谷川岳の石黒尾根を登っていたとき、天神尾根をロ-プウェイで登ったという愛犬との登山者に会った。夫婦で柴犬一匹をつれていた。こちらのパピヨンを見て、下山の情報を尋ねてきた。始めてのル-トだとのこと。驚いた。
石黒尾根は危険度、登山技術ともに健脚向きのコ-スだ。
長いクサリのある[ラクダの背の鎖場]などのほか、幾つもの岩場やハシゴなどがある。そこを始めて、愛犬を連れて下山している。無謀だ。事故を起こしに山に来たようなものだ。
引き返して、ロ-プウェイで下山した方が無難で、時間的にも早く下山できると告げた。ロ-プを持っているので、犬を縛って、つり下げて下山するとのこと。それ以上、何も注意できない。と言うより、注意のしようがない。
今でも、無事に下山したかどうか気になっている。
この愛犬との登山者には基本的な間違いが二つある。
その一つは始めてのル-トを下山道に選んだということだ。
登山を安全に楽しむには始めてのル-トを下山道に選ばないことだ。事故や遭難は下山時に多い。登りの時に難所だとわかると、引き返して、登山を止めることもできるが、下山時は引き返すこともできず、中止もできない。勢い、難所でも無理をすることになる。事故、遭難につながる。
愛犬のパピヨンとは200回以上の登山で、それを実行している。何度か登山途中で中止したことがある。山はなくならない。また、別ル-トで登るからと帰る。
第二の間違いは愛犬との登山なのに,一般登山者の情報を基に下山ル-トを選んでいることだ。登山技術の優れた上級登山者でも、犬連れだと、良くて中級、愛犬が大きかったり、しつけが悪いと、初級者になると自覚した方がよい。
愛犬との登山のル-ト選定は一ランクも二ランクも下げて行うことが大切だ。
健脚向きの難コ-スでは事故を起こす可能性が高くなる。犬も人間並に危険度に応じて行動いてくれるとは限らない。むしろ、それは期待しない方が無難だ。
ロ-プで縛られた犬が二階の屋根よりも高い所からつり下げられて、おとなしくしているだろうかと気になった。無茶な人間の無謀な行動だ。怖い目に遭わされているようで、犬がかわいそうだ。
普通の観光旅行に愛犬を連れていくような安易な気持で、愛犬と高山登山をすることは思慮不足だ。遭難しに行くようなものだ。犬の訓練だけでなく、不慮の事態にも対処できるような準備万端と心構えが不可欠だ。
愛犬のパピヨンは、飼い主の左肩から右腰にベルトでつり下げられ、腰に固定された手作りの専用バッグに入って、難所を通過する。夏用と冬用の二つある。
写真の一つは北岳への登山途中に右岸の八本歯の頭のハシゴを撮影したものだ。
下山時、あなたの愛犬はどうしておろすか。
愛犬と高山への登山を漠然と夢見ている人は真剣に考えてもらいたい。下山できないと、大変だ。山には疲労凍死と言う怖い死に神がいる。一夜で死ぬことも珍しくない。
下山時に始めてのル-トを選ぶことは無謀だ。どうしてもというなら、徹底的に情報を収集しておくことだ。本や登山者の気楽な情報には注意が必要だ。
(明日の随想につづく)
愛犬のクサリ場、岩場、ガレ場の渡り方と愛犬の雨具、防寒具等について記述する。