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マスP文庫 [全227件]
渓谷はだんだん狭くなり、藪も深く、防御の術がなければおそらく棘だらけのイバラで体中に刺し傷や引っ掻き傷が出来て、気力も萎えてしまうところだったかも知れないが、一行は新たに加わったレイナの癒しの術にも支えられて気力を振り絞り最後の難関を越えようとしていた。今や『導きのガーネット』は、石全体が赤く輝き、まさにここが『勇者の谷』である事を伝えていた。 先頭を行くブラックは不意の攻撃に備え、幸運に恵まれ難を逃れられるという青い魔法の宝石『天使の口笛』を握りしめ、用心深く辺りを観察しながら一歩一歩と歩を進めていた。 しかし、聞いたことのない鋭い鳥の鳴き声にハッとさせられる事もあった。 「うん?」 その時レオンが奇妙な叫びを上げた。 「どうしたレオン?」 ブラックは自分のすぐ後ろで、一行全体を防御壁で覆っているレオンに尋ねた。 「今、防御壁の外に何か鋭いものが当たるのを感じたんだ。なんか、そう・・・・・、矢のような物かも知れない。」 防御壁で守っている者しか感ずる事の出来ない感触をレオンは分析した。 「矢だと?誰かが矢を射かけたというのか?」 ブラックはレオンに聞いた。 「うん、そうなんだ。あれはきっと矢だよ。」 とその時、藪を背にして一人の射手が大きく強靭な弓を軽々と引いて、こちらに狙いを定めているのが目にとまった。 「この野郎!!」 ブラックは突然そちらに向かって走り出した。 「待て!待つんだ!」 キャット・ザ・キングの忠告も耳に入らずブラックはまっすぐ突き進んだ。 射手は慌てる事もなく、悠然と構え狙いを定めて次の矢を放った。 シュル、シュル、シュル 矢は小気味よい音を立ててブラック向けて飛んで来た。ブラックは慌ててよけたものの、この猛烈な矢の速度では身をかわし切れず、彼の右大腿を射抜いた。 「うっ!くそっ!」 ブラックは呻いた。普通の矢なら軽々とかわすブラックだが、余りにも早い速度のためよけきれなかったのだ。 「一体何者だ、これ程まで強烈な矢を放つ者は?今まで会った事もないぞ。」 ブラックは負傷した右足に力が入らずその場にうずくまると、行く手の射手を睨んだ。 射手は再び弓を構えると、遠くの餌食を鋭い視力に捉えた鷹の様な風情で、ブラックに次の狙いを定めていた。 シュル、シュル、シュル 再び矢は物凄い速さで、今度はブラックの眉間をめがけて飛んで来た。 しかし、目と鼻の先で矢は見えない壁に弾かれるように金属的な音を立てて逸れ、近くの大木の幹に矢柄のほとんどを埋め込んでようやく止まった。 「ブラック、後先考えずに飛び出すんじゃないよ!」 鋭い声でエリーカが叱責した。 「レオンが防御壁を一気に広げてくれたから済んだようなものだけど、あんたの空っぽのおつむは今頃串刺しだよ。」 ブラックは苦虫を噛み潰した様な表情でエリーカに振り返った。 それにしてもあの射手は何者? 一同が改めて前方に視線を向けると、その男は静かに弓を下すとしばらくこちらを見つめていたが、くるりと背を向け藪の中に姿を消した。 チェリーはブラックのところまでやって来て、大腿の傷の具合を確認した。彼女は後ろを振り返ると言った。 「レイナさん。今度はブラックが癒しの術のお稽古に付き合って下さるそうよ?」 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「天使の口笛」で5件ですべて同じで実質1件だった。 あんべ光俊の曲に「天使の口笛」って、若いころ相当色々なジャンルを聞き込んだ私だが、名前を来たことがあるような気がするくらいで、何も知らない。
最近、とみに『導きのガーネット』の光が強く輝き始めた。行く手にはたくさんの山々が連なる一大連峰が横たわっていた。きっとあのどこかに目指す『勇者の谷』があるのだろう。一行は最後の休憩となるひと時を過ごしていた。 レイナよりも三歳年下のビーンズも、最近は一緒に氷の魔女エリーカのレッスンを受けながら旅を続けていた。レイナは氷の魔術よりもどちらかというと予知能力の方が性に合っているようで、その分ビーンズの方がめきめきと頭角を現して行った。エリーカもそれを受け入れ、ビーンズの方に本腰を入れて鍛え始めていた。 エリーカの訓練は厳しく、なるほどレイナも閉口するはずだとビーンズは思ったが、元々類稀な才能を持つビーンズは、いつしか氷の魔術でも世の注目を浴びてもおかしくないほどの実力に達していた。 キャット・ザ・キングはそんな我が娘を遠くから眺め、以前魔力は先祖の誰かから受け継ぐものだというチェリーの言葉を思い出していた。彼は自己治癒の瞑想から目覚めたばかりのチェリーのもとに歩み寄った。 この過酷な旅の間、常に癒しと回復の法力を放ち、全員の気力を支えるチェリーは束の間の休息には一人自己治癒の瞑想の奥に身を横たえ、自分自身を癒しているのだ。 「チェリー?もう体の方はいいのかね?」 キャット・ザ・キングは優しく彼女に語りかけた。 チェリーは微笑むと軽く頷いた。 「実はビーンズについて聞きたいことがあるのだが、我が家にかつて法力を持った者がいたなどとは聞いた事がないのだ。もっとも私は居眠りばかりしていて父親の語り継ぎをちっとも聞いていなかったとハッピーに笑われてしまったのだが。」 チェリーは相変わらず温和な表情を崩さず彼に答えた。 「非常に稀ですが、まったくその血筋がない家系にも突如として魔力を持った者が現れる事もあるようです。そして、その時その者には類稀な魔力が授かるとも言われています。もしかするとビーンズ姫の場合はそれに当たるかも知れませんね?」 「そうかも知れぬなあ?」 彼は改めてエリーカと氷の魔術の稽古に励むビーンズを見てつぶやいた。 「チェリーさん。お願いがあるの。」 そこにレイナがやって来た。 「私に癒しの術を教えて欲しいの。ママの氷の魔術よりも私は予知や癒しの術の方が合っていると思うの。それに今はビーンズがママのお相手をしてくれてるし。」 そう言って彼女はキャット・ザ・キングをちらっと見た。 「そうだな。あの二人、君よりも母娘の様だからな。」 しばし三人の賑やかな笑い声が響き、エリーカとビーンズは驚いて振り返りきょとんとしていた。 「レイナ。そうしてくれたまえ。チェリーにも私から頼む。癒しの術が使える者が増えればその分君の負担も減るだろうし。そういう事なら私はブラックとこれからの事を話し合って来るとしよう。」 彼はそう言ってそこを離れた。 「あっ?本当だ。力が湧いて来たわ。すごい!チェリーさんすごいわ。」 自分に癒しの術をかけたレイナは感嘆の叫びを上げた。 「癒しの術はなかなか身につかないものなのだけれど、あなたはとても才能がおありよ。お母様さえよければ是非私にあなたを見させていただきたいわ。」 チェリーは言った。 「ふーっ、疲れた。」 そこに、防御術をビーンズと交代してもらったレオンが疲れ果てて戻って来た。 「ちょうどいいレイナさん。レオンに癒しの術をかけてあげたら?」 「えっ?レイナが僕を?」 レオンは驚いてチェリーを見つめた。 「大丈夫、レイナの癒しの能力にビーンズの法力が着いたようなものよ。」 チェリーが言うと、ブラックの尻尾の先を二つにしてしまったビーンズを思い出し、レオンはすかさず叫んだ。 「ビーンズ姫の癒しの術に、リードをカチンカチンに凍らせたレイナの法力が合わさったらどうなるんだい?」 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「癒しの術」で9件だった。 ネパールの84歳の老婆が、「アムリタ」=アメリカ大陸1万9千キロ、3か月に及ぶ長い旅に出た。経験と信仰に裏打ちされた彼女の言葉が、心に足りない何かを教える。新鮮な知と現代人の癒しの術を描いた話題の書。 ...とあるが、発売日1996年11月なのでご注意。彼女の旅は本物だけど。
自然療法ではないが、自己治癒力というのがある。なぜ針が効くのかというと、針を体内に入れることにより異物と認識した体がそこを修復しようとして、結果治癒につながるのだそうだ。
傷ついた縁を救うため相馬が、暗黒龍と化した響との激闘で静馬がー桜の巡らした策謀の前に、冬馬の大事な人々が次々と斃されてゆく。 決してこれは馬の話ではない。 第5回電撃ゲーム小説大賞で選考委員特別賞を受賞したらしい。
「大地よ抱きたまえ、空よ見守りたまえ、川よ癒したまえ、森よ語らいたまえ、我が愛する息子マッシュここに眠る。」 キャット・ザ・キングは別れの言葉を告げ、末息子マッシュの眠る塚に膝をつき両手を合わせて祈った。閉じた目を開くと溜まっていた涙が一挙にあふれ、亡骸を葬る塚の上に突如降り出したにわか雨の如く降り注いだ。 彼はこらえきれず、両手を塚の前につくと肩を震わせて泣き始めた。勇猛なキャット・ザ・キングも一人の父親として、最愛の子を失った親として、人目もはばからず泣いた。 マッシュの妹ビーンズも父親の肩にしがみついて一緒に泣いていた。それを取り囲む仲間が、それを囲む森が泣いていた。 キャット・ザ・キングがまだ若い王子の頃、生まれたばかりの三男マッシュを胸に抱いて、しばらく地方行脚に出る別れを告げた。 『戻って来たらお前の兄たち同様思う存分遊んでやるから、それまでは少しの辛抱だ。』 そう言うと膝にまとわりつく幼い頃の長男ライム、次男ウィートとともに抱きしめて、子供たちの父を呼ぶ泣き声を背中に受けて旅立ったのを思い出す。 三人の息子の中では一番かまってやれなかった無念さが彼の心を更に苦しめた。 「そろそろ出発しよう。」とキャット・ザ・キングが声をかけた時、マッシュの異変に気付いた。目は瞬きもせず開き、天候不順のためどんより曇った空を、いや空の雲の先のどこかを一心に見つめるようなまなざしにキャット・ザ・キングは慌てて抱き起こした。ぐったり父親のなすがままに身を委ねる息子の息は既になかった。彼は訳もわからずマッシュの体を抱きしめた時、首筋に刺さった毒針を見つけた。 「これは?」 父親の言葉にビーンズも、「きゃっ!」と短い悲鳴を上げた。 その時第二の毒針がキャット・ザ・キングを襲ったが、魔法でいち早く防御の壁を張っていたエリーカのお蔭で毒針は途中でポトリと落ちて、数メートル先の地面につき刺さった。すぐにこれを感知し、毒針の飛んで来た方向から、レオンとブラックが素早く動き間もなく犯人を追いつめたが、観念したそのチャトラの猫はその場で自分の腕に毒針を刺して自害してしまった。 おそらくキャット・ザ・キングに背格好も顔つきもそっくりなマッシュを間違えて殺したのだろう。デスの手の者に違いない。 「マッシュよ、この世が再び平和を取り戻した時、必ず迎えに来るからそれまではここで静かに安らかに眠っていて欲しい。」 キャット・ザ・キングはそう言うと、懐に持っていた王家の紋章のメタルと自分の髭を数本切り取り、墓に一緒に埋めた。 「しばらくはこれが私の代わりだ。決してお前を一人にはしない。生まれたばかりのお前を残して旅立ったあの日の様には。」 一行は森を離れ、川を渡り、狭い渓谷を抜けるとやがて広い草原に出た。ビーンズは立ち止り振り向いて、兄の眠るはるか彼方の森の方角に目を向けた。もう森は山の景色の中の黒ずんだほんの小さな一角にすぎなかった。 「ビーンズ、さあ行こう。マッシュは世の平和のために生き、世の平和のために死んだ。あいつを慰められるのは私たちが世の平和を再びこの手に取り戻す事だ。」 肩に乗った父親の暖かい、大きな手を彼女は握りしめるとそれを引っ張るように、足早に一路『勇者の谷』を目指し始めた。 その一件があってからは、防御魔術のできる三人が交代で防御壁を張り巡らし、常に周囲を感知しながら進むことにした。 目指すは『勇者の谷のドラゴン』との対決である。 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「悲しみの別れ」で23件だった。 ヒットしたのは3種類の23件だから、実質3件ヒット。 なんともやるせないマッシュの死だが、ハリー・ポッターの原作者J.K.ローリングスもハリーの名付け親シリウス・ブラックが死ぬ所を書いたときは泣きながら書いたという。私もそんな気持ちになってしまった。 今回は雑貨Explorerのコメントは控えたい。
ブロンク地方はキャット・ザ・キングが目指す『勇者の谷』と同じ方向だったので、末息子マッシュは赴任地に戻る道すがら、久しぶりに父と積もる話をしていた。末息子とはいえ、もう体格も父に負けない、いやもう少しで追い越すのではと思えるほど成長していた。顔つきも三兄弟の中では最もキャット・ザ・キングに似ているかも知れない。その精悍な顔は少年期からそろそろ青年期に移る、無邪気さから大人としての厳しさに変わる過渡期と言ってもよかった。 父同様の優しい目を持つマッシュは父に言った。 「父上。母上が生きておいでなら、きっと私たち兄弟がもっと父上をお助けするようにお叱りになるところだったでしょうね?」 思わぬ息子の言葉にキャット・ザ・キングはハッと我に返り我が子を見た。 「何を申す?ベジットの心血を注いで育てた大事な子供たちに、この様な過酷な運命を背負わせる私を、彼女はきっと墓のなかでののしっているのではと、すまない気持ちでいっぱいなのだ。」 彼は、もう立派な男になろうとしている末息子の横顔を愛おしい反面、頼もしくも思えてまぶしそうにみつめた。 『導きのガーネット』が赤い光が示す東北の方向を目指しながら、一行はしばしの休憩をしていた。深い森の奥にもようやく春はその息吹を吹き込み始めていた。50メートルをゆうに超えるであろう高さから、白いしぶきを上げながらなだれ落ちる滝の下には、まだ冷たい雪解け水が注ぎこまれていた。その滝壺に膝まで浸かって先ほどからブラックとマッシュが剣の稽古をしていた。 「えいっ!やーっ!」 マッシュは必死でブラックに立ち向かうが、キャット・ザ・キングでさえかなわないのではないかという程の剣の達人に及ぶべきもなく、まさに子供扱いだった。 岸ではビーンズがチェリーに癒しの術を習いながら、時々一番下の兄の様子を見て大笑いをしていた。 森の中では氷の魔女エリーカも娘のレイナに魔法の厳しいレッスンを行っていたが、レイナは再び戻って来た災難にうんざりしていた。 「おーいブラック。ちょっとマッシュ王子に厳しすぎるんじゃないか?おとなげないぞ。」 レオンはブラックをたしなめた。 「いや、マッシュはなかなか筋が良い。時間さえあれば俺がもっと鍛えて、キャット・ザ・キングをも凌ぐ剣士にしてみせるのだが。」 それを聞いたキャット・ザ・キングは、「何を言う。まだまだ、こんな子せがれになどに追いつけるものか?」と、猛然と言い返した。 マッシュはそんな大人たちの会話など聞く耳も持たないほど、押し返されても、前に前にとブラックに打ち掛かって行く。 やがてブラックとマッシュはまるで兄弟の様に肩を組んで滝壺の中から戻って来た。 「正直にいいますと、この頃少し気持ちが沈んでいたのですが、いやーっ久しぶりに爽快な気分です。ブラック様のお蔭ですっかり晴れました。」 そういうとマッシュは、ふと思いつた様に言った。 「そうだ、ブラック様。ぜひ妹のビーンズを嫁にもらってはいただけませんか?とんだジャジャ馬ですが。」 「ちょっとマッシュ兄さん。いきなり何を言うの?私にも選ぶ権利があるのよ!」 ビーンズは怒り心頭に達したというような大声でわめいた。 一同は久しぶりに感ずる、ほのぼのとしたひと時を満喫していた。 「ほらね?」 マッシュはそう言うと大きく背伸びをして、胸いっぱいに深呼吸をした。それからまるで倒れる様にごろりと草原に寝そべった。 「そろそろ出発しよう。」とキャット・ザ・キングが声をかけた時、初めてその異変に気付く事になった。 Copyright (C) 2012 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「少年から青年へ」で47件だった。 まずはちゃんとタイトルに入っているから載せないわけにはいかない。
先日話題になった、ボクシングのしずちゃんはこの漫画が大好きだそうで、そう言えばこれはまさに少年から青年への物語だった。キジトラ三銃士の登場キャラの名は実はこの漫画のネーミング方法を参考にしているのだ。
小椋佳の作品のテーマもまさに「少年から青年」だろう。
怪物松坂も今は苦しんでいるようだが、はやくまたあの雄姿を見せて欲しい。
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