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テーマ:日々自然観察(9868)
カテゴリ:昆虫(アブ、カ、ハエ)
北隆館の新訂圖鑑のアシナガバエ科は、九大名誉教授の三枝豊平先生が執筆されている。良く研究されている海浜岩礁性のイソアシナガバエ類と渓流性のナガレアシナガバエ属に付いては詳しく書かれているが、それ以外グループに関しては、主要な属についての解説とその代表的種が載っているだけである。この属に付いての解説を読んでみると、どうやら写真の「ハエ」はチビアシナガバエ(Chrysotus)属らしいと思ったのだが、亜科や属への検索表は無いので類似の近縁属の可能性もある。其処で、例によって双翅目のBBS「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立ててみた。
早速、三枝先生から「Chrysotus属の1種だと思います」との御回答を得た。「日本列島には少なくとも10種以上生息していて,きわめて普通のアシナガバエの属」で「庭の片隅でも2,3種生息していることがあります」とのこと。一先ずは安心した。 しかし、種名は分からない。先生に拠ると、「日本産の種はほとんど研究されていません」。ソモソモ、北隆館の圖鑑に1種だけ載っているチビアシナガバエ属のスネグロチビアシナガバエの学名がChrysotus sp.(Chrysotus属ではあるが、種名は不明の意)なのである。
先生の御回答には「日本列島には少なくとも10種以上棲息していて・・・」とあるのに、九州大学日本産昆虫目録にはチビアシナガバエ(Chrysotus)属は1種も載っていない。「研究されていない」と言うことは、外国の同属種との比較もなされていないと言うことで、日本に棲息する種が外国では既に記載されているのか否かも分かっていないのであろう。従って、今日紹介した「チビアシナガバエ属の1種(Chrysotus sp.)」も外国では知られている種なのか、或いは、未記載種なのかも分からないことになる。
このチビアシナガバエ(Chrysotus)属の「ハエ」は小さいせいか、Internet上に写真や記述は殆どない(外国には少しある)。其処で、北隆館の新訂圖鑑に書かれているチビアシナガバエ(Chrysotus)属の特徴を此処に書いて読者の参考とすることにした。 「チビアシナガバエ属(新称)Chrysotusは極めて小型のアシナガバエで次の特徴を持つ。体は金属光沢のある緑色。頭部は前面から見ると下方に向かって幅を減ずる;前額は広く、♂の顔面はかなり狭い;触角は短く、第3節は丸味を帯びた三角形。口器と小顎鬚は小型;単眼剛毛は著しく強大で後方に曲がる。中剛毛は2列;小楯板剛毛は1対、相互に広く離れる。翅は無色透明、翅脈は黒色;腎葉が発達しない。脚は短めで顕著な変形は見られない。腹部は太め;♂交尾器は微小で腹端部に圧縮される」。メンドーなので解説はしないが、写真の「ハエ」は、勿論、見える範囲でこの特徴に合致している。
どうも、双翅目(蚊、虻、ハエ)となると、無味乾燥な話が多くなって恐縮である。しかし、何分にもこの連中の同定に「絵合わせ」は禁物で、記載をシッカリ読む必要がある。勢い専門用語の羅列になってしまうが、何卒御容赦いただきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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