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カテゴリ:洋画(11~)
正直言ってがっかりの内容だった。せっかく100年に一度の金融危機という舞台を得たゲッコーがそれを十二分に生かして大博打を打つという話かと思いきや、あるいは、もしかしたら正面からウォール・ストリート批判をする話かと思いきや、ゲッコーさんて何たるせこい真似をするのか。まあ、これが彼の本質だからそれはいいが、べつに映画にするような話でもない。
監督 オリヴァー・ストーン 出演 マイケル・ダグラス (Gordon Gekko) シャイア・ラブーフ (Jake Moore) ジョシュ・ブローリン (Bretton James) キャリー・マリガン (Winnie Gekko) イーライ・ウォラック (Jules Steinhardt (注意。以下、ネタバレになっています。お気をつけください) 彼の本質を最も映すべき鏡となるのは、今回はウィニーとジェイコブの若いカップルである。ジェイコブは狂言回しだから、本当はゲッコーの娘、ウィニーであるべきだ。けれども、私には彼女がまったく理解できなかった。これは致命的だった。 幾つもある。ゲッコーも言っていたし、彼女本人も言っていたが、本来一番憎んでいる金融屋であるジェイコブを何故彼女は好きになったのか、そのあたりがまったく描かれていなかった。ここから既にわけの分からん女になっている。確かにスイスの隠し金をゲッコーに騙し取られたのはジェイコブのミスであろう。けれども、彼女もウェブ宣伝でころりと「その気」になったのである。あの豹変の仕方も私には理解できなかったが、それによってジェイコブを振ろうとした彼女のあり方は理解できないし、こんな女嫌いだ。十二分にアレは彼女にも責任があった。そして極めつけは、ゲッコーを許したことである。一億ドルを11億に増やした後で、一億をちょっと動かしたぐらいで簡単に許しやがって。このいかにも自分は金には興味がない振りをしながら、一番金の動きに敏感な女がウィニーじゃないか(ちょっと言い過ぎの面はあるのは承知)。これは、キャリー・マリガンの演技次第で印象をかなり変えることができたはずのところであり、今回の彼女にはがっかりした。 今回のキャリー・ミリガンはこの映画を台無しにしている。いや、その最終責任はオリバー・ストーンにある。オリバー・ストーンはいつもいつも、最終的にアメリカを「許す」のである。社会派の振りをしながら、彼ほど社会派映画を裏切っている監督はいない。そういう意味ではストーンらしいゆるゆるの映画だった。がっかりすることなどなかったのだ。「プラトーン」のときにすっかり騙されたものだから、その第一印象がついつい着いて回るのである。 部分的には資本主義の本質を衝いているところもあるのである。これは脚本家の力量だろう。 ジェイコブは金融業界の黒幕ブレトンに聞く。 「貴方は生涯いくら稼ぐつもりです?」 「MORE(果てしなく)」 ブレトンの部屋に飾られている息子をも喰らい尽くすゴヤの描いた鬼、決して満腹にならない餓鬼、これこそが資本主義の本質である。 あるいは、ゲッコーはこのように予言する。 「次のバブルが弾けるときが終わりだよ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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