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2010.02.12
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カテゴリ:音楽音楽music!
 きょうも上野に行った。
 きのうは書道を見に行ったがきょうは音楽だ。東京文化会館に大八木恭子さんのピアノ演奏会を聴きに行った。

 開演前、ホール内にざわめき声が絶えないとはいえ、高い天井の下には力みのない緊張感がみなぎっている。
 やがて摂津さんが到着、ぐるりと座席の向こう端を回って着席する。

 挨拶を交わしたあと、こう伝えた。
 「ピアノリサイタルというとみんな向こう側(下手側)に座るんだけど、ぼくはこちら側に座ることにしてるんです、このひとの場合には」。
 「そうなんですか」
 「はい」

 理由がないわけではなく、かといってこだわりというほどの理由でもないのだが、ま、理由はいわない。
 大八木さんと知り合ったのは1986年の初秋だと覚えているが、それ以来ずっと、演奏会では上手側に座るようにしてきただけだ。

 ほどなく、このホール独特の銅鑼の音に似た開演ベルが鳴った。
 何人かのしわぶきが急に高まり、同時に小声のざわめきが静まる。

 ぼくはこの、ことが始まる直前の静けさが好きだ。
 演奏会に限らず芝居の開幕前や映画館の上映時刻直前の沈黙。
 さて始まるぞ、どんな作品が展開するかといったわくわく感に満ちたひとときが好きだ。

 大八木恭子さん登場。
 明るい青緑色のドレス、まとめ上げた髪、笑顔。

 プログラム前半は「自作」から始まった。
 話に聞いていた自作曲は「1雪の舞う風景 2古い絵 3水鏡 4郷愁」の4曲。

 最初の音が鳴り曲が流れ始めてすぐ、とてもたのしい気分になった。
 曲想からというより曲そのもののメロディやテンポがもたらす印象だと思う。「大八木さんは音楽と遊んでいる、たのしんでいる」という印象だ。
 4曲すべてよかったが、ぼくは2曲めと3曲めにぴたりとくる感覚をもった。

 ご本人は緊張しているのだろうが、聞いているこちらは子どものような気持ちになれる音楽だった。
 よかった。
 場内の拍手も高まった。

 つぎはラフマニノフの『幻想小品集 op.3』(1892)。
 「1エレジー 2前奏曲 3メロディ 4道化師 5セレナード」とつづく流れを聴きながら、ぼくは「いかにもラフマニノフだなぁ!」と感じ入って聴いていた。

 2曲めあたりから大八木さんの「強靱」な弾きっぷりが本領を発揮し始めていた。

 前半3曲めがプロコフィエフ『ピアノソナタ第4番 op.29』で、これはさまざまな色調をもつ演奏ぶりだった。ぼくは第3楽章アレグロ・コン・ブリオ(allegro con brio)が好きだ。
 活き活きとしたと訳される音楽用語にぴったりの演奏で、ことにエンディングのぶっきらぼうとも見える収めかたが大八木さんらしく、いい。

 ここで15分間の休憩。
 席を立つのが億劫で、摂津さんともども座席を離れずおしゃべりをしていた。

 後半はバッハ、ヘンデル、ムソログスキーという、ぼくにとっては「意外な選曲」だ。
 大八木さんが弾くバッハを聴くのはたぶん初めてではなかろうか。

 始まった。
 バッハ『トッカータ ホ長調 BMV914』。
 聴いているうちに大八木さんのピアノ演奏がオルガン演奏みたいな音になってきた。
 ベーゼンドルファーの黒光りするグランドピアノが、そんなことはありえないのだがパイプオルガンのような音を出す。バッハもすごいが大八木さんもすごい。
 たいへんおもしろく、ぼくはここで存分に愉しんだ。

 ヘンデルの『クラヴィーア組曲』もおもしろかった。
 バロック音楽がジャズのように聞こえてきた。

 そして最大の収穫とも思えた演奏が最後のムソルグスキー『交響詩 はげ山の一夜』だ。
 よく知られたリムスキー=コルサコフ編曲の『禿げ山の一夜』と異なり、音楽の持ち味が万華鏡のようだった。大八木さんはピアノを縦横に弾きこなし、なんともダイナミック。上手側の席からは鍵盤あたりの手の動きは見えないが、それでいい。弾き出される音が輝いている。
 ぼくはこの演奏も大いに気に入った。

 楽屋口んじ出てきた大八木さんとことばを交わせてよかった。
 「おめでとう、すばらしかったよぉ」
 「自作、どうだった?」
 「よかったよ、たのしかった。堀内さんにもいっておくよ」
 「うん、ぜひ。こんど聴きにきてっていって」
 [わかった、いっておきます。よかったよ、愉しい演奏会だった」

 上野駅公園口の上にある蕎麦居酒屋「文化亭」に摂津さんを誘い、あたたかい蕎麦でひと息ついた。

 この間の呑み会帰りと同じ京王八王子23時09分発のバスで帰ってきた。





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最終更新日  2010.02.13 23:16:25
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