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カテゴリ:読書(09~ノンフィクション)
「日本人と弥生人」松下孝幸 祥伝社
この前の旅で土井が浜ミュージアムで様々な啓示を受けたため、もっと知りたいと関連本を買ったわけです。 松下孝幸さんは館長です。専門は考古学ではなくて、形質人類学者である。ずっと考古学の本ばかり読んできた身にとって人類学が考古学の隣にいることを失念していました。本人は自らのことを「骨屋」と呼んでいる。もちろん誇りを持っていっている。「骨は美しい」のだそうだ。骨屋からみると、日本人や人類のいろんな面が見えてくる。 ちょっと前までは顔の長い日本人は稀だった。だから、そのいい例として藤田まことさんのことをあげている。彼のデビュー時、「てなもんや三度笠」の売りは藤田まことの「顔の長さ」だった。しかし、晩年彼の顔の長さが話題になることはなかった。彼が変わったのではない。「はぐれ刑事純情派」に共演する真野あずさも充分馬面ではあるが、そういう顔は約15年間で普通になった。 人骨で男女の性差を見極めるのは何処か。もちろん骨盤があれば一発だ。しかし、それ以外では頭蓋だという。眉毛の辺り、男性はこの部分が隆起していることが多い。またおでこが男性は鼻の付け根のところから後ろに向かって折れている。女性の場合は前頭部が膨らんでいる。これは子供も同じで、要するに女性は大人になっても頭の形が変わらないのだそうだ。また、全般的に女性の骨は角が取れて丸く、女性は骨になっても優しいのだそうだ。 年齢は意外にも頭蓋の縫合の部分である。一般に頭は15種23個の骨からできている。縫合は年齢と共に癒合していって閉鎖してしまう。その閉鎖の度合いにおいて、壮年、熟年、老年という感じに分類するのだそうだ。 身長はどうするのか。全部の骨が残っていなくても、大腿骨から身長を測る「計算式」があるのである。 死因の判定はどうか。残念ながらすべての死因はわからない。外傷や病気の痕跡、例えば脊椎カリエス、骨膜炎、梅毒、ハンセン病などである。将来はわからないといっている。 私が一番聞きたかった部分では、DNA鑑定で親族関係がわかるのかどうか、ということであるが、この本の出版時94年ではそれは「将来の課題」ということになっていた。 その他興味深いところでは、奈良・平安時代、人骨どころか墓地さえ見つかっていない。もしかしたら、奈良・平安時代は一般人は墓を作らなかったのではないか、ということだ。野垂れ死にみたいに「ほって置く」というのは考えにくいが「ほかに説明の仕様がない」のだそうだ。 朝鮮半島だけでない、大陸から船で人が渡ってきたのは充分にありうると著者は言う。「実際には本の数日、長くても一週間ぐらい辛抱すればあっさりと日本についてしまっている」だからベトナムからの難民ピープルは水分補給としてスイカを積んでいたそうである。今回、北朝鮮からの脱北者は簡易エンジンがあったにせよ、5日で日本近海に着いた。風を読む知恵と度胸さえあれば、大掛かりな船がなくても大陸にはいけたし、来れた。そのことはやはり重要だろう。ただし、中国人の骨と縄文人の骨の相関関係は「ない」のだそうだ。著者も頭を抱えている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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