ユグドラシル

いやぁ、久しぶりに時代劇で大爆笑させてもらいました。
見るまでは、もっとまじめなドラマかと思っていたのですが、捏造の枠を越えて、「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」の世界にまで一気に突き進んでいったので、さすがに大爆笑させられましたね。
まぁ、将軍が江戸城を抜け出すあたりから、オイオイと思いましたが。
夜食の少将として有名な柳沢吉保を善人にまつりあげ、火付け盗賊改めを作り町の治安を安定させた堀田正俊を悪人にしたてあげるあたりは、ある意味アメリカ映画の「パールハーバー」にも匹敵する強烈なギャグでした。

（なお堀田正俊が稲葉正休に暗殺された理由としては、将軍綱吉が自分を引き立ててくれた堀田正俊に頭があがらずにいたのが嫌で暗殺を依頼したとかいう説もある。実際堀田正俊が生きていた時に「生類憐れみの法」を出したが堀田正俊が絶対こんな馬鹿な法を出すな！と大反対し廃案となったという経緯もあるからである。

また正俊が氾濫した淀川の改修工事を稲葉正休に頼んだところ金額で折り合いがつかず面目を潰されたためともいわれている。しかし稲葉正休は正俊の父のイトコで、正俊のおかげで若年寄に出世できた人でもあったのでその裏にはかなり複雑な事情があったと推察される。）

ギャグ物としての評価はおくとしても、真面目にTVドラマを作るなら、柳沢吉保を主人公として、人間の野望と悲しみを描いたものにした方がマシだった気はします。

でもあまり歴史の知識のない人はこのドラマを真に受けたりするんだろうか？（＾＾；；；
いささかというか、かなり怖い気もしますね。


でついでに最後までみてしまったが、どうも製作サイドには、ギャグ路線で作るという気はあまりなかったようだ。
しかし、これを作ったスタッフは何を考えていたんだろうか？
そもそも、男子が誕生しないという個人的な理由から、取り巻きらによって成立の運びとなった「生類憐れみの法」であるが、一番の欠点は、人間が生類に含まれなかった事である。
この法の末期には、犬、猫はいうに及ばず魚や虫にまで及んだとの事であるから目もあてられない。虫を殺して死罪では「人間の価値とはなんぞや？」と誰でも問いたくなるだろう。


(この法の一例をあげれば綱吉の小姓だった伊藤甚介は頬にとまった蚊を殺しただけで流罪となり、それを注意しなかった者は閉門といって一定期間門を閉ざし外部との交渉禁止という罰になったり。
中奥小姓の家臣であった只越甚太夫は病気の子供に効くといわれていたツバメの肝を捕ろうと吹き矢でツバメを殺したら親子ともども斬首となったのです。そしてその場に居合わせ注意しなかった人は八丈島に島流し、はては溝に落ちた犬を助けるのが面倒だってんで無視してたら獄門といった悲劇が数多く繰り返された。また野犬に襲われる町民も続出したため、16万坪の犬小屋を建て専属の犬役人まで置きました。）


なんの意図をもってこの作品を作ったかは定かでないが、小泉総理＝徳川綱吉という図式を表現したかったのなら多少納得できなくもない。
しかし、笑いをとろうと思って作ったのでなければ、かなりひどい作品である。それともTVはどこまで歴史を捏造できるかという趣旨の実験放送だったのだろうか？
それにしてもちょっとお粗末である。

ちなみにこの「生類憐れみの令」、幕府の直轄地と旗本の知行地のみでしか実際には機能していなかったようだ。そもそも領内の行政と処罰権は領主である大名にあるので、幕府の力もそこまではなかなか及ばなかったらしいのだ。もっとも公然と反対して、獣の死体を送りつけた（らしいという話）のは水戸光圀だけらしいが・・・。