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地球人として生きる

地球人として生きる

Moroccoその2

Casablanca, Kingdom of Moroccoその2




ビジネスの面から見たモロッコは、経済発展は遂げつつもまだまだ発展途上国であり、外資が参入するにはリスクが高そうです。 様々な分野で賄賂が横行し、企業と役人の癒着も公然の秘密となっているためここをうまくやらないと会社など経営できない環境です。 

これを象徴するかのように税制面においても非常に裏表が激しいことがわかりました。 例えば法人税においては、モロッコの場合累進課税方式をとっていて利益額に応じて最高50%課税されます。 このため大きな企業の中には数百ものペーパーカンパニーを設立して利益を分散し節税(脱税?)工作を行なっているものも多いと聞きました。 役人もこれを承知してはいるのですが癒着しているので黙認しています。  もっともこれはまだマシな方で、実際には企業の半数くらいは登記すらしていないそうです。 

VAT(Value Added Tax・付加価値税、消費税のようなもの)は20%の外税方式となっています。 輸入品には既に高い関税が課せられているわけで、エンドユーザーの手に届くまでに非常に高価になってしまっています。 このためモロッコへ入国する人の中には関税逃れのため密輸する人が非常に多いそうです。 カサブランカ空港では入国審査こそスムーズにパスしたものの、チェックインラゲッジを受け取って出口間際での荷物チェックは念入りで、スーツケースは全員開けられて中味を確認されました。 

こういう路線では機内販売(Duty Free)が繁盛するのが常です。 日本人は機内の免税品を買いあさる事はないでしょう? Dubai-Casablancaの路線でもかなりの人が化粧品を買い込んでいました。 そういえば以前フランクフルトからラゴス(ナイジェリア)へ移動していた便ではみなさん凄い勢いで香水やらお酒を買いあさっていてちょっとびっくりした記憶があります。 多分ナイジェリアにはChannelやらDiorなどの直営店はおろかこういった製品を取り扱う化粧品店なんかもあまり無いからなのでしょう。 仮にそういうお店があったとしても、こうした発展途上国ではいわゆる「贅沢品」に対する関税率は非常に高く設定されており、さらにその上にVATが乗った小売価格は西洋や日本のそれよりもかなり高くなってしまっていることもしばしば。 このため彼らにとってはDuty Freeでの買い物は大変魅力的なのだと思います。 

空港のDuty Free Shopでの品揃えを見るとその国の発展度合いがなんとなくわかるような気がします。 発展途上国へ行けば行くほどお酒やタバコのスペースが大きくなる傾向があります。 街で普通に買うよりもかなり安いのでしょうが私たち日本人にすれば、タバコはともかくお酒は日本のディスカウントショップで買う方が免税店より確実に安い気がします。 日本は物価が高い国ですが、お酒やハイテク製品(デジタルカメラやパソコン)なんかは世界一安いレベルではないでしょうか。 お酒で思い出しましたが、日本酒は良いお土産になります。 日本の免税店で大吟醸クラスが1本2500円程度と手頃だし、免税店には輸出専用モデルが並んでいてこれはパッケージが英語で表記されていてわかりやすいし、ボトルに日本らしい絵が描いてあるものなんかもあります。 おかげで飲んだ後もボトルを飾っておくことが出来るのでお土産として喜ばれるわけです。 ちなみにアフリカなんかでは日本酒はあまり出回っておらずあったとしても結構高価であり2500円以上の投資効果が得られてこちらとしても満足度が高いです。

少し話がそれましたが、日本(だけではないですが)では業種によっては営業許可や何らかの資格等が必要とされるものがありますが、モロッコの場合法整備が遅れており、さらに会社登記すらしなくともそれなりに商売をやっていける状態であるので誰でもどんな商売でもすぐはじめられてしまいます。 公的もしくは業界の自主基準のようなものが無いことと、それを監視するシステムが存在しないために提供される品物やサービスの質は不均一でレベルが低く、当然のことながら良いものが生まれてこない環境に陥っています。 

さてモロッコの労働者の賃金ですが、一応法律で月額1,800DH(約25,000円)というのが最低賃金と定められています。 しかしこの額でははっきり言って生活するのは無理。  カサブランカでまともな生活をするには最低5,000DH(70,000円弱)程度は必要のようです。 労働者は法律で手厚く保護されていますが、他のアラブ諸国と同様過保護気味であり、多くの労働者はこれを逆手にとってマジメに仕事をしない傾向が強いようです。 これは過去に植民地化され劣悪な条件で労働力として搾取された経験から来ているのかもしれません。 このあたりはたった数日の滞在だけでは深めることができなかったため今後調査してみたいと思っています。 

モロッコはまだまだ社会的、産業的基盤が安定どころか整備さえ進んでいない状態です。 このため人々は将来について何かを期待することなどできないし、約束された何かというものも無く、毎日がいわば「生き残り」の連続のようなものです。 このような環境の中いくら私たちが「5年先、10年先を見越した戦略をつくりその上で現在何をして行くべきか一緒に考えよう」「ビジネスは信頼が大切だ。 信頼を築くには時間がかかる」と長期的な視点の重要性を説いたところで机上の空論になってしまいます。 彼らにとってはもっと“実感”のある目先の利益が重要で、それが毎日の生活の糧となっているのです。 これはいわゆる新興市場と呼ばれる国々共通の傾向であり、近年少し変化の兆候が感じられるため各国における共通項を見出そうとしているところです。




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