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カテゴリ:洋画(09~)
原題ウォナンソリ
韓国の片田舎、老い耄れの牛と一緒に暮らす老い耄れの夫婦の一年と少しを追うドキュメンタリー。 監督・脚本・編集 : イ・チュンニョル 出演 : チェ・ウォンギュン 、 イ・サムスン 対象が動きの無いものであるためか、カット割が非常に凝っている。それだけではなく、時々動きのある「絵」も交互に使い、飽きが来ないように工夫している。また、効果音楽もよく使われていて、最近流行の音楽なしのドキュメンタリーではない。しかし、ナレーションは一切無い。その代わり、饒舌の妻の喋りがうまいこと状況説明になっており、全編にずっと聞こえてくる「牛の鈴音」が通低音として終わった後も耳に残る。 印象としては、若者の野心に富んだ技術力の高いドキュメント映画である。監督のプロフィールはまだ見ていないが、韓国では映画大学が盛んなのであるが、それのドキュメント部門のひとつの頂点だと思う。 テーマは余りにも明確であり、他の紹介記事が詳しく書いているだろうから私はほとんど述べない。言いたいことをきちんと主張しいてるという点でも教科書的なドキュメンタリーではある。すなわち、牛との係わり合いを通じて愚直なまでの韓国のアボジの仕事人生と近代化の中で残してきた生活と自然を見せようというものであろう。 韓国の人口の五分の一がソウル市に集中していて、およそ半分が首都圏在住という小国韓国の過疎化問題は、韓国の人達にとって無視できない問題なのだろう。妻が言う。「子供たちの世話にはなりたくない。迷惑を掛けて、しかも気詰まりだ」常に偏頭痛に悩まされていつ倒れるか分からないような夫が言う。「死ぬまでは働きたい」。 牧畜民族である韓国国民とわれわれとは、牛に対する思いは相当違うだろう。それはあのような地方都市にまだ民間の牛市場が堂々と営業できていることからも伺える。 山田洋次「息子」と重なり合うテーマであり、あの映画と違うのは、はるかにこちらの父親のほうが貧しいということだろう。しかしこちらのほうにはまだ妻がいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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