ザビ神父の証言

フランス革命（85）　バブーフの陰謀

総裁政府の成立は95年の10月27日、ヴァンデミエールの反乱から３
週間後のことでした。95年憲法下、新しく発足したとはいえ、実質
はテルミドール派の園長です。しかし、ヴァンデミエールの反乱に
王党派の影を見た事で、中道政治を掲げる政府のバランスは先ず
は、左に振れました。

サン・キュロットの活動分子や処刑を免れていた左派系の議員が恩
赦で出獄してきます。政府の肝いりで、民衆クラブも再開します。
これで総裁政府の右派対策は万全と思われたのですが、テルミドー
ル反動後の物価騰貴と食糧危機への対応に躓き、インフレの加速と
食糧危機の深刻化を招いてしまったため、左派との提携による共和
派の結束は脆くも崩れてしまいます。反政府色を強めた民衆クラブ
は再び閉鎖されてしまいます。96年２月のことでした、

バブーフの陰謀は、民衆クラブ閉鎖後の３月から５月にかけて計画
された出来事で、総裁政府を左から揺さぶった事件でした。事件の
中心人物バブーフは、89年から革命運動に投じていましたが、93年
にパリに出てエベール派に接触、後逮捕されますが、95年の恩赦で
出獄していました。

バブーフはテルミドールの反動から、多くの教訓を引き出します。
私有権を制限する平等主義は，私有を否定する社会主義にまで発展
しなければならないとしたのがその一つ。２番目はロベスピエール
の革命独裁の再評価です。そこからバブーフは、民衆運動は議会に
圧力をかけることだけに執心せず、権力の掌握を目指さなければな
らない、と説きます。

この新理論をもって、バブーフはインフレと食糧難に悩むパリ民衆
を、再び蜂起へ導こうとします。ロベスピエール派の残党も１部加
わった組織において、共産主義と革命独裁の融合を基本とするバ
ブーフの理論が生まれます。テルミドールまで，遂に交わる事のな
かったジャコバン主義とサン・キュロット主義がここに融合するに
至りました。

民衆クラブという合法組織が閉鎖されていたため、バブーフ等の運
動は、陰謀という形をとりましたが、少数の決起主義ではなく、大
衆を動員した広範は蜂起を想定していたのです。

ただ残念ながら、このバブーフの陰謀事件は、内部で裏切りが出た
ため、５月の10日に中核分子が一斉に逮捕されてしまい、残念なが
ら未遂に終ります。翌年の裁判でバブーフ等の首謀者は死刑または
流刑になりました。

未遂に終ったのですが、その共産主義の理論と、民衆権力の構想は
政府を震撼させました。そしてこのバブーフの理論は革命期の民衆
運動と19世紀の革命運動を繋ぐ役割を果たしました。流刑となった
彼の盟友ブオナロッティの手で、バブーフの理論は19世紀に伝えら
れ、後、亡命中のレーニンに発見されて、ボリシェヴィキの革命理
論になってゆくのです。
　　　　　　　　続く


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Sent: Wednesday, October 03, 2007 10:27 AM
Subject: 3日の日記