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―十数年前、旧火山、夜―

テオ・テスカトル 「どうした、妻よ。何を考え込んでいる」
ナナ・テスカトリ 「あなた様……いえ。少し考え事をしておりました」
テオ・テスカトル 「(ドス)考え事とは?」
ナナ・テスカトリ 「ええ……この前の集会にて、ラオシャンロン様が仰っておられたことについてです」

テオ・テスカトル 「ふむ。我らのまとまりのことか」
ナナ・テスカトリ 「そうです。わたくし達は、どうしても、互いに交流というものを持たない傾向にあります」
テオ・テスカトル 「私達もそのように育ってきた。いたし方あるまい」
ナナ・テスカトリ 「事実は事実と考えておりますが……それが、問題なのやもしれぬと、ふと思ったのです」

テオ・テスカトル 「どういうことだ?」
ナナ・テスカトリ 「人間の侵攻に対する脅威に、今現在はそれぞれの一族ごとに立ち向かっております」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「そのことにより、例えばブランゴ一族の侵攻に対する報復を、ガオレン一族が受けるなどということも……」

テオ・テスカトル 「確かに。我らの間には交流がなさ過ぎるのも事実だ。子供達の教育にも、ばらつきがある」
ナナ・テスカトリ 「他部族のしきたりまでは存じませぬが、やはり、親が戦闘しか教えねば、悪化の一途を辿るのではないかと」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「わたくしはふと、そう思ったのです」

テオ・テスカトル 「成る程、一理ある」
ナナ・テスカトリ 「子供達はみな平等で、そこに種族の差はあれば、違いはないと思います」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「これからは、人から身を守るために秩序ある生活が求められるでしょう。学問、教養は必要ではないでしょうか」

テオ・テスカトル 「我々も幼い時分、先代のテスカから教えを受けた。お前は、皆にもそれを分け与えたいというのか」
ナナ・テスカトリ 「はい。戦い以外の世界もあるということを、誰かが子供達に教えねば」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「協力し、助け合うという概念を教えねば、いけないような気もするのです」

テオ・テスカトル 「……元来、火山と雪山はあまり交流はない。いさみあいも多い」
ナナ・テスカトリ 「はい。しかし、親の代の確執は、子供達には関係がありませぬ」
テオ・テスカトル 「……うむ」
ナナ・テスカトリ 「親がいさみあったまま、その世界しか知らねば、子供にまでもその確執が染み付いてしまいます」

テオ・テスカトル 「して、妻よ。お前は具体的にはどうしたいと?」
ナナ・テスカトリ 「学校を作るというのはどうでしょうか」
テオ・テスカトル 「学校? 寺子屋のことか……そこに、子供達を預かり、教育を施そうというわけだな」
ナナ・テスカトリ 「そうです。次の集会で、提案ができれば……」

テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「いかがでしょうか?」
テオ・テスカトル 「私も……言い方は悪いやもしれぬが、私達が受けてきた教育と、他所の教育水準に差があることは感じていた」
ナナ・テスカトリ 「…………」
テオ・テスカトル 「確かに、次代を担っていくのは子供達だ。子供が、協力し合う世界を知れば、我々の力はより堅固なものとなる」

ナナ・テスカトリ 「それでは……」
テオ・テスカトル 「問題は、それを今まで誰もやろうとしなかったことだ」
ナナ・テスカトリ 「ええ……」
テオ・テスカトル 「部族には部族の慣習が存在する。口出しをすることを嫌う者たちも多いだろう」

ナナ・テスカトリ 「先代のテスカもそうでした」
テオ・テスカトル 「私にはそのような考えはない。知識は広く分け与えるべきだ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様……」

テオ・テスカトル 「……反対するにべはない。次回の集会にて、提案するのも良いだろう」
ナナ・テスカトリ 「ありがとうございます」
テオ・テスカトル 「ある程度の議案は作っておかねばなるまい。お前のみでは納得させるのは厳しかろう」
ナナ・テスカトリ 「……(ニコリ)」

テオ・テスカトル 「夜分は冷え込む。中に入るが良い」
ナナ・テスカトリ 「ええ。ご足労おかけいたしました」
テオ・テスカトル 「何、気にすることはない。私も夜空を見たくなっただけのことよ。ゆくぞ」
ナナ・テスカトリ 「かしこまりました」

テオ・テスカトル 「そういえば、先日、人間にやられたティガレックス夫妻なのだが、子供は無事、フルフル夫妻の元についたと」
ナナ・テスカトリ 「そうですか……フルフル様達ならば、安心してお任せできます。良かった」
テオ・テスカトル 「我が屋敷でも良かったのだが、既にクシャル達がいる。苦渋だったが、何にせよ引き取り手がいて良かった」
ナナ・テスカトリ 「皆様、ご自分のことでも大変だというのに、ありがたいことです」
テオ・テスカトル 「クシャル達はもう寝た。あの子らも、明日ほどから、そろそろ飛ぶ練習を始めても良い頃だろう」

ナナ・テスカトリ 「そうですね……ん?」
テオ・テスカトル 「どうした、妻よ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、あそこに何かおります」
テオ・テスカトル 「ハンターか? こんな夜分に……下がりなさい」
ナナ・テスカトリ 「ええ」

テオ・テスカトル 「…………」
××××× 「……(ごそごそ)」
テオ・テスカトル 「いや、違う。それにしては大きい。人ではない」
ナナ・テスカトリ 「ここは、わたくし達の領地でございます。無断侵入者でしょうか?」
テオ・テスカトル 「そのようだ。少し注意をしてくるとしよう」

テオ・テスカトル 「そこな者。何をしている」
××××× 「!!(ビクゥッ!)……!!!」
ナナ・テスカトリ 「?」
テオ・テスカトル 「……猿の子供? 見たことのない顔だな。そこの鉱脈には、残念ながら宝石はない。盗みとは感心せぬものよ」
××××× 「(ガルルルルル)」

テオ・テスカトル 「ほう。私を炎皇と知りながらも牙を剥くか。無知か、はたまたは阿呆か」
××××× 「(サッ)」
テオ・テスカトル 「? ……人間の刃物? やめておけ。そんなものは、何の役にも立たぬ」
××××× 「ギャォォォ!(バッ)」

テオ・テスカトル 「(ガキィィィン)しょうもない餓鬼よ」
××××× 「!!」
テオ・テスカトル 「その刃物は折れたぞ。どうした? それで終わりか」

××××× 「ガルルルルルル……ッガァァァッ!(ドォォォンッ)」
テオ・テスカトル 「! 何だ……この覇気は(毛並みが金色に変わった。目つきも据わっている。ただの小猿ではない……!)」
××××× 「シャァァ!(ブォォン)」
テオ・テスカトル 「あれは電気の塊……溜めているのか」
ナナ・テスカトリ 「あなた様!」
テオ・テスカトル 「急くな妻よ。やらせておけ」

××××× 「キャオラァァ!(ドォォンッ!)」
テオ・テスカトル 「ふんッ!(バシィィィッ)」
××××× 「!!?」
テオ・テスカトル 「これしき弾けぬとでも思うたか。ちと、お灸を据える必要がありそうだな」

××××× 「…………(じり……じり……)」
テオ・テスカトル 「(逃げる気配がない……? 何だ、この奇妙な猿は……)」
テオ・テスカトル 「(見たことがない……それに、小猿の割に、とてつもないパワーだ)」

××××× 「(ぐぅぅぅぅ~)…………ギリ……」
テオ・テスカトル 「……?」
ナナ・テスカトリ 「おやめください、あなた様。そこな小猿も、お控えなさい(ザッ)」
××××× 「!!」
ナナ・テスカトリ 「お腹がすいているのですか? そのような追いはぎのような真似をせずとも、ならばそう口に出せばよいのです」

××××× 「…………ギリ…………」
ナナ・テスカトリ 「ほら(ポイッ)」
××××× 「…………」
ナナ・テスカトリ 「ドス食い大マグロの干物です。おいしいですよ」
××××× 「…………(くんくん)」
××××× 「(ぎろ)………………(サッ)」
××××× 「(むしゃむしゃむしゃむしゃ)」

テオ・テスカトル 「…………ふむ」
ナナ・テスカトリ 「どこの子でしょうか。見たところ、ブランゴ一族のようですが……」
テオ・テスカトル 「ドド殿は、火山をいたく嫌っておられる。それに、小猿の力ではない。異常な何かを感じる」
ナナ・テスカトリ 「今は戻ったようですが、先ほど金色に輝きましたわ」
テオ・テスカトル 「うむ。どうしたものか」

××××× 「………………(ぺろぺろ)」
ナナ・テスカトリ 「お名前を聞かせてください。わたくしたちは、特に何をするつもりもありませんが、ここは領地の中なのです」
××××× 「(じり……じり……)………………」
ナナ・テスカトリ 「わたくしはナナ、こちらが夫のテオです。人にいきなり刃物を向けるのは、あまり関心しませんね」

××××× 「…………(ぐぅぅぅ~)」
ナナ・テスカトリ 「足りなかったようですね。お家にいらっしゃい。何か、ご馳走してあげましょう」
テオ・テスカトル 「ふむ。施しもまた修行だ。先ほどのことは大目に見よう。人間のそれを捨てるのならばな」
××××× 「…………」

ナナ・テスカトリ 「ほら、おいでなさい」
テオ・テスカトル 「(くるっ、ズン、ズン)人の武器に頼るなど、男としては言語道断。良い筋をしているというに、惜しいものだ」
××××× 「………………(ポイッ)」
ナナ・テスカトリ 「そうです。ほら、行きますよ」
××××× 「…………」

次回に続きます

イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 目次へ





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最終更新日  2009.06.06 22:17:20
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