カテゴリ:電気機器
![]() 負けたわけではない、終わらせるだけ。2月19日に記者会見で東芝【東証1部:6502】の西田厚聰社長はHD DVD事業の終息を発表した。終始笑顔だった西田流“名”答弁を再現掲載。 (週刊東洋経済3月1日号より) なぜ撤退を決断したのか。 東芝と1991年に資本提携を行い、以来、大変緊密な関係にあり、HD DVD(以下HD)サポートに関する契約関係を有していた米ワーナー・ブラザーズから突然の方針変更が表明され、大変残念ながら市場における競争環は大きく変化しました。技術的にも、またコストを含めた顧客への利便性の提供という面でも、HDの優位性に対する自信は今日、この時点においても変わっていませんが、一方で、東芝の経営を預かる立場として、理由やプロセスはどうあれ、結果としての現在の市場環境の変化を冷静に直視し、変化への対応策を速やかに講じる必要があります。 私は、企業経営は状況の関数であり、状況の変化には慧敏に応変していくべきであると考えております。これまでHDをご愛用くださったお客様やパートナー企業のことを考えますと苦渋の決断ではありますが、東芝がこれ以上、HD事業を継続することは東芝の経営にとって大きな影響が生ずることはもとより、複数の規格が併存することによる次世代DVD市場および消費者への影響等にも鑑みて、HD事業を終息させることを決定しました。 過去の規格戦争よりも意思決定が比較的速かった理由は。 状況を客観的に眺めてみると、12月の終わりから1月の(ワーナーの)発表までは、プレーヤーの北米販売シェアはHDのほうが高く、パソコン搭載用HDドライブもこれから増量を行ってもっと一気に伸ばしていこうという段階でのワーナーの方針転換は寝耳に水に近い。ワーナーなきあとを考えると、HDにスティック(固執)して細々ながらHD事業を続けていくことは、消費者の皆様に迷惑をかけるほか、競争の観点からも、もはや勝ち目がないと判断したことが、比較的に判断が速かった理由であろうと思います。 ブルーレイディスク(BD)を手掛ける予定はあるか。 現時点でBDをベースにしたプレーヤー、レコーダーをわれわれが生産・販売する予定は、まったくございません。 HD陣営の映画配給会社の反応は。 ユニバーサル、パラマウントには説明しているが、彼らがどういう判断を下されるかを私のほうから言うことはできません。 12月にワーナーとの契約期限切れを控えていながら油断があったのではないか。 12月より契約はもう少し長いのですが、契約が切れる前でああいう方針変更を(ワーナーが)した。油断といえば油断かもしれませんけれども、なかなかお答えしにくいですね。契約がある中で油断だったどうかは難しいところです。 パラマウントには1・5億ドルの報奨金を支払ったのか。 米国でいろいろな形で報道されていますが、あくまでも憶測でして、憶測記事の内容についてはコメントを致しません。 HDはそもそも何台売れたのか。 再生機(プレーヤー)は国内で約1万台、録再機(レコーダー)は約2万台。全世界では再生機が約70万台、うち米国が約60万台、欧州が約10万台。日本は数が少ないですから端数と見ていただきたい。米マイクロソフト社のXBox用外付けドライブは30万台と推測しています。パソコン用は国内2万台、世界が30万台で北米が14万台、欧州が13万台です。(コンポーネントとしての)ドライブそのものは約200万台ですが、内訳はご勘弁ください。 70万台の再生機を販売した海外は今後どうするのか。 海外のプレーヤーについても、商品開発、生産、販売を中止するということです。 取締役会で最ももめた点は何か。 これは皆さん方にはお話しできません。こういうことを公表されている会社は1社もないと思います。いろいろな議論があるのは当たり前で議論を経たうえで最終決定をすることです。私のほうからはお話しできません。 技術者など社員の処遇は今後どうなるのか。 青森工場のほか本社にもHDに従事してきた技術者はたくさんおります。そういう人たちは非常に高い技術力を持っているということで、今後展開する映像事業もありますし、他に希望があればそういうところでと、東芝グループ全体の中で活用を適材適所で考えていくことになります。 損害賠償請求など米国での訴訟リスクは。 米国は訴訟社会。つねに誰が誰を訴えても構わない社会だから、そういう意味ではリスクはある。クラスアクション(集団訴訟)も考えられますが、私どもはハードのみを販売してきた。ソフトは映画会社をはじめとするいろいろなソフト会社が作り上げた。この責任を東芝がすべて持って皆さん方に商品を提供したわけではありません。そういう意味での訴訟のリスクは、それはない。誰かが訴えてくるというリスクはつねにあるわけですが、それに対して十分に対抗できる。そういう意味での訴訟リスクは比較的に低いのではないかと考えております。 東芝製のノートPCにBD再生機能を搭載する可能性は。 パソコンに搭載しているHDドライブは、現行のDVDドライブのスーパーマルチ機能を全部持っている。それにプラスしてHDが見られる機能がついている。HDのタイトルは国内200本、全世界では1000本ある。それをパソコンで利用しようというお客様もいるし、BDのタイトルを見たいというお客様もいるだろうということで、こちらのほうはすぐに販売中止ということにはしていません(注:HD DVD、BDの双方を再生できるマルチドライブ機発売へ含み)。 HD撤退による2008年3月期の業績面への影響は。 今後具体化してくるもので現時点では確定しておりません。HD以外にもNANDフラッシュメモリの価格動向や社会インフラ事業、パソコン事業の状況も十分考慮したうえで判断する必要があります。もうしばらく時間をかけて見極めたい。 考えられる費用項目は。08年度に損失は引きずらない? 現時点であまり詳しいお話はできません。不確定な要素が非常に多い。在庫処理があるかもしれませんし、米国でクレームがあるかもしれません。いろいろなシナリオを作り上げて精査していく。08年度は大枠はそういうことなんだろうと思います。 デジタル家電事業全体の構想に変更はないのか。 HDの終息に伴って確かに(構想は)狂うがこれから生み出す技術や商品でビジョンを修正し、ネットワークを含めた新しいビジョンを示せるかはこれから。もう少し時間的余裕をいただきたい。 映画配給会社から新たなソフトが出なくなるおそれは。 われわれで決めることができないので、どうしようもないことでございますけれども。もともとHDの規格もハリウッドのスタジオの皆さんが参加されて、ワーナーを中心とした人たちの意見を入れて作り上げた。BDを作り上げる際にこの人たちは入ってはいない。自分たちが決めた規格なのに方針変更したのは、理由がわからないところもあるんですけれども。彼らもビジネスをやっているので、ハードメーカーが保証するということはできない。 ただ、現行のHDは現行のDVDとの互換性が100%あります。現行のDVD用のソフトをHDにかけていただきますと、アップ・コンバート機能で、画質がハイビジョンにほぼ近いような形で、はるかにいい画質で見られます。それから当然のことですが、録再機はハイビジョンのものをハードディスクに記録して見ることができる機能も残っております。ソフトも200本ありますのでそういうタイトルを使っていただくことになる。あくまでも私たちの持っている商品の価値と、これからお客様に対するいろんなサービスを誠心誠意ご説明し対応を図って参ります。 東洋経済オンライン - 2008年3月2日 関連サイト 東芝:トップページ(HTML版) 東芝 - Wikipedia 株価 6502 (株)東芝 東芝 NIKKEI NET 株価サーチ 株価 6502:東芝 - Infoseek マネー 株価ジャッジ | 東芝 (6502) 東芝(東京証券取引所) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月15日 11時47分19秒
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