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BCwallの日記 [全873件]
第84回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞の5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した、カウイ・ハート・ヘミングスの原作(ヴィレッジブックス刊)の映画化である。 様々な映画に多数出演しているジョージ・クルーニーであるが、本作のようにジョージ・クルーニーが普通のお父さんの役を演じた作品は、ほとんどなかったのではないか。 ジョージ・クルーニーが家族との関係を見つめ直していく悩める父親を演じて高い評価を受けた家族のドラマの秀作である。 美しい自然が広がる楽園ハワイを舞台に、一族で受け継いできた土地の処遇を巡って決断を迫られ、さらには妻がモーターボートの事故で昏睡に陥る中、娘から衝撃の事実を告げられた男の混乱と家族再生への過程を、深刻にならないストーリーテリングで描き出す。 監督は『サイドウェイ』『アバウト・シュミット』のアレクサンダー・ペイン。 人間のドラマを描き出す語り口が絶妙にうまい。 オアフ島に暮らす弁護士のマット・キング(ジョージ・クルーニー)。 彼の一族はカメハメハ大王の末裔で、カウアイ島に先祖から受け継いだ広大な原野を所有していた。目下、その土地の売却問題で一族の意見をまとめる大役に頭を痛めていた。 そんな中、妻のエリザベスがボート事故で意識不明の昏睡状態に陥ってしまう。 家庭のことを妻に任せきりだったマットは、10歳になる次女スコッティ(アラマ・ミラー)の反抗的な振る舞いにもただ戸惑うばかりであるのに、 さらに、追い打ちをかけるように、全寮制の高校に通う長女アレックス(シャイリーン・ウッドリー)から“ママは浮気していた”という思いもよらぬ事実を突きつけられ、ショックと怒りを隠せないマットであったが、その後マットがとった行動は……。 ラスト近く、昏睡状態の妻のベッドに浮気の相手の妻ジュリー(ジュディ・グリア)が現れるところがいい。 ジェフ・ブリッジスの兄ボー・ブリッジスが従兄弟のヒューの役で出演。 『ファミリー・ツリー』という題名は『ツリー・オブ・ライフ』と同様の意味が“ツリー”に込められているのだろう。 原題は“THE DESCENDANTS”。子孫という意味になる。
1942年、フランス政府がナチスに荷担し行った史上最大のユダヤ人一斉検挙事件を巡る衝撃の実話を映画化。この事件は50年もの間、公式には認められていなかった。 元ジャーナリストの女性監督ローズ・ボッシュが、歴史的資料や生存者への丹念な取材を通して明らかとなった事実を基に、最愛の家族と引き離され強制収容所へと送られた人々の過酷な運命を描きだす。 1942年、ナチス占領下のパリ。 ユダヤ人たちはそのことが一目で分かるよう胸に“黄色い星”のワッペンを付けることが義務づけられていた。 そんな中、ユダヤ人迫害政策を推し進めるヒトラーの求めに応じ、フランス政府はパリ地区に住む外国籍のユダヤ人2万4000人の一斉検挙を決定する。 そして7月16日、それは実行される。 1万3000人ものユダヤ人がヴェル・ディヴ(冬季競技場)に押し込められ、水も食料もないまま放置される。何千もの患者であふれる中、自身も検挙されたシェインバウム医師(ジャン・レノ)がたった一人で対応に当たる。 赤十字から派遣されたナースのアネット(メラニー・ロラン)は、そんな光景を目の当たりにしてショックを受けつつも、彼らのために献身的に働くのだったが……。 『イングロリアス・バスターズ』のメラニー・ロランが、ナースのアネットを凛然と演じ深い感銘を呼ぶ。1995年、シラク元大統領がフランス政府の責任を認めるまで、この事件はナチスドイツによる迫害のひとつであると捉えられていた。 この事件は『サラの鍵』でも取り上げられている。
約10年前に「DEEP SEJYUN」として企画された鈴木清順浪漫三部作のニュープリント劇場公開である。 1980年の『ツィゴイネルワイゼン』の大成功を受けて製作された、シネマ・プラセット式(ドーム型移動式映画館)作品の第二弾。1981年作品。 泉鏡花の同名小説の映像化。 劇作家の松崎春弧が、不思議な魅力を持つ女性・品子と出会い、次第に幻想の世界に引きずり込まれていく……。勝手にセイジュン!と言いたくなるほどに、鈴木清順独自の大正ロマネスク調の奔放なイメージがあふれ出す。松田優作も原田芳雄も今となってはこの世の人ではない。この世とあの世を行きつ、戻りつするような田中陽造の脚本が迷宮のような雰囲気を醸しだす。 大楠道代は撮影当時34歳。妖しく美しい。 91年製作の「夢二」と合わせ“大正浪漫三部作”の1本。
『まぼろしの邪馬台国』(2008)、『20世紀少年』の3部作(2008~2009)、『BECK』(2010)、『はやぶさ/HAYABUSA』(2011)、『劇場版SPEC~天~』(2012)といった話題作品を連発し、多作さにおいては、三池崇史と並ぶ、多忙の映画監督、堤幸彦。 これまで情報量の多い、画と音楽でエンターテインメント性の高い映画を撮ってきた堤監督があえて、その手法を封印。 モノクロのシネマスコープ・サイズで上映時間93分のシンプルな映画を撮った。 シンプルではあるが、この映画が放つ問題提議とメッセージは鋭く、そして深い。 公園で可動式の家を作り住み、アルミ缶を集めてきては換金して暮らしているホームレスの生活を描いた作品である。 「この世界で本当の自由や幸せとは何なのだろうか。そろそろ社会に対して思うことを 作品に反映させてみたいと思いはじめている。」とは、監督の弁である。 かつてのATG映画のような感触の堤監督映画である。 主演は名古屋在住のフォークシンガーいとうたかお。 主人公の中年の男、鈴本さん(いとうたかお)が街から集めてきた廃材で公園に家を作るところから始まる。家ができあがったところでタイトル『MY HOUSE』と出る。 鈴本さんはスミちゃん(石田えり)と暮らしている。 ショータ(村田勘)は、裕福な家の子でエリートコースを目指している中学生。 母のトモコ(木村多江)は潔癖症。掃除機をガリガリとかけまくり、消臭剤をかけないと気がすまない。 皿に盛った料理には必ずサランラップをかける。食べ残しは、ためらいもせずにポリのゴミBOXに捨てる。そしてその後必ず手を洗う。某薬品メーカーのデオドラント洗脳を暗に批判しているような痛快さである。 空き缶を捨てる人、その空き缶を街の幸(さち)といって拾い集める人。 食べ残しをあっさりと捨てる人、コンビニのゴミ箱に捨てられた弁当を拾って食べるホームレス。 対比を生かしたドラマ作りである。 そんな対比の中で、石田えりと木村多江が、劇中では出会うこともなく、対照的に描かれる。 石田えりのスミちゃんは、一見成り行きまかせでずぼらであるが、鈴本さんと一緒にいることにしあわせを感じているような人物。 木村多江のトモコは人嫌いで、極度の潔癖症。 ラブホテル社長役の板尾創路の出演がワンポイントとなって効いているが、この3人以外は、ほとんど、あまり知られていない配役陣である。 木村多江はマスクして掃除機かけたり、皿洗ったりしているばっかりで、プロの女優らしい演技をほとんど封じ込めている。 にも関わらず、シンプルな構図から鋭い対比が浮かび上がってくるところが見事である。 ある事件を契機に、スミちゃんとトモコの人生が交錯する。 しかし、映画のラストでトモコは、まだそのことに気づいてはいない。 いつものように掃除機をガリガリとかけている。 その時、テレビに映し出されているのは……。 ショータは塾の学業の成績の優秀な子であるが、躓くと実に脆い。 昆虫か何かを殺すようにホームレスを襲撃する中学生の事件も実際にあった。 脚本は、名古屋の劇作家、佃典彦。 鈴本さんと同じ公園で暮らす“先生”と呼ばれる人物の役で出演している。 昨年の3月に名古屋市内で撮影された。 5/26日から公開。
堤幸彦監督、渡辺謙と樋口可南子が夫婦役を演じた『明日の記憶』(2005)の作家荻原浩の第139回直木賞候補作『愛しの座敷わらし』を水谷豊主演で映画化したホームドラマ。 工藤栄一監督の『逃れの街』(1989)以来29年ぶりの単独主演映画である。 監督は『相棒』シリーズのメイン監督である和泉聖治。ホームドラマでは『お日柄もよく ご愁傷様』(1996)『大安に仏滅!?』(1998)がある。 大手食品メーカーの50代のサラリーマンの高橋晃一(水谷豊)は、商品開発でつまづき左遷されてしまう。 東京から岩手に転勤になったのを機に、築200年の古民家に引っ越すことにした。 しかし、慣れない田舎暮らしに妻の史子(安田成美)は不満タラタラ。 中学生の梓美(橋本愛)も転校先で居場所を見つけられず、小学5年の弟・智也(濱田龍臣)も持病のぜんそくでサッカーをやりたくても出来ない日々。おまけに母親の澄代(草笛光子)には認知症とおぼしき言動があらわれ始める。 そんな中、不思議な出来事が高橋家で起こり始める。誰もいない場所で物音が聞こえ、囲炉裏の鉤が何もしないのに動き、掃除機のコンセントが不思議なことに抜けてしまう。そして手鏡に着物姿のわらべが映る。 どうやらこの古家には、福を呼ぶとも言われる不思議な存在“座敷わらし”が住みついているらしいのだ。 東北地方の民間伝承で有名な“座敷わらし”……。 『となりのトトロ』や『ステキな金縛り』の落ち武者の幽霊のように見える人には見えて、見えない人には見えない。 この“座敷わらし”、家族の中ではお父さんにだけ見えないのである。 今の日本であえぐサラリーマンには、身につまされるホームドラマである。 左遷されても何とか頑張ろうと努力するお父さんを水谷豊がさらりと好演。 人影のない田舎道を自転車コギコギ通勤する。東北支社の営業に回され、スーパーで担当者のご機嫌をとり自社の製品を納入させようとする。 いつも不機嫌そうなスーパーの担当者に段田安則。サラリーマンの営業のこのあたりの場面は『僕達急行 A列車で行こう』とも重なってくる。 それぞれに悩みや問題を抱えた家族が、引っ越し先の古民家で不思議な“座敷わらし”とめぐり会ったのをきっかけに、家族の絆を取り戻していくさまをハートウォーミングに描き出しあと味のいい余韻が残る。 東京へ戻ることになったラスト、家族5人でファミレスに立ち寄る。そこでウエイトレスから「6名さま」と言われる終わり方もいい。 草笛光子は昨年公開の『デンデラ』やその前の『武士の家計簿』でも印象深いが、本作でも存在が効いている。 【送料無料】【定番DVD&BD6倍】デンデラ 【送料無料】【定番DVD&BD6倍】武士の家計簿
第84回アカデミー賞で脚本賞(アニー・マモロー&クリステン・ウィグ)と助演女優賞(メリッサ・マッカーシー)の2部門にノミネートされたコメディ。 結婚する親友の花嫁介添人(ブライズメイド)を頼まれたヒロインたちが、その準備に悪戦苦闘する中で繰り広げる女の本音と友情を下ネタ下品なギャグもふんだんに盛り込んで描き出す。 30代後半の独身のアニー(クリステン・ウィグ)は、開業したケーキ店はつぶれるわ、恋人には捨てられるわで、人生最悪の日々を過ごしていた。 そんな折り、親友のリリアン(マーヤ・ルドルフ)が結婚することになり、アニーはブライズメイドのまとめ役(メイド・オブ・オナー)を頼まれる。 自分は崖っぷちに立たされているというのに……。 自分だけがとり残されたような寂しさをおぼえる。 他の4人のブライズメイドたちを紹介されるが、いずれもクセの強い個性派ぞろい。意見も合わないばかりか、とりわけ金持ち美女のヘレン(ローズ・バーン)はライバル意識をむき出しにしてくる。 その下らぬ意地の張り合いが笑いを誘う。 それでもリリアンのために立派なウェディングプランをと意気込むアニーだったが、前途には想像を絶する数々のトラブルが待ち受けていた。 ロマン・ポランスキー監督の傑作コメディ『おとなのけんか』でも嘔吐が笑いに繋がったが、本作でもとんでもない展開となってゆく。 『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』は、女たちのドラマであった。同様の意味で『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』は、女たちの本音むき出しのドラマである。 アニーの母親役は、ジル・クレイバーグ。70年代後半に『大陸横断超特急』『結婚しない女』『ルナ』などに出演。2010年11月に死去。本作が遺作となった。
1950年に『闘牛』で第22回芥川賞を受賞。この時43歳。 大阪の毎日新聞の記者から、作家一筋の生活に入り、『天平の甍』『敦煌』など多くのベストセラーを送り出し、昭和の時代に人気作家として活躍した井上靖(1907~1991)の自伝的小説『わが母の記~花の下・月の光・雪の面~』の映画化である。 原田眞人監督と役所広司は、『KAMIKAZE TAXI』(1995)『バウンスkoGALS』(1997)『金融腐蝕列島・呪縛』(1999)『突入せよ!「あさま山荘」事件』(2002)で組んでおり、本作は監督と役所広司の5作目の作品となる。 樹木希林は、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(2007)や『歩いても 歩いても』(2007)などで日本のおっ母さんを印象深く演じてきた。 1959年から始まり、昭和の年代を丁寧に再現しながら描き出す1973年11月までの母と息子の、家族の物語である。 これまで事件を取り上げたジャーナリステックな作品が多かった原田眞人監督が、作品の背後に小津安二郎がとらえたような家族の物語を色濃く匂わせつつ描きだし、実に味わいの深い作品となって心にしみてくる。 ベストセラー作家の伊上洪作(役所広司)は、幼少期に自分だけが両親と離れて育てられた経験を持ち、“母に捨てられた”との気持ちが拭えないまま今もなお深い心の傷となっていた。 そのせいか、自分の娘たちには必要以上に干渉してしまい、反抗期の三女・琴子(宮崎あおい)は洪作への反発を強めていた。一方、母・八重(樹木希林)は父(三國連太郎)の死後、洪作の妹たちが面倒を見ていたが、次第に物忘れがひどくなっていく。 やがて、そんな八重を洪作が引き取ることになるのだが……。 劇中のセリフに「東京なんとか」といって、小津安二郎の『東京物語』を匂わせるところがあるが、『わが母の記』は、母親が子供を拒否して記憶を失ってゆく。 八重役の樹木希林は、お婆ちゃんが記憶を失いだんだんに小さくなってゆく感じを絶妙に表現してみせる。洪作と八重の間には曾祖父の妾だったおぬい婆さんに育てられた少年時の洪作の記憶があり、そこが不思議な三角関係となっている。 洪作には、志賀子(キムラ緑子)、桑子(南果歩)という女きょうだいが二人いて、妻の美津(赤間麻里子)との間には郁子(ミムラ)、紀子(菊池亜希子)、琴子(宮崎あおい)と三人の娘がいる。 本作は昭和の年代を背景に描き出す、日本の中・上流家庭の女の家族の物語でもあり、そんなところが、小津安二郎の映画のようでもあり、また谷崎潤一郎の小説を市川崑監督が映画化した『細雪』(1983)を思わせるのである。 主人公が住む家は、実際の井上靖邸で撮影が行われた。季節の移ろいをとらえて伊豆、湯が島、軽井沢などが美しく映し出される。深い陰影をきざんだ芹澤明子の撮影がすばらしくいい。 例えば伊東市の川奈ホテルの場面。 黒の背景にゆらめく煙草の煙の按配など実に風情があってこのホテルのレトロな格式とマッチして昭和の時代がにおい立ってくるようだ。 船の見送りの場面は、いきなり寮歌祭のような導入で始まる。寮歌祭は旧制高校で青春期を送ったこの時代の高学歴の男性には重要な節目となる。ここにも昭和の記憶がある。 役所広司、宮崎あおい、三浦貴大ら出演者が好演であるが、特筆すべきは、長女・志賀子役のキムラ緑子。小津安二郎映画の杉村春子を思わせる絶妙のうまさだ。 |一覧| |
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