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テーマ:日々自然観察(9868)
カテゴリ:昆虫(アブラムシ)
ワタ(綿)に寄生するアブラムシ亜科のワタアブラムシは別として、和名に「ワタ」の付くアブラムシはタマワタムシ亜科以外にもいる。実際、マダラアブラムシ亜科に属すエノキワタアブラムシの有翅虫は多量の綿毛を被って、飛んでいるところはまるで雪虫だが、このワタムシが沢山飛ぶのは春から夏にかけての様だから、ワタムシではあっても、雪虫の候補には成り得ない。同様に、その他のマダラアブラムシ亜科のアブラムシも、寄生転換を行わないからその有翅虫が晩秋に大挙して飛ぶとは考えられず、雪虫の候補にはならないであろう。 また、トドワタムシやカンショワタムシは、無翅虫は著しい綿状物質が体を覆っているが、有翅虫はそうでもないらしい。
更に、「ワタ」が名前に付かないアブラムシでも、無翅虫が多量の綿状物質にまみれている種類がかなりある。この様な種類の有翅虫が「綿毛」を被るのかは、これまた良く分からない。 色々調べてみたが、結局、晩秋に飛ぶ「綿毛」を帯びる有翅虫が総てタマワタムシ亜科に属すか否かは分からなかった。
一般論では完全に行き詰まった。しかし、此処に掲載したワタムシがタマワタムシ亜科に属すことは、ほぼ確実である。多くの他の亜科とタマワタムシ亜科では、翅脈の分岐や走り方が異なるのである。ヒラタアブラムシ亜科とは少し似ているが、やはり違う。翅脈に関する文献は持っていないが、図鑑と自分の写真を良く見比べてみれば、これは明らかである。 此処に掲載した写真を見てみると、どうも2種類の様に見える。大きさが違うし、飛んでいるときの印象も違った。しかし、翅脈に関しては何れもタマワタムシ亜科の構造をしている。
写真のワタムシがタマワタムシ亜科に属すとすると、一体その内のどの種類であろうか。このワタムシは、どうも我が家のヒメリンゴやカイドウがお目当ての様に見える。何れもリンゴ属(Malus)の植物である。・・・とすると、リンゴワタムシ、サンザシハマキワタムシ、リンゴネアブラムシ等が候補に挙がる。 リンゴワタムシは300以上ものサイトで雪虫の候補として挙げられている。しかし、調べてみると、この外来のアブラムシの日本に於ける生態は良く分かっていない様である。タマワタムシ亜科のアブラムシは例外なく宿主転換を行い、晩秋に1次寄主に戻る産性有翅虫が雪虫の候補となる。しかし、このアブラムシの2次寄生について書いてあるサイトは一つも見つからなかった。どのサイトでも、リンゴの根や樹皮などで越冬し、その後は葉茎部に移ると書かれている。しかも、有翅虫は6月、或いは、9月に移住すると言う。これは有翅胎生雌であり、リンゴからリンゴへの移住である。これでは晩秋に飛ぶ雪虫にはならないではないか!! 良く分からないが、リンゴワタムシは雪虫とは関係がない様な気もする。広辞苑に雪虫の正体としてリンゴワタムシが挙げられているのが「リンゴワタムシ説」の起源らしい。しかし、この項目を書いたのはたして昆虫学者なのだろうか。国語学者が有名なリンゴワタムシ(名前の響きがよいし・・・)を根拠なく雪虫の候補として挙げたのがそのまま無批判に転載され続け、こうゆう事態になった可能性もなくはない。
リンゴネアブラムシは、「日本原色虫えい図鑑」に拠ると、1次寄生がアキニレで、リンゴは2次寄生だと書いてある。だから我が家の雪虫とは関係無さそうである。 この虫えい図鑑には、カイドウハマキフシと言うカイドウの葉を不定型に巻く虫えいが載っている。我が家のカイドウは毎年春先にアブラムシに寄生され、葉がしわくちゃになっている。どうも、これの可能性が高い。寄生するのはリンゴハマキワタムシ(Prociphilus crataegicola)と書かれている。このリンゴハマキワタムシは、アブラムシ図鑑にも載っていないし、Internetで検索しても出てこないが、学名で検索すると、何と、サンザシハマキワタムシのことであった。すると、我が家の雪虫は、このサンザシハマキワタムシの産性有翅虫である可能性が高い。 しかし、此処に掲載した雪虫は2種類の様である。この内の何れがサンザシハマキワタムシであろうか? 或いは、何れもサンザシハマキワタムシではないのだろうか? 九州大学の日本産昆虫目録データベースを参照すると、タマワタムシ科には58種もの種類が登録されている。一方、「日本原色アブラムシ図鑑」に載っているのは、僅か12種。しかも、雪虫として有名なトドノネオオワタムシも我が家の雪虫の候補であるサンザシハマキワタムシも載っていない。 結局のところ、雪虫の種を判別するのは、素人には無理と言うことであろう。随分時間がかかったが、まァ、順当な結論と言う他ない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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