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再出発日記

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2010年08月09日
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156大阪空襲戦没者名簿.jpg
これは大阪城にある平和博物館ピースおおさかに展示している「大阪空襲死没者名簿」の一ページである。大津屋いち福やいち菊やかつ奴の名前は置屋に居た遊女の名前だったかもしれない。その上に居る三歳と七歳の姉妹はおじいちゃんと一緒に逃げ遅れたのだろうか。

大阪空襲は1944暮れから1945年8月14日まで合計50数回に及んだ。死者は12620人、行方不明者2173人。被災家屋は344240戸、被災者は1223533人。(1945大阪府警「大阪府空襲被害状況」)大阪だけではない、原爆を含めて米軍が行ったのは軍事施設だけではない民家も工場も区別しない無差別爆撃でした。

いまなお、アメリカ国民(の多く)は原爆を含めて、「戦争終結を早め、結果的には(百万人とも言われる)多数の人々の命を救った」と思い、「正しいことをした」と信念を曲げていない。これは日常的に戦争を行っている国民として当然身につけておかなければならない常識だからである。

百万人という数字は実は1万6千人が無意識的に膨らんだ数字だといわれています。しかし、数の多少はあれ、「多数の命のために少数の命を犠牲にすることは正しい」という常識がアメリカの国民たちには「現実のいまここにある問題」として試され、多くの国民はそう思っています。

ただ、問題は果たして数字なのだろうか。

この「常識」は果たして正しいのか、アメリカ国民はやはりその問題について真剣に考えていると私は思います。

そのひとつの試みがこの本なのだろう。

「これから「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学」マイケル・サンデル 早川書房

NHK「ハーバード白熱教室」で有名なマイケル教授による人気講義「Justice」を基にした哲学書である。具体的な問いかけ、机上の空論では決して無い、けれども独りよがりではない、アリストテレス、ロック、カント、ミル、ベンサム、ロールズ、ノージックらの哲学書をも縦横に語りながら現代の重要な「問い」に対して説こうとする姿勢に共感する。

ただし、この本ざっと読み渡してみて、一番最初に出した一番難しい問いに最後まで答えを出さなかった。ずるい、と思う。「多数の命のために少数の命を犠牲にすることは正しいのか」という問いである。その答を出す為に、自由、市場、愛国心、等々を検討してきたのだろうに。

ただ、マイケル教授がこの本で間接的に答えを出していたとしても、それが本当の答えではないと私は思う。それはアメリカ知識人としての答である。日本人の私の答はまた違う。

皆さんはどう答えますか。それは具体的にはこのような問いである。

アフガニスタンのヤギ飼い
2005年6月アフガニスタン。マーカス・ラトレル二等兵曹は、米海軍特殊部隊のほかのメンバー3人と共に、パキスタン国境の近くから秘密の偵察に出発した。任務はオサマ・ビン・ラビィンと親交の深いあるタリバン指導者の捜索だった。情報に因れば、目標とする人物は140ないし150人の重装備した兵士を率いており、近寄ることの困難な山岳地帯の村にいるということだった。
 特殊部隊が村を見下ろす山の尾根に陣取ってまもなく、100頭ほどのヤギを連れた2人のアフガニスタン農夫と14歳くらいの少年に出くわした。武器は持っていないようだった。米兵は彼らを捕らえ、どうするか話し合った。ヤギ飼いたちは非武装の民間人らしい。しかし、もし解放すれば米兵の存在をタリバンに知らせてしまうリスクがあった。兵士たちはロープを持っていなかった。そのために彼らを縛り上げ新たな隠れ家を見つけるまで時間を稼ぐことはできなかった。選択肢は男たちを殺すか解放するかどちらかにしかなかった。
 ラトレルは解放することに一票を投じた。そのことをずっと悔やむことになる。解放して一時間半くらいしたあと、四人の兵士たちは、AK48自動小銃や携帯ロケット弾で武装した80人から100人のタリバン兵に包囲されていることに気がつく。激しい銃撃戦で三名の戦友は全員戦死した。救出のヘリコプターも撃墜され、16人が命を落とした。ラトレルは重症をおったが、かろうじて生き延びた。山腹を転がり落ちると、12キロを這ってあるパシュトゥーン族の村にたどり着いた。村人たちは救助が来るまでラトラルをタリバンから守ってくれた。
 当時を振り返ってラトラルはヤギ飼いたちを殺さないとした自分の投票を責めた。

この問い対する答を著者は用意しなかった。ただし、プラトンの例(洞窟の囚人は本質を理解できない)を引いてこのように述べている。それに私は同意する。

「われわれは内省だけによって正義の意味や最善の生き方を発見することはできない。」つまり、「議論」によってのみ、最善の行き方に到達できる、といっているのだ。それは「アメリカ」という地域での「アフガン戦争を戦っている」現代での生き方という答えに到達できると言っているに違いない。「日本」という地域での「どことも戦争をしないと誓っている」現代での生き方は、また違った答えになるだろうとは思う。

ただし、この「日本」をアメリカの軍事力を必要としているかしていないか、どう規定するかで答えはまた大きく違ってくるだろう。

私は、未だ遭ったことも無いいち福やかつ奴のことを思いながら答えていきたいと思う。





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最終更新日  2010年08月09日 23時49分17秒
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