「てるてる坊主」(仮題) page22私が渚の事を聞いたのは高校に上がる春だった。 この街を後にしてから私は この街の人間とは誰一人として連絡を断っていたので 事件から半年以上も経っていた。 あの日 この街の友人と電話していた母の顔がみるみる青ざめ 電話を切る時には泣き出しそうだったのを良く覚えている。 受話器を置いた母は震える声で 「蒼維…あなたが生きていて良かった」 と言いながら私を抱きしめた。 訳も分からず母の腕に抱かれた私は 一体何が起こったのだろうかと思った。 そんな私に母は 暫く考えた後 「あのね、蒼維…一ノ瀬 梨惠ちゃん覚えてる?」 と言い うなずいた私を確認してから 「学校で…学校で…首を吊って自殺したんだって…もう半年も前なんだけど…」 と告げた。 私は目の前が真っ暗になった気がした。 「何で? 何で一ノ瀬さんは死んだの? 何か原因が有るんでしょ?」 「うん…あなたと同じ。 あなたと同じ目に遭って自殺したみたいなの…」 私はガタガタ震えだしてしまった。 ―忘れたくて蓋をしていた記憶達が 頭の中を占拠しだしていた。― ジャンル別一覧
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