をもっているという破壊的な方向性において、自分の存在を見いだそうとするのです。, やられるほうはかなわないですよね。でもそれをその人の責任と言えない現実があって、人とのかかわり方を学べなかったこと自体がこの人の人生の悲しみだったのではないかと気づいたとき、腹立たしい気持ちはなくなりました。 ……と言葉で言うのは簡単ではある。しかし、その中で仕事をしていくことの苦労は幾ばかりか。 あるいは、山本さんの伴侶で看護主任の山本美恵さんのインタビュー(PDF)過酷な人生を歩んできた人たちに休憩の場を [社会時評]カテゴリの最新記事
トラックバック、ありがとうございました。
読んで頂けるだけで十分ありがたいのですが、そのうえ引用までして頂いて…、感謝しています。 「新人」は新人なんですよ、そろそろ「慣れてきた?」とは言われなくなりましたが。 とりあえずご挨拶のみで失礼します。(2010年02月21日 06時47分24秒)
スタッフSさん
毎日、おしごとご苦労様です。 ホント奇跡のようにこのような施設が民間で運営されているのを、びっくりしています。末期ガンの父の看護をしてみて、寄り添うことの難しさと大切さを実感していますので、新人とは思えない配慮の仕方に感心しましたし、ホント読みふけってしまいました。 また、ひとつひとつのエピソードが、映画のように、節度を持って編集されていて、その文章力に感心しています。 Sさんのブログ担当は一段落のようですが、これからも楽しみに読ませていただきます。お疲れ様でした。また書いてくださいね。 たぶんもっと読者はいて、もっとブログの記事になっていると思うのですが、みんなTBしないのですね。ちょっと意外でした。(2010年02月21日 22時41分52秒) │<< 前へ │次へ >> │一覧 │コメントを書く │ 一番上に戻る │ |