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「楊令伝6」北方謙三 集英社文庫 呉用が楊令を見つめてくる。 「行こうか、梁山泊へ」 「ほう、本気になったか」 「いままでも、本気だった。本気であるがゆえに、勝つ道筋が見えなければ、立つこともできなかった」 「そんな道筋はどこにもない。俺たちにもないが、童貫にもない」 「確かに、そうだ。私は、確かに、いや楊令殿自身に、手を握って引き摺り込まれたかったのかもしれない」 「いくらでも引き摺り込んでやる。反吐が出るほどにな。俺が足りないと思っていたものが、これで揃った。あと足りないのは、兵力ぐらいなものだ。それはおまえの頭でなんとかして貰うしかない」 「わかった」 この巻は大きい戦の続いたシリーズの「転」巻のようものだ。今まで揃った漢たちの小さなエピソードを繋げている。 一番大きいのは、聞煥章の人生に決着がついたことである。思えば、優秀な男だった。優秀なだけの男だった。頭だけよくて志がない男が国政に係わるとろくなことがない、ということの象徴のような男だった。「水滸伝」で消えるべきだと私は思っていた(あれだけ多くの漢がなくなったのだから、敵役の重要人物も死んで欲しかったという意味である)。生き残るにはそれなりの意味はやはりあった。彼が企てた燕州の「夢」は、その後いろいろとバリエーションを持ちながら活きていくのだろう。ただ、そういう男の運命の決着の付け方としては、これは私は一番相応しかったと思う。扈三娘にとっては、可哀想だったが。彼女には悲劇ばかりが襲い掛かる。美人薄命ならぬ、美人薄運か。せめて、長生きしてもらいたいものだ。 候真の昇格(?)も非常に興味深い。 童貫の王進の里訪問も大きなトピックだった。おかしいなあ、と思っていたが、青蓮寺も禁軍もちゃんとここのことは把握していたのだ。それでもここを急襲するようなことは何故かなかったのだという。少し青蓮寺を好きになった。 意外にも吉田戦車の解説は今まででピカイチのものだった。楊令のことをよく理解している。 日本には珍しい「革命小説」いよいよ快調である。 │<< 前日へ │翌日へ >> │一覧 │ 一番上に戻る │ |