
たまたま今日の朝日新聞を読むと、池澤夏樹が先日交通事故で亡くなったテオ・アンゲロプロスを追悼していた。池澤夏樹は12本の映画の字幕(それはほとんど全てということだ)を担当している。私も大ショックだったが、彼の喪失感の比ではない。珍しくテオ・アンゲロプロスについて何も語っていない文章だった。
私とアンゲロプロスとの出会いは「ユリシーズの瞳」だった。上映中の八割は寝ていた。最悪と言って良い。
その後、幾作品かを経て、
「エレニの旅」に出会う。
二回観た。映画的体験はめったに起きることでは無い。池澤夏樹が「旅芸人の記録」を観た時の体験を
「自分はたぶんこれを一割も理解していないけれど、何かとんでもなく大きくて奥の深い映画だ、ということは分かった」と書いている。私もまさにそう感じた
。「難解といえばまさに難解だが、拒絶されたのではなく強い力で引き込まれた。出来れば全部が分かるまで何度でも観たいと思った」と書いている。まさに私もそう感じた。
後、一日かけて
「旅芸人の記録」(五時間以上の作品)を観る機会をもらった。寝ることなんて出来なかった。ただ、二割理解出来たかどうか。
いかん、こんなことを書いたらテオ・アンゲロプロスについて何も語っていないのと一緒だ。私は池澤夏樹とは違い、語るべき語彙を持たないのである。仕方ない。映画館で観て欲しい。それだけしか言えない。
「エレニの旅」から始まる三部作は永久に完結しない。亡くなった時、そのことを一番悲しんだ。今日の池澤夏樹の文で未公開の「第三の翼(仮題)」があることを知った。クランクインして一ヶ月で監督を失った「もう一つの海(仮題)」もあったことを知った。出来ることなら、未完のままでいいから、なんとか観たいと思う。