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ナルガクルガ 「あの時に、シャンロンがシェンガオレンを引き上げさせなければ、俺たちの勝利は確定していたはずだ」
クック 「そうだな……」
ナルガクルガ 「今でも悔いが残る。無駄な禍根を残すから、こんなことになる。人間の犠牲が何だ。奴らは俺たちの敵だ」
クック 「しかし、子供は子供だ」

ナルガクルガ 「…………」
クック 「私の子も、ちゃんと育っていればこの子くらいの年齢になっていた」
女児 「おじさん……」
クック 「そんな未来を、私は奪うことは出来ない。一人身のお前には、分からないだろうがな……」

ナルガクルガ 「…………ふん…………」
クック 「ナルガ、どうするつもりだ?」
ナルガクルガ 「……どうもこうも、俺はただ通りかかっただけだ。巣に帰るまでよ」
クック 「ナルガ…………」
ナルガクルガ 「クック、ドドが戻る前に、雪山へゆけ…………」

クック 「………………行ったか」
女児 「おじさん、子供が……」
クック 「どうした女児、何故泣いている?」
女児 「だって、人間が……私たちが……ひどいこと……」
クック 「女児が気に病むことはない。それに、あの時に家族を守れなかったのは、人のせいではない」
女児 「…………」
クック 「私自身の、弱さのせいなんだ……」

―雪山―

クック 「もうじき雪山だ。もっと深く羽毛の中に入りなさい」
女児 「うん……」
クック 「(先ほどの会話のことを気にしているんだろうか……口数が少ないな……)」
クック 「今日は雪が強いな。一旦地面に降りよう」

女児 「すごくさむいの……」
クック 「洞穴に入れば、気にならなくなる。頑張るんだ」
クック 「(しかし、毛皮も何も持たない、今の女児には辛いな……早いところ向かわねば……)」
クック 「(雪が強い……洞穴はどっちだ……)」

女児 「おじさん……」
クック 「どうした?」
女児 「足は大丈夫? 私は重くない?」

クック 「お前一人くらい、どうということはない。それに、ナルガはああ言っていたが、普通に暮らす分には問題ないよ」
女児 「そう……おじさんは、人間に酷いことをされたの?」
クック 「……私たちも、人間に対して、やってはいけないことをした。そこに種族に関係ない」
女児 「でも……私は人間だよ?」

クック 「…………」
女児 「どうして、それなのにこんなに、やさしくしてくれるの?」
クック 「……特に理由はないさ。お前は、私のことが嫌いかい?」

女児 「うぅん……里の人たちよりも、ずっと、ずっとおじさんのほうが優しいよ」
クック 「なら、それでいいさ。深く考えることはないよ」
女児 「でも……」

キリン 「あら、クックのおじさま。珍しい! どうしてこんなところに?」
クック 「その声は、キリンちゃんか! 久しぶりだな」
女児 「わぁ、真っ白いお馬さん! 綺麗!!」

キリン 「……人間? おじさま、どうかなさったの? 人と一緒に来るなんて」
クック 「あぁ、この子は仲間達に、森に捨てられてな。身寄りもないし、私が引き取っているんだ」
キリン 「まぁ! 大変なのねぇ。私、人間をこんな近くで見るのは初めてよ」
女児 「こんにちは。きれいな体だね」
キリン 「うふふ、お世辞を言ったって何も出ないわよ」

クック 「この前見たときは、ちいさな子馬だったのに大きくなったなぁ」
キリン 「おじさまと会ったのは随分前のお話よ。大きくもなるわ」
クック 「ははっ。違いない」

キリン 「それにしても、これからもっと雪は強くなるわ。おじさま、こんな中、お散歩は危険よ」
クック 「そのようだな。いいところで会えた。実はフルフルさんの洞穴を探しているんだ」
キリン 「あら、私も今から行くところなの。おじさま、人間の子も、よろしかったらご一緒しない?」
クック 「それはありがたい」

キリン 「こっちよ。ねぇ、女児ちゃん。あなた毛皮は着ていないの?」
女児 「うん……服はこのワンピースしか持ってないの……」
キリン 「寒いんじゃないかしら? 人間ってみんなそうなの?」

クック 「そういえば、少し経てば毛が生えてくるのかと思っていたが、そうではないようだな」
女児 「人間は、本当ならお洋服を着るんだけれど……」
キリン 「持ってないの? そのままじゃかわいそうよ、おじさま」
クック 「う……うむ。そうだな」

キリン 「私のお家、この近くだから、体に巻くものを何かとってくるわ。ちょっと待ってて」
クック 「いいのか、キリンさん? わざわざそんな……」
キリン 「いいのよいいのよ。このくぼみに入っていて。雪を防げるわ」

クック 「…………行ってしまった。何だか気を使わせてしまったようで悪いな」
女児 「うう……寒い……」
クック 「雪が強くなってきた……もっと深く羽の中に入りなさい」
女児 「うん……(ぎゅ)」

キリン 「お待たせ、おじさま達。少し前にオオナヅチ君が脱皮した皮をもらったのよ。どうかしら?」
クック 「おお、これは珍しいな。いいのかい?」
キリン 「ええ。綺麗でしょう? 丸裸ではかわいそうだから。ほら、これを羽織って。畳んで体にかけて」
女児 「あ……ありがとう。わっ、軽いし……温かい」

キリン 「オオナヅチ君の皮は、保湿性も抜群よ。あなたもこれで、私みたいなふさふさのお肌になれるわ」
女児 「ありがとう、キリンさん! 大事にするね」
キリン 「うふふ、いいのよ。さ、洞窟までご一緒しましょう」

―フルフルの洞窟―

キリン 「ふぅ、ここまでくれば、ひとまず安心ね」
クック 「本当に助かった。キリンさん、ありがとう。女児も大丈夫か?」
女児 「うん。この皮のお陰で全然寒くないよ」
クック 「それは良かった。さて……フルフルさんは起きているか……」
キリン 「お婆ちゃーん。遊びに来たわよ~」

キリン 「あら? 返事がないわ。お留守かしら」
クック 「ふぅむ……眠っているだけなら嬉しいのだが……」
キリン 「もう少し奥に入ってみましょう」
女児 「あっ、あそこに何かいるよ」
クック 「む? 何だ、いるじゃないか。おーいフルフルさん、お邪魔してすまない。少し話をしたいことが……」

キリン 「お婆ちゃん!? どうしたの!」
フルフル 「…………その声は、キリンかい? すまないねぇ……出迎えができなくて」
キリン 「そんなことより……お婆ちゃん、足が血だらけじゃない!!」
クック 「やっ……! フルフルさん、どうしたんだ、その怪我は!!」
フルフル 「クック? やれやれ、今日はお客が沢山来る日だねぇ……」

クック 「足にバリスタの矢が刺さっている……ハンターにやられたのか?」
女児 「!!」
フルフル 「飛んでいる時にちょいとねェ。なぁに、これしきの傷、少し寝れば……」

キリン 「お婆ちゃん! 待ってて。今矢を抜いてあげる!」
フルフル 「私も試してみたんだけどねぇ、途中で折れちまって、どうにも上手くいかんのよ」
キリン 「……くっ……うっ……駄目だわ。おじさま、抜いてあげられない?」

クック 「分かった。キリンちゃん、ちょっと脇に下がっていなさい」
女児 「おじさん、私がやるの」
クック 「女児? 待つんだ!」
フルフル 「……人間の臭いがするねェ。何だい? この婆の霜降りでも取りに来たかい?」
クック 「フルフルさん、ちょっと待ってくれ。その子は、私が拾った子で……」

女児 「ひどいけが……いたい? 今、矢を抜いてあげるから……」
フルフル 「…………」
女児 「血でぬるぬるする……これだ。う……っ、と」
フルフル 「……! …………」
女児 「抜けた……」

キリン 「女児ちゃん、この薬草を傷口に貼ってあげて」
女児 「うん。大丈夫……? 白い竜さん……」

フルフル 「まさか人間に治療される時が来るとはの……」
女児 「これでよし……と。あとは枯れ草で縛って……」
クック 「…………」
フルフル 「人間のお嬢ちゃん、悪いねェ」
女児 「ごめんなさい……ごめんなさい。人間が、こんなひどいこと……」
フルフル 「泣いてるのかい? あたしは目が見えんから、あんたの顔は見えないのよ。においを嗅がせておくれ」

女児 「うん。私はここだよ」
フルフル 「(ブフォー)何だい、オオナヅチのにおいがするね」
キリン 「お婆ちゃん、私が皮を少し分けてあげたの。だってこの子ったら、丸裸だったんだもの」
フルフル 「そうかいそうかい。キリンが言うなら、悪い人間ではなさそうだね」
女児 「私はハンターじゃないよ」
フルフル 「こんなちっぽけなハンターがいるもんかい。どれ……どっこいしょ。少し楽になってきたわ」

フルフル 「久しぶりねぇクック。ヤマツカミは元気かい」
クック 「ああ、元気だ。それより、その怪我は……」
フルフル 「矢も抜いてもらったし、しばらく動かなきゃあ大丈夫さ」
クック 「あなた程の方がどうして……?」
フルフル 「いや何、雪山でアイルーが迷子になっていてねェ。里に連れて行ったんだがね、少し近づきすぎちまったのよ」

クック 「敵意がない者を襲うとは……」
フルフル 「里の境界に降りたあたしが悪いのさ。そんなに責めるでないよ。人間も必死なんだろう」
クック 「しかし……」
フルフル 「それよりクックよ、事情くらい話してくれてもいいんじゃないかね?」
クック 「あ……ああ。実は……」

フルフル 「…………そうかいそうかい。人間に捨てられたのかい」
女児 「うん……でも、森の神様は、私のことは食べないって……」
フルフル 「そうだろうともよ。生贄なんて、ほんに馬鹿なことをするねぇ」

女児 「お婆ちゃん、怪我は大丈夫? 血が止まらないよ……」
フルフル 「お婆ちゃんとな? はっは。人の子にそう呼ばれるとは驚きよ。なぁに、これくらいすぐ治る」
女児 「うん……(ぐす……)」
キリン 「女児ちゃん……」

フルフル 「どっこいしょ……と。今日はもう遅いわな。クックと女児、キリンも、泊まっていくがええ」
クック 「じゃあフルフルさん……」
フルフル 「傷口に薬草貼ってもらって、むざむざ見捨てたりはせんよ。ドドのじじいには、あたしから言うかいな」
クック 「フルフルさん、ありがとう……」
キリン 「良かったね、女児ちゃん」
女児 「うん……」

フルフル 「これでも食いな。ドス食い大マグロの干物だ。元気が出るよ」
女児 「お婆ちゃん……ありがとう。(むぐむぐ)おいしい!」
フルフル 「そうかいそうかい。こっちの方があったかいかんね。クックも、ボサーッと突っ立ってないで、はよおいで」
クック 「あ……ああ」

フルフル 「最近は色々ガタがきてねェ。婆は歳かもしれんわ」
キリン 「お婆ちゃんはまだまだ現役よ。お肌だって、みずみずしくてうらやましいわ」
フルフル 「はっは。小娘、お世辞言うても何も出やせんぞ?」

キリン 「女児ちゃん、私と一緒に寝ましょう。こっちにおいでなさい」
女児 「いいの? ……お姉ちゃん……?」
キリン 「ええ。ほら、ここに入って」
女児 「お姉ちゃんの体、ふわふわしてる……」
キリン 「ふふ……あなたのお肌はつるつるねぇ」

次回へ続きます

イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 目次へ





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最終更新日  2009.05.26 13:20:12
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