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―二年前、人の里、女児の住む屋敷、夜―

女児 「(すすっ)」
女児 「ネコさん、いる?」
白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「(ねてる……)」
白アイルー 「……!」
女児 「ごめんね、おこしちゃった」
白アイルー 「(ごしごし)」

女児 「いろいろ、あまりものだけどもってきたよ」
白アイルー 「……?」
女児 「干物とか……おやさいとか……」
白アイルー 「!」
女児 「どうしたの?」
白アイルー 「(ちょいちょい)」
女児 「あ……おきゃくさんの食べ残しなんだけど……」
女児 「なんだかよくわからないの……」

白アイルー 「(つんつん)……(パカッ)」
女児 「この種、われたんだ……」
白アイルー 「(すっ)」
女児 「たべられるの? でも、種のなかみだよ?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「(もぐもぐ)……! 甘いねぇ。中の方がおいしいんだぁ」
白アイルー 「(もぐもぐ)」
女児 「いつも種はすててたよ。あなたは、すごいこと知ってるんだね」

白アイルー 「?」
女児 「あぁ、これ?」
女児 「おかみさんに、おこられちゃったの」
女児 「わたしあんまりやくにたてないから……」
白アイルー 「(くいっ)……(ふぅ)」
女児 「青くなってたのに……治ってく。とってもあったかい」
白アイルー 「(ニコニコ)」
女児 「ありがとう。やさしいんだね(なでなで)」

女児 「お父さんと、お母さんは?」
白アイルー 「(きょろきょろ)……??」
女児 「どこにいるか、わからないの?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「じゃあ、どうしようね……いま、兵士さんに見つかると、ネコさんはつれていかれちゃうんだよ」
白アイルー 「…………」
女児 「外は雨がすごいから、出れないね……」

白アイルー 「……(ぎゅっ)」
女児 「……?」
白アイルー 「…………」
女児 「(なでなで)いっしょにねよう? 明日、雨がやんでたら、一緒にお父さんたちを探しに行こう」
白アイルー 「…………(こくり)」
女児 「明日は雨がやむよ。そんな気がするもん、だいじょうぶ」
白アイルー 「(にこり)」

女児 「お父さんと、お母さんはね」
白アイルー 「…………」
女児 「きっと、むかえにきてくれるんだよ。だって、かぞくなんだもん。むかえにきてくれるよ」
白アイルー 「…………」
女児 「だから、だいじょうぶだよ。こわい人なんて、心配ないよ」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「お母さんがね、よくわたしに言ってたの」
女児 「(ごそごそ)」

女児 「これ」
白アイルー 「!」
女児 「てるてる坊主っていうの。わたし、沢山つくった。これを吊るして、おねがいすれば、きっと明日はお天気になるの」
女児 「一つ吊るしてもだめなら、もっと沢山吊るせばいいの」
女児 「おねがいすれば、きっと明日はお天気になるって、お母さんはいつも言ってた」
女児 「だからわたし、明日はね、明日こそはね、天気になぁれって、そう思って」
女児 「……そう思いながら、いつもこれ、つくってるんだ」
白アイルー 「…………」

女児 「小さいのがあるから、あげる」
白アイルー 「(にこり)」
女児 「こうやって、ヒモを通して首にかけておけば……」
女児 「もしかしたら、もしもの時に飼いアイルーって思ってもらえるかもしれないし……」
女児 「明日はきっとお天気になって」
女児 「きっと、あなたのお父さんとお母さんも」
女児 「…………」
女児 「探しにきてくれるよ」

白アイルー 「(にこにこ)」
女児 「…………」
女児 「(にこり)」
女児 「…………」
白アイルー 「(ごろごろ)」
女児 「……!」
女児 「(このネコさん、せなかに小さな羽がある……)」
女児 「(きれい……)」
女児 「(特別なネコさんなのかな……)」

女児 「(今は森はあぶないけれど……)」
女児 「(こわい兵士さんたちにつれて行かれるくらいなら)」
女児 「(もしもの時は、森の方が……)」
女児 「(……森……)」
女児 「(お父さんと、お母さんをころした……)」
女児 「(モンスターたちがいる森……)」
女児 「(モンスター…………)」
女児 「(…………この子も…………)」

白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「………………」
女児 「(てるてる坊主を、にぎってる……)」
女児 「(お父さんとお母さんに、会いたいのかな……)」
女児 「(そうだよね……)」
女児 「(一人はさみしいよ)」

女児 「(…………)」
女児 「(でも、だいじょうぶだよ)」
女児 「(この子の分も、お願いするの……)」
女児 「(明日、天気になぁれって……)」
女児 「(どんな幸せがくるのかは、わからないけれど)」
女児 「(明日はきっと、雨が止むよ……)」


―次の日、朝―

女児 「ん……」
女児 「……(あったかい……)」
白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「(この子がくっついててくれたから……)」
女児 「あ……」
女児 「(外……雨……。きのうより、強くなってる……)」
女児 「…………」

白アイルー 「(ふぁぁ)」
女児 「あ……おはよう」
白アイルー 「(ごしごし)……(にこり)」
女児 「今日の、夕方に自由時間があるから、そのときにお父さんとお母さんを探しにいこう?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「あとでまた、何か食べるものを持ってきてあげる」
女児 「ここにいてね?」
白アイルー 「(こくり)」


―女児の住む屋敷、昼―

女将 「女児! ちょっと来な!」
女児 「は……はい!」
女将 「……あんた、何かやらかしたんじゃないだろうね!?」
女児 「(ビクッ)え……」
女将 「兵士が来てるんだよ。お前を呼んでこいってさ」
女児 「わたしを……?」
女将 「ぐずぐずするんじゃないよ。あたしもいくからついといで!」
女児 「…………」

女児 「(もしかして、あの白いネコさんが……)」
女児 「(そんな……)」
女児 「(あの子は、わたしのきずを治してくれて……)」
女児 「(すごくやさしい子で……)」
女児 「(悪いネコさんじゃないのに……)」
女将 「何ボサッとしてんだい! とっとと入るんだよ!(ぐいっ)」

女将 「お待たせしました。いやぁ、なかなかこの子がね、融通がきかなくてね」
女児 「(兵士さんたちだ……)」
女児 「(白いネコさんはいないみたい……)」
兵士A 「…………」
兵士B 「君か、シュレイド城から来た子っていうのは」
女児 「!!」
兵士B 「孤児登録を整理していて、少々気になる点があってね……」

女将 「あの……この子が何かをやらかしたんでしょうか?」
兵士A 「いや、そういうわけではありません。どちらかというと、この子の親が問題でして」
女児 「……!!!」
兵士B 「登録によると、父親が脱走兵となっていましてね。知っての通り、軍規によると脱走は死罪に当たる重罪でして」
兵士A 「死亡は確認されてはいますが、法律では、その家族に、軍罰則による罰金が科せられるんですよ」
女児 「………………」
女将 「罰金!? ちょっと、そんな話聞いてませんよ!」

兵士A 「ええと……あなたは、この子の保護者という形でよろしいでしょうか?」
女将 「! バ……バカを言わないでください。この子は、ウチでただ雇っているだけ……ただの小間使いとして、雇っているだけです」
女児 「!?」
女将 「奴隷として私が買い取ったんです。市民登録があるなんて知りませんでしたよ!」
女児 「(そんな……うそ……)」
女児 「(おかみさんは、お母さんの遠いしんせきで……)」
女児 「(わたし、奴隷じゃない……)」
兵士A 「はぁ、そうなんですか」
兵士B 「まぁ、このご時世ですから、形態はどうあれ、子供が大人の保護下にあるという状況だけで、私たちは口出しをいたしませんよ」
女将 「…………」
兵士B 「それで、本人確認をしてもらいたいんですが」

女児 「!!」
兵士A 「(スッ)この映写画像は、君のお父さんとお母さんで、間違いないかい?」
兵士B 「もしもそうだというのなら、君に軍からの罰金が科せられることになる」
兵士A 「奉公しているというなら、そこから税金という形で引かせてもらうよ」
兵士B 「残酷なようだが、これも規則でね……家族を失って辛いとは思うが」
女児 「…………」
兵士B 「認めなくてもいい、ただ、形式的なものなんだ」
女児 「!?」
女児 「(認めなくてもいい……?)」
女児 「(わたしが、お父さんとお母さんの子供だって……?)」

兵士A 「もし違うというなら、この市民登録は抹消して、また新しく作ればいい」
兵士B 「ただの確認なんだ。そう、構えることはない。別人だということで、いいね?」
女児 「…………」
女将 「ええ、ええ別人ですとも。お前も何とかお言い!」
女児 「…………」

女児 「(お父さん、お母さん……)」
女児 「(むかえに……)」
女児 「(…………………………)」
兵士A 「ん? どうだい?」
女児 「………………」

女児 「(お金……罰金……)」
女児 「(女将さんにめいわく……)」
女児 「(わたし、いくところ……)」
女児 「(ない……)」
女将 「ほら!(ぐいっ)」
女児 「ひっ……」
女児 「……………………」
女児 「べ……」
女児 「別のひと……です」

兵士A 「分かった。ではそのように処理をしておこう」
兵士B 「君の新しい孤児登録市民票の発行手続きもしておくよ」
兵士A 「時間があったら、役所に写真を撮りに来なさい」
女将 「なんだか、たいしたお構いもできませんでして……」
兵士B 「いえ、仕事ですから」
兵士A 「それでは、僕らは失礼します」
女児 「……………………」

次回へ続きます

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最終更新日  2009.06.22 15:47:37
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