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2021.08.25
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……なに店買い占めてんだ。

 なんだかんだでお嬢様気質、抜けてないな……

と蓮太郎が呟いていた。

 

 

 だが、お嬢様気質が抜けてないと言いながらも、家事労働にどっぷりハマっている唯由は、雪村家の晩餐に狂喜していた。

 

「この出汁、すごいです。

 ぜひ、作り方をっ。

 

 ​Stock broker Singapore 月子やお義母様に食べさせたいですっ」

 

……俺にじゃなくてか」

 

「この水菓子ののってきたお盆、すごい職人技ですね。

 どちらでお求めになられましたっ?」

と唯由は雪村家の夕食を違う意味で満喫する。

 

「蓮太郎、面白いお嬢さんだの。

 お前と似合いのようだ。

 

 二度と現れないかもしれない、お前にとっての大事な『愛人』さんだ。

 大切にな」

と真伸が微笑む。

 

 大王も大王息子もそれを聞いて笑っていた。

 

 

「このかぼちゃの馬車、帰りも動くんですね」

 

 呑まなかった蓮太郎の車の中、唯由は街の灯りを見ながら、そう呟いた。

 

「酔ってんのか、シンデレラ」

 

「酔いません。

 私、ザルですから」

と言いはしたものの、なんだかいい気分な酒であったことは確かだった。

 

……お母さんが出て行ったあと、あの屋敷にひとり残って。

 

 でも、すぐに新しいお母さんと妹ができました。

 

 お義母さんは使用人の人たちをみんな辞めさせてしまい。

 

 長女なんでしょ。

 後継ぎなんでしょ。

 

 じゃあ、この家のこと、みんな、やりなさいって言ってきて。

 

 私、最初はなにもできなくて、泣いてばかりだったけど。

 

 あるとき、自分が磨いたグラスがシャンデリアの灯りにすごく輝いてるのが見えて。

 

 次の日、銀食器をYouTube見ながら熱心に磨いたら」

 

「本じゃないのか」

 

 今どきだな、と前を見たまま蓮太郎が言う。「これまた、灯りの中で美しくめいて。

 お義母様はいいおうちの出なので、食べ方も洗練されて美しく。

 

 滅多にお父様が帰らない家の中でもきちんと装われているお義母様が形のいい唇に私が磨き上げたフォークを運ばれる様がまた素晴らしくて。

 

 私、そこからどっぷり家事にハマったんですよ。

 

 新しい世界を開いてくださったので、別にあの二人は嫌いじゃないです」

 

……出て行ったお前の母親は何処にいるんだ?」

 

 娘が慣れない家事労働をさせられているのに、なにをしてるんだと思ったようだった。

 

 唯由はちょうど通りかかった総合病院を指差す。

 

「そうか。

 入院されて……」「いえ、看護師長として、バリバリ働いてます。

 もともと看護師で、うちの父親が入院したとき出会ったみたいなんですよね。

 

 でも、結局、じっとしてられない人だったみたいで。

 働きたい、と言って出て行ってしまいました」

 

「お母さんは普通の家の方なのか?」

 

 だったら、蓮形寺の暮らしは大変だったろうと蓮太郎は思ってくれたようだった。

 

 お金に不自由しなくて羨ましいと思われる家でも、古い家だと、しきたりなども多く、親戚もいろいろ口出ししてきたりして、大変だから。

 

「母は、の三女です」

 

……大物政治家じゃないか。

 いい家の娘なのに、じっとしてられないのは遺伝か」

と言われてしまう。「いやあ、おじいちゃんも叩き上げの人なんで。

 政治家に定年ないですけど。

 

 今でも空いた時間には畑でクワふるってますよ」

 

 練行は娘が勝手をしてすまないと父に謝ったようだった。

 

 いやいや、よそに子どもを作ってた時点で、父が悪いと思うのだが。

 

 器が大きいのか。

 

 深く考えていないのか。

 

「古澤練行……

 

 暗い夜道を見据えたまま、蓮太郎は呟く。

 

……れんれん仲間だな」

 

「おじいちゃん、『れん』一個しかないです」

 

 などと言っているうちに、アパートに着いていた。

 

 

「なんで戻ってくるんですか」

 

 雪村本邸に戻った途端、蓮太郎は眉をひそめた直哉にそう言われた。

 

「いや、ジイさんに礼を言おうかと。

 蓮形寺をもてなしてくれたから」

 

「そんなこと訊いてるんじゃないですよ。

 ラマンな唯由様を送ってったのに、なに、それじゃあって戻ってきてるんですか」

 

 泊まってこないんですか、と言われる。

 

 いや、女にラマンって使わないだろうが、と思いながらも、唯由に聞いた話をすると、

 

「、最後の大物政治家って感じですよね。

 

 ヤクザっぽいっていうか。

 いかにもな昔の政治家っていうか」

 

 迫力ありますよね~と言ったあとで、

 

「挨拶に行かなくてよろしいんですか?」

と言われる。

 

……今の話の流れで行きたいと言うと思うのか」






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最終更新日  2021.08.25 20:03:18
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