999185 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

サイド自由欄

カレンダー

コメント新着

バックナンバー

2024.04
2024.03
2024.02
2024.01
2023.12
2009.05.05
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
クック 「どうしたものかね……」
メラルー 「何してんスかクックさん」
クック 「あぁ猫か。実は、沼地に植林作業に出たときに、こんなのを拾ったんだ」
メラルー 「こりゃ人間じゃねぇっスか」
クック 「あのままにしておいたら、コンガさんたちに食べられてしまうと思ってな」
メラルー 「それで持ってきちゃったんスか。何か文字が書いてあるっス」
クック 「読めるかい?」
メラルー 「捨て子みたいっスねぇ。森の神様に捧げるって書いてあるっス」

クック 「そうなのか……ヤマツカミ様はもっと奥に行かないとおられないのだが……」
メラルー 「最近は日照り続きで、人間達も苦労してるみたいっスよ」
クック 「しかし、それで子供を森に捨てるとは……」
メラルー 「ていのいい口減らしっスよ」
クック 「残酷なものだなぁ。子供に罪はないだろうに」
メラルー 「でもダンナ、どうせ大きくなればハンターになって襲い掛かってきやすぜ」
クック 「ふぅむ……」

メラルー 「今のうちにスパッと殺っておくのが、森のためにもなりやす」
クック 「(寝ている……)」
女児 「すぅー……すぅー……」
メラルー 「一ヶ月前も、ハンターにガルルガのアンちゃんが重症を負わされてるっス。迷うことはないっスよ」
クック 「しかし……」
メラルー 「ダンナが手を出しづらいってんなら、あっしがちょっくら、リオさんの巣に置いてきやしょうか?」
クック 「いや、この子は私が一時預かろう」
メラルー 「何ですってぃ?」

クック 「まだ子供だ。人間の里に置いてきてもいいが、また今度別の所に捨てられたりしたら大変だ」
メラルー 「ダンナ、将来後悔するかもしれませんぜ? 人間どもは凶暴でっせ」
クック 「私も何度かハンター達に狙われたことがある。確かにそうだが、だからと言って子供を殺していいことにはならんだろう」
メラルー 「それもそうですがぃ……ガルルガさんたちはなんて言うか」
クック 「私が説得するよ。とりあえず、私の巣まで運ぼう」
メラルー 「どうなっても知りませんぜ、ダンナ」


―クックの巣―

クック 「(ふぅ……ガルルガさんは随分と怒っていたな……)」
クック 「(無理もない。大事な尻尾を切られたのだから、怒りは分からんでもない……)」
クック 「(子供か……五、六歳ほどだろうか。こんな小さな子を森に捨てるとは)」
クック 「(人間達も、随分と切羽詰った暮らしをしているのだな……)」
女児 「ん……?」
クック 「(目を醒ました……)」
女児 「ひっ……きゃぁぁぁぁ!!」
クック 「クケェェェーッ!!」

クック 「(あぁびっくりした……人間は子供でも、超音波を出すのか……)」
女児 「ひぃぃ……」
クック 「(ひどく怯えている。私の顔が恐ろしいのだろうか)」
クック 「……怖がることはない。私はベジタリアンだ」
女児 「しゃべった……」

クック 「旧沼地に行ったら、君を見つけたんだ」
女児 「わたしを……連れてきてくれたの?」
クック 「ああ。あのままだと君は他の仲間たちに食べられていたかもしれなかったからな」
女児 「…………」
クック 「猫に君が握っていた紙を読んでもらったのだが、ここに捨てられたらしいね」
女児 「うん……」
クック 「事情はよく分からないが、里には戻れそうにもないかい?」

女児 「里にかえっても、だれもいないの……」
クック 「お父さんとお母さんは?」
女児 「三年前にしんじゃったの」
クック 「そうか……どうしてこんな森の奥に? ここは、ハンターでさえもあまり寄り付かない場所だというのに」
女児 「村で、はやり病がおこって……かぞくがいない私が、人柱になることになったの」
クック 「なんと身勝手な……こんな小さな子供を……」

女児 「でも、私、たいしてお屋敷でもやくにたたないし、仕方ないかなって……」
クック 「どんな理由であれ、命は無駄にしていいものじゃない。それに、ヤマツカミ様もベジタリアンだ」
女児 「そうなの?」
クック 「ああ。生贄なんて捧げても、何をすることはできないと思うが……」
女児 「…………」
クック 「(だいぶ酷い扱いを受けていたのだろうか……痩せているし、目には光がない……)」
クック 「(それに打撲の痕も見える……)」

クック 「人間には、あまりいい感情を持っていない仲間たちは多いだろうが、しばらくここにいるかい?」
女児 「え? ……いいの?」
クック 「里には戻れないのだろう? なら、仕方あるまい」
女児 「でも私、何もやくに立てないの……」
クック 「そんなことはやってみないと分からないだろう。子供は、あまりそういう心配をしないものだ」
女児 「…………」
クック 「ここには、今は私しか住んでいない。気兼ねはいらんよ」
女児 「…………」
クック 「それとも、里に戻るかい?」

女児 「うぅん…………やだ…………」
クック 「なら、怖がることはない。しばらくの間、ここにいるといい」
女児 「ほんとうに、わたしを食べないの?」
クック 「ああ。肉はどうも消化が悪くてね……こっちにおいで」
女児 「…………うん…………あっ」
クック 「大丈夫かい? (倒れてしまった……だいぶ疲れているようだ)」

女児 「うん……大丈夫。ごめんなさい……」
クック 「謝ることはないよ。そこに、柔らかい草が敷いてあるから、使うといい」
女児 「…………」
クック 「(警戒しているのか……私は、少し身を離した方がいいようだ)」

クック 「……眠ったようだな……」
クック 「……日が落ちたか。冷えてきたな……どれ……」
クック 「私の羽毛はだいぶ痛んでいるが、風除けくらいにはなるだろう」
女児 「すー……すー……」
クック 「…………久しぶりだな、こういうのは…………」

―朝―

女児 「……ふわぁ……」
女児 「ここ、どこ……?」
クック 「おはよう」
女児 「ひゃぁ!」
クック 「クケェ!」
女児 「びっくりしたの……」
クック 「私もびっくりしたよ。そんなに私の顔は怖いかな」

女児 「うん……でも、屋敷のご主人様たちの方が怖いよ」
クック 「…………お腹がすいているだろう? これでも食べなさい」
女児 「果物……と、カエル?」
クック 「人間の食べ物がよく分からなくてな」
女児 「カエルの食べ方はよくわからないの……」
クック 「そうなのか。トトスさんに聞いたら、持たせてくれたんだが……」

クック 「(結局カエルは食べなかったな……トトスさん、適当なことを……)」
女児 「ごちそうさまなの!」
クック 「だいぶ元気になってきたようだな。良かった」
女児 「こんなにおなかいっぱいたべたのは、はじめてなの」
クック 「人間も、私と同じようなものを食べているんだな。安心したよ」
女児 「ありがとう。おじさん、顔はこわいけど、やさしいね」
クック 「おじさん……か。人間にそう呼ばれるのも、何だか不思議な感じだ」

クック 「(数日経って、だいぶ血色もよくなってきた。少し出かけてもいいだろう)」
クック 「女児、ちょっと私は、ヤマツカミ様の所に行ってくるよ。留守番を頼めるかい?」
女児 「おじさん、出かけちゃうの?」
クック 「すぐに戻ってくるよ。そんなに心配そうな顔をしなくてもいい」
女児 「うん……いってらっしゃい」
クック 「行ってくる」

―旧密林―

クック 「(あれは……ガルルガさん!? 私を待っていたのか……)」
ガルルガ 「クック、お前まだ人間を匿ってるらしいなァ? 聞いたぜぇ、若い女だって?」
クック 「ガルルガさん……あァ、尻尾が治ったようで、良かったよ」
ガルルガ 「ンなこたぁどうでもいいんだよ。いいからとっとと俺に引き渡せやァ言ってんだ」
クック 「いきなりそんな……少し落ち着いて話をしようじゃないか」
ガルルガ 「馬鹿言うな! この背中の傷を見ろ。ここも、ここも、人間のハンターにつけられたんだぞ!」
クック 「…………」
ガルルガ 「人間が森にいるってだけで、疼いてしゃァねェ。クック! お前だって、家族を……」

ヤマツカミ 「騒がしいのぅ……こんな朝早くから、どうしたんじゃ」
クック 「ヤマツカミ様!!」
ガルルガ 「じじい! 聞いてくれよ。クックの野郎が、人間の子供を飼ってやがるんだ!!」
クック 「ガルルガさん!」
ヤマツカミ 「何じゃと? 人間を?」
ガルルガ 「俺はもう我慢できねェ。人間は野蛮で下品な生き物だ! 許せねェ!!」
ヤマツカミ 「まぁ待て。事情を聞かせてくれないか?」

ヤマツカミ 「ふむ……わしへの生贄とな。人間も馬鹿なことを考える……」
ガルルガ 「このままじゃ、子分たちへの示しがつかねェ。食い殺させてくれ!!」
クック 「そんな無体な。あの子は、人間の仲間からも虐められて、ここに捨てられたんだぞ!」
ガルルガ 「知ったこっちゃァねェんだよ! じゃあ何だ、お前、人間の味方になるってでも言うのか!」
クック 「違うそんなことは言ってない! しかし、あの子を食い殺したら、その人間と同じになってしまうだろう」
ヤマツカミ 「…………」

ガルルガ 「屁理屈言いやがって……とにかく、俺は反対だ。殺させろ!!」
ヤマツカミ 「まぁ待ちなさい、ガル」
ガルルガ 「何でだ!」
ヤマツカミ 「クックの言うとおり、人間だからといって殺していては、キリがない」
ガルルガ 「でも……」
ヤマツカミ 「森は広い。別段、子供一人が増えたからといって、困ることはないじゃろう」

ヤマツカミ 「将来、もしもわしらの敵になるようなことがあれば、その時に殺しても遅くはない」
クック 「ヤマツカミ様……!!」
ガノトトス 「僕もそう思うな」
クック 「トトスさん! 来ていたのか」
ガノトトス 「やぁ。話は聞かせてもらったよ。悪い子じゃないのならいいじゃないか。ガルルガ君も落ち着きたまえ」
ガルルガ 「……ちっ。優等生がしゃしゃり出てきやがって……むなくそ悪ィ。俺は帰るぜ」
クック 「ガルルガさん!!」

クック 「……気持ちは分からないでもないんだが……」
ヤマツカミ 「クック、お前の言葉だから、信用したんじゃぞ」
クック 「分かっています……」
ヤマツカミ 「今度、時間があればここに連れてくるがいい。わしも、少し興味があるでな」

ガノトトス 「ヤマツカミの爺さん、また寝ちゃったね」
クック 「トトスさん、わざわざ来てくれたのか……ありがとう」
ガノトトス 「どうってことないさ。散歩がてらちょっとね。僕にも、その子を紹介してくれないかな」
クック 「ああ。今、私の巣に置いているんだ」
ガノトトス 「可愛い子なのかい?」
クック 「人間のことはよく分からないが、素直な子だよ」
ガノトトス 「そうなのか。じゃあ、とっておきのカエルをお土産にしなきゃな」

次回へ続きます

イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 目次へ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009.05.26 13:22:31
コメント(2) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.